中学時代、ヤンキー女子に救われた
中学時代の僕は、おとなしい性格が災いして、クラスの一部の生徒からいじめを受けていました。教科書を隠されたり、悪口を言われたり……。毎日が辛く、学校に行くのが憂鬱でした。
そんなある日、いつものように廊下で数人に囲まれていた僕の前に、1人の女子生徒が現れたのです。彼女はクラスで有名なヤンキーで、金髪に派手なメイク、誰もが一目置く存在でした。
「アンタたち、何やってんの? こういうのマジでダサいから、もうやめなよ」
彼女がそう一喝すると、いじめていた連中はすごすごと引き下がっていきました。
彼女は僕に向かって、「大丈夫? 何かあったらまた言いなよ」と優しく声をかけてくれました。
見た目は怖かったけれど、本当は心優しい彼女。それから卒業まで、僕は彼女に何度も助けられました。
卒業後は別々の道を歩むことになり、連絡を取ることもなくなりましたが、僕は彼女のことを決して忘れることはありませんでした。
社食で響き渡る怒声「中卒、何待たせてんだ!」
それから10年。大学を卒業した僕は、地元から少し離れた企業で営業職として働いていました。ある日の昼休み、社食へ向かうと、空気を切り裂くような怒鳴り声が響いたのです。
「何待たせてんだ!早くしろ!」
怒っていたのは同僚のAさん。厨房カウンターで料理を準備していた新人の女性スタッフに、突然怒鳴り始めました。
「こんな簡単なこともできないなんて、高校や大学で何やってきたんだよ」
「あ……えっと、高校は行ってなくて……」
「げ、マジかよ。さすが中卒。要領悪すぎるわ!」
学歴を持ち出しての人格否定。周囲もさすがにドン引きで、ざわつきが広がります。
僕も止めようと一歩踏み出しかけ――その瞬間、怒鳴られている女性の顔を見て息をのみました。 エプロン姿で俯いているその人が、10年前、僕を守ってくれた彼女だったからです。
彼女は反論もせず、「すみません」と小さく頭を下げるだけ。胸の奥が、ぎゅっと痛くなりました。

今度は僕が彼女を守る番
気づけば僕は、Aさんと彼女の間にすっと割り込みました。
「Aさん、やめましょう」
「はあ?こいつがノロノロしてるせいで、商談に間に合わなかったらどうするんだよ」
Aさんは引かずに噛みついてきます。
「そんなに急いでいるなら、隣の売店でお弁当を買えばいいじゃないですか。彼女は一生懸命やっています。学歴は関係ありません。さっきの発言、完全にハラスメントです」
僕がきっぱり言い切ると、食堂の空気がピタッと止まりました。
周囲の社員たちからも「さすがに言い過ぎ」「やめとけよ」という視線がAさんに向きます。完全に孤立したAさんは、顔を真っ赤にして「ふん、飯はもういい!」と捨て台詞を吐き、逃げるように食堂を出ていきました。
「……すみません。今日勤務初日で、まだうまくできなくて」
彼女が申し訳なさそうに言ったので、僕はそっと声をかけました。
「久しぶり。僕のこと、覚えてる?」
彼女は驚いて顔を上げ、僕の顔をじっと見つめます。数秒後、ぱっと表情がほどけました。
「え、もしかして……中学のときの!」
10年ぶりに会った彼女は今ーー
その後、休憩時間に彼女と少しだけ話すことができました。
彼女はシングルマザーとして働きながら、調理師免許を取るために勉強中だそうです。
「あんた、立派になったねぇ」と笑う彼女の強さと優しさは、10年前と変わっていませんでした。
これからは同じ会社で働く仲間として、そして友人として、また彼女と仲良くしていけそうです。今度こそ、僕が彼女の力になれたらいいなと思っています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。