ジュースを控えたほうが良い理由
世界保健機関(WHO)などのガイドラインでは、「幼児までの子どもには、100%ジュースであっても糖分過多になるため、与えないほうが良い」とされています。糖分のとり過ぎは虫歯や肥満などのリスクを高めるからです。
一方で、フルーツそのものは避ける必要はありません。果物には糖分だけでなく食物繊維などの栄養素も含まれており、ジュースとは異なり、栄養の吸収に良い影響があります(もちろん食べすぎには注意が必要ですが、厳密に制限しすぎなくても良いと私は考えています)。
このような背景から、現在の小児医療では「ジュースは基本的に子どもに与えるべきものではない」と指導しています。
糖分摂取の目安とは
WHOは、「1日の遊離糖類の摂取量は、総エネルギー量の10%未満、できれば5%未満が望ましい」としています。
厚生労働省健康局から公表されている「標準的な健診・保健指導プログラム【平成30年度版】」によると、「遊離糖類とは、グルコースやフルクトース等の単糖類、スクロースや砂糖等の二糖類等食品や飲料の加工調理で加えられるもの、ならびにはちみつ、シロップ、果汁、濃縮果汁等に自然に存在する糖類のこと」を指します。
※はちみつは乳児ボツリヌス症予防のため、満1歳までは絶対に与えないようにしてください。
たとえば、1〜2歳の推定エネルギー必要量は1,000kcal程度(厚生労働省資料より)なので、5%未満とすると遊離糖類摂取量は12.5g程度が望ましいということです。
スポーツドリンク500mLだと約30g、100%ジュースでも200mLで20g、野菜ジュース720mLで約50gの炭水化物(糖質+食物繊維)が含まれています。ジュースに食物繊維はほとんど含まれていないことを考えると、このうちの“ほとんどが糖質”ということになります。
糖質はジュースにだけ含まれているわけではないので、ジュースだけで糖質の必要量をとってしまうと、明らかに糖質のとり過ぎになってしまうのです。
野菜不足を野菜ジュースで補わないで
野菜をあまり食べてくれない子どもに、つい野菜ジュースを飲ませたくなる気持ちはよくわかります。でも、ジュースで野菜の栄養素を補うことには無理がありますし、糖分をとり過ぎてしまっては本末転倒です。
子どもが食べやすいように味付けを工夫したり、食感を変えてみたりと、少しの工夫で食べてくれることもあります。野菜不足はあくまで「野菜」で補い、水分補給は水や麦茶を基本にしましょう。
もちろん、「どうしても野菜を食べてくれない……」と悩むご家庭も多いと思います。
ビタミンなどは野菜以外の食品からも摂取できますし、無理に食べさせるより、少しずつ慣れてもらうことが大切です。
わが家でも、苦手な野菜はありますが、子どもが好きな野菜を中心に出し、食卓で「おいしいね」と声をかけながら楽しく食事をすることを心がけています。
一度甘いジュースの味を覚えてしまうと、水や麦茶を飲まなくなってしまうケースもあります。実際に、「毎日ジュースを飲んでいたせいで、水分を水でとれなくなってしまった」「虫歯治療で大変な思いをした」というご家庭もあります。
子どもにジュースを与えないという選択は、水分補給に苦労したり、虫歯治療で通院したりといった「将来の大変さ」を減らすために、今できる“ラクになる育児”のひとつです。