なかなか計画通りには進まない不妊治療。仕事をしながらの通院は、困難を極めます。治療内容によっては早退遅刻、休暇も必要になることも。仕事仲間に打ち明けられず、両立にストレスを感じる人も少なくありません。
職場には知られたくないーー。そう思って、こっそり通院した女性の物語をお届けします。ケース2、下村豊華さん(42)の場合。
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仕事を辞めるか続けるか両立させるか。働きながら不妊治療を始めた女性の多くは、この3択に悩まされます。厚生労働省が2017年に実施した調査(平成29年度『不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査』によると、働きながら不妊治療をした人のうち、仕事と両立できずに退職した人が16%いることが明らかになりました。
ベビーカレンダーが独自に行った調査によると、不妊治療中で最もつらかったことについて約17%が「仕事との両立」と答えています。
仕事をしながら不妊治療をしたことがある人のうち、不妊治療中に「両立できずに仕事をやめた」「両立できずに雇用形態を変えた」と答えた人は合わせて17%となりました。通院と仕事をスムーズに両立させるためには、職場の協力が欠かせません。しかし「職場の理解がある」と答えた人は約35%にとどまりました。
職場の立場や環境によっては「絶対にバレたくない」と考えるケースも。こうした背景にはどんなリアルがあるのでしょうか。職場にバレずに不妊治療を続ける難しさを体験した、女性の物語をお届けします。
仕事に穴を開けたくない…後回しになった「親になる」という選択肢
正社員11年目、総合商社の管理職。会社を辞めようという選択肢なかった。仕事はわたしの生きる場所、自分の価値を認めてもらえる場所だった。
メーカーとの商談は性に合っていたし、企画も任されるようになっていた。仕事に穴を開けられない責任もあった。あまつさえ、夫は建築関係の自営業。突然収入を失うこともあるかもしれない。それだけは絶対に避けたかった。
31歳で結婚したが、夫との価値観の違いから子作りには積極的になれなかった。夫からは「子どもができたら仕事はしないでほしい」と言われていた。お母さんになっても仕事を続けたいと伝えると、返ってきた言葉は「だったらいらない」。
いつか子どもは欲しいけど、仕事だって辞めたくない。そんな30代前半を過ごした。
2人ともいつかは親になりたいと願っていたというのに。
30代半ば、流産がきっかけで向き合った不妊治療
2人の考え方が変わったのは、34歳で流産したことがきっかけだった。妊娠が判明し、「親になる」という意識が夫婦に小さく芽生えた。だが、夫と二人で向かった産婦人科で伝えられたのは「胎児の心臓が止まっている」ということ。超音波検査で発育が止まっていると診断される稽留(けいりゅう)流産だった。
「え、心臓が止まるってどういうこと?」
ショックが大きく、現実が受け入れられなかった。妊娠って誰でも普通にできるんじゃないの? 心臓って本当に止まるの? 何度も何度も確認してもらったが、鼓動は止まったままだった。
「ショックすぎて当時のことはあまり覚えてません。付き添った夫もすごいショックを受けていました。そのときはまだ身近に流産を経験した人がいなかったので、なおさら信じられませんでした」
手術のため、総合病院に1泊2日で入院した。そのとき、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と診断された。
「多嚢胞性卵巣症候群は妊娠しづらい原因にもなります。妊娠を望むようでしたら、不妊治療専門のクリニックに通った方がいいでしょう」と医師は告げた。
抵抗があった不妊治療、タイミング法で始めることに
日本内分泌学会によると、多嚢胞性卵巣症候群は①月経不順 ②卵巣にたくさんの小さな嚢胞(卵胞)がある ③ホルモン値がアンバランスになる(男性ホルモンが高くなるなど)、という症状が揃うと診断される。卵胞が発育不良な状態で、無月経や月経不順、不正出血などの排卵障害が起こる。程度の差はあるものの、不妊の原因になる。
振り返れば高校生の頃から月経不順に悩まされていた。だらだら続いたり、来なかったりを繰り返していた。でもまさか治療が必要とは。豊華さんの場合、ホルモンの調整が必要と指摘された。
「なぜ私が不妊治療に通わなきゃいけないのって抵抗がありました。流産はしましたが1度自然妊娠してるし、できれば通わないで医療を介さずに妊娠したいって思いが強くて。今から7年前ですから、今ほど不妊治療自体も世間に浸透していない雰囲気でした。
当時は無知で不妊治療=体外受精でと思っていて。お金のこととか、ホルモン剤の副作用が強いんじゃないかとか、いろいろ心配でした」
けれども夫は常に前向きだった。
「いいと思うよ。行くだけ行って検査して、それから考えればいいじゃん」とやさしく背中を押してくれた。そのとき、35歳だった。
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不妊治療を決意したものの、「仕事と不妊治療の両立」は思っていた以上に大変だったという豊華さん。なかでも、最も頭を悩ませたこととは……?
>中編へつづく
【調査概要】出産のタイミング・不妊治療に関するアンケート
調査対象:株式会社ベビーカレンダーが企画・運営している
「ファーストプレゼント」「おぎゃー写真館」「ベビーカレンダー全員プレゼント」
のサービスを利用された方
調査期間:2021年1月28日(木)-2月3日(水) 調査件数:2,868名