夫はことあるごとに実家の恩を盾にします。仕事はろくにしないくせに、無駄遣いばかり。家事もせず、夜な夜な飲み歩く日々……。
私が注意しても「ケチくさいこと言うなよ。うちの親父が助けてやらなきゃ、お前は今ごと路頭に迷ってたんだぞ?」と、夫は聞く耳を持ちませんでした。
義父、涙の謝罪
そんなある日、義父に病気が判明し、余命宣告を受けました。体調はみるみるうちに悪化……。目に見えて弱っていった義父は、あるとき私を呼び出してこう告げたのです。
「息子が君を苦しめているのは知っている。それなのに、会社には君が必要で、縛り付けてしまって申し訳なかった……。恩返しはもう十分だ。私が死んだら、あいつとのことは君の自由に決めていい」
私は涙が止まりませんでした。苦しい日々でしたが、義父が寄り添ってくれたことが嬉しかったのです。
実は、夫は私が多忙なのをいいことに、長年不倫していました。知っていながらも、義父に恩があるのは事実。それに、もし離婚したら義父の会社にはいられなくなるかもしれません……。そんな気持ちが、離婚という選択を遠ざけていたのです。
義父は不倫のことも知っていました。「何もできず申し訳なかった」と、涙ながらに詫び、夫と不倫相手の企みを私に教えてくれました。なんと夫は義父亡き後、自分が社長に就き、不倫相手を役員として迎えようとしていたのです。
「俺が社長だ」と豪語する夫
その後、義父は他界。夫は不倫相手を“義父の知人”と言う名目で葬儀に呼んでいました。
義父の葬儀が済むと、夫は悲しむ素振りも見せず、意気揚々と「会社は俺が継ぐ!」と宣言しました。それどころか、かねてからの計画通り不倫相手を役員に据えると言い出す始末です。 義父亡き後、すべてが自分の思い通りになると、彼は完全に浮き足立っていました。
ですが、彼は大きな勘違いをしています。
私は黙って1通の書類を差し出しました。「残念だけど、あなたが社長になることはない。そして、その方を役員にすることも……」
夫は「は? 親父の会社を継ぐのは息子の俺だろ!」と声を荒らげましたが、書類の内容を見て、みるみるうちに顔が真っ青になりました。
義父は体調が悪化する前から弁護士に相談し、遺言書の作成とあわせて、夫と不倫相手の行動について、わかる範囲の記録を残していました。さらに、会社の経営については「これまで実務を担ってきた息子の嫁に任せる」という意思を、正式な書面として整理していたのです。
義父は、息子が会社を食い潰し、私の努力を台無しにするのを防ぐため、法的手段ですべての権利を私に託してくれていたのでした。
新たなスタート
不倫相手は「そんなの聞いてない!」と夫を突き飛ばし、足早に去っていきました。結局、彼女が愛していたのは夫ではなく、彼が手にするはずだった「社長の椅子」と「お金」だったのです。
すぐに夫は手のひらを返し「悪かった、俺がバカだった。頼むから会社に置いてくれ……!」 と私に謝りますが、もう遅いのです。
彼は職もなく、住んでいた家も、生活費として使わせてもらっていた義父名義のクレジットカードも失いました。まともに働いた経験のない30代後半の男性が、慰謝料の支払いを抱えて再出発するのは、きっと険しい道でしょう。
私は、義父が守り抜こうとしたこの会社と従業員を、今度こそ私の手で守っていくと決めました。もうかつての「恩」ではなく、これは私の意思なのでした。
◇ ◇ ◇
恩義は大切ですが、それを盾に自分を犠牲にし続ける必要はありません。もし相手の言動に「おかしい」と感じたら、ひとりで抱え込まず、周囲の助けを借りながら冷静に事実を確認することが自分を守る第一歩となるのではないでしょうか。
これからは恩義という呪縛から解き放たれ、自分の意志で新しい道を歩んでいってほしいですね。
【取材時期:2025年12月】
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。