特集 不妊治療

嘘をつき通し不妊治療に通う日々。パワハラで精神的に追い詰められた悲しい結末… #2

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不妊治療体験者の声を取材した連載、第5回目となる今回は、夫の不妊治療手術を経て不妊治療を乗り越えた霧野志保さん(31・仮名)の場合。なかなか授からない原因が夫側にあることが判明。夫の手術、職場のパワハラ、流産を経て、待望の赤ちゃんが誕生するまでのお話です。

嘘をつき通し不妊治療に通う日々。パワハラで精神的に追い詰められた悲しい結末… #2

 

「赤ちゃんを産みたい」と思える情報を届けたい。ベビーカレンダーは「べビカレ特集」として、妊娠、出産、子育てなどママたちを取り巻く現状やさまざまな課題を問題提起し、取り上げています。今回は「不妊治療」について。仕事と不妊治療の両立が難しい現代の「不妊治療への理解」について考えます。

 

「不妊」という問題を、夫婦どちらかが過剰に背負うのではなく、「夫婦2人の問題」ととらえ、不安や痛み、悲しみや希望を分かち合い、二人三脚で不妊治療を乗り越えた夫婦の物語、霧野志保さん(31・仮名)の場合、第2話です。

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手術は成功、人工授精にステップアップ

手術は無事に成功した。日帰り手術だったが、ぐったりと疲れた様子だった。麻酔が切れるとひどく痛むようで、痛みに強いはずの夫が、珍しく顔をしかめていた。術後は1カ月ほど痛みが残った。その回復加減を見ながら、排卵誘発剤を使い、いよいよタイミング療法が始まった。

 

しかし、そう簡単に成果は出ない。医師のアドバイスに従い、早々に人工授精にステップアップすることになった。

 

「ステップアップすることにためらいはありませんでした。『やれるだけのことはやろう』って2人で決めていましたから。不妊治療を始める当初から、体外受精や顕微授精は金銭的なハードルが高くて難しいけれど、人工授精まではチャレンジするつもりでした」


※体外受精、顕微授精には公的補助があります。2021年1月から体外受精には、1回最大30万円に増額された補助金がでます。2021年から、補助金に対して年収制限は廃止になりました。入籍または事実婚が必須条件です。補助金回数は、女性40歳未満は6回まで、40〜43歳未満は3回までとなり、43歳以上は対象外です。

不妊治療への理解が得られない職場のストレスを抱えて

人工授精への挑戦が始まる頃、志保さんは職場で大きなストレスを抱えていた。不妊治療への職場の理解が得られない、または言えないことに悩む人は多い。

 

そもそも不妊治療と仕事の両立は、日本の社会ではまだまだ難しい。
ベビーカレンダーが行ったアンケート調査でも、75%の人が職場の理解が「ない」「どちらとも言えない」と答えている。

 

出産のタイミング・不妊治療に関するアンケート/ベビーカレンダー

 

さらに、仕事と不妊治療を「両立できなかった」という人は約20%いた。この数字からも、不妊治療を理解し、サポートしてくれる社会づくりがこれからの重要な課題であることが見て取れる。

 

出産のタイミング・不妊治療に関するアンケート/ベビーカレンダー

 

中高一貫校の先生として働いていた志保さん。不妊治療中の職場の人間関係は、「最悪だった」という。男性の同僚からのパワハラ、そのことを相談した女性管理職からのパワハラ。

 

そんな環境では不妊治療について理解を得られるはずもないと考え、治療による早退や欠勤のたびに「歯医者なので」などと嘘をついてやり過ごしたが、精神的な負担はどんどん積み重なっていった。

 

初めて陽性反応も初期流産でお空へ。職場ストレスを悔やむ日々

そんな日が続いたある夏の日。そろそろ生理が来ると思いながらも予兆がなかったので検査薬を使ってみた。陽性を示す線がじわじわと浮かび上がってくるのに合わせて、じわじわと涙がこみあげた。夫は泊まりがけの出張で不在。喜びと驚きでいっぱいになり、メールで写真を送信した。

 

「今回、うまくいったみたい!」

 

しかし、喜びも束の間、流産という悲しみに包まれることになる。


ちょうど陽性が確認できた頃、志保さんは職場であらぬ濡れ衣を着せられ、上司から密室で叱責を受けた。そのことがきっかけで気持ちがひどく塞ぎこみ、体調を崩し、吐き気と過呼吸で心療内科に通うように。そして出張先で腹痛と吐き気がひどくなり、ついに出血。

 

いつもと違う出血の状況だった。嫌な予感がした。急いでかかりつけ医に駆け込んだが、授かった命はもうそこにはいなかった。

 

「初期の流産ですね」

 

なじみの中年女性医師は静かに言った。

 

「このタイミングでの流産は、医学的に何もできないの。次に備えて薬を飲んでね。
初期の流産はお母さんのせいじゃないから」

 

医師の言葉は、頭の中をすべるように通り過ぎていった。

 

「人間ってショックを受けた時は、何も考えられなくなるもんなんだなって思いました。何も考えられないまま、何日間か呆然と過ごしました。食事も喉を通らず、とにかく涙に暮れてばかりでした」

 

呆然としながらも、妊娠初期に受けたパワハラへの悔しさが込み上げてきた。「あの時受けた精神的ストレスが流産の原因になったのでは」と考えたからだ。「守ってあげられなくてごめんね」と自分を責めた。

 

「初期の流産はお母さんのせいじゃない」


この医師の言葉が、闇に吸い込まれそうな心を支えてくれた。

 
夫は一緒に涙を流してくれた。


「いつか生まれてくるわが子に、お兄ちゃんかお姉ちゃんがいたってことを話そうね」と泣きながら話す夫。かけがえのない存在であることを再確認した。

こうして初めて宿った命は、検査薬の陽性のラインだけをくっきり残し、風とともに夏の空に吸い込まれた。

 


待望のわが子を流産してしまった霧野さん。夫婦で涙を流し、悲しみを共有します。そして、次回不妊治療をステップアップすることに。

 

【調査概要】出産のタイミング・不妊治療に関するアンケート
調査対象:株式会社ベビーカレンダーが企画・運営している
「ファーストプレゼント」「おぎゃー写真館」「ベビーカレンダー全員プレゼント」
のサービスを利用された方
調査期間:2021年1月28日(木)-2月3日(水) 調査件数:2,868名

監修者

医師 杉山 力一先生

産婦人科 | 杉山産婦人科 理事長


平成10年、北九州セントマザーに国内留学し体外受精の基礎を学び、平成12年に杉山レディスクリニックを開院。平成19年、産婦人科総合施設杉山産婦人科としてリニューアル。現在は杉山産婦人科グループ3院の理事長を務める。また、政府へ不妊治療助成金の増額を求め、菅総理との話し合いをするなど精力的に活動する。監修著書『男の子女の子が欲しい!あかちゃんの産み分けがわかる本』(主婦の友社)など多数。


経歴

1994年 東京医大を卒業
1999年 北九州セントマザーに国内留学し体外受精の基礎を学ぶ

2001年 不妊治療専門の杉山レディスクリニック開院

2007年 杉山産婦人科世田谷(分娩、生殖医療、内視鏡手術を行う総合施設)を開院
2011年 杉山産婦人科丸の内 開院
2018年 杉山産婦人科新宿 開院

 

■医学博士

日本産科婦人科学会専門医
日本生殖医学会生殖医療専門医


著者

ライター 大楽眞衣子


社会派子育てライター。全国紙記者を経てフリーランスに。専業主婦歴7年、PTA経験豊富。子育てや食育、女性の生き方に関する記事を雑誌やWEBで執筆中。大学で児童学を学ぶ。静岡県在住、昆虫好き、3兄弟の母。  


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