昨今報じられることも多い生理の貧困ですが、ムーンカレンダーを運営する株式会社ベビーカレンダーが実施した調査によると、現在22〜45歳の女性においても過去および現在に「生理用品を手に入れるのに苦労した」という声が明らかになりました。
本記事では調査結果の紹介とともに若年層だけの問題にとどまらない生理の貧困について、また近年海外で急速に進む生理用品の課税撤廃や無償配布の動きについてもご紹介します。
※調査概要
調査対象:株式会社ベビーカレンダーが企画・運営している「ベビーカレンダープレゼント」「ファーストプレゼント」「おぎゃー写真館」のサービスを利用された方
調査期間:2022年2月25日~2022年3月1日
有効回答数:1123件 (22歳~45歳の女性)
22歳〜45歳の女性も「約5人に1人が生理用品を手に入れるのに苦労した」
ベビーカレンダーが運営するサービスを利用したことがある22歳~45歳の女性1123名の調査において、「これまでの人生で生理用品を手に入れるのに苦労したことがある」と回答した人は約5人に1人にあたる18.3%にのぼりました。
さらに「生理用品を手に入れるのに苦労したことがある」と回答した人にその時期について質問したところ、「中学生時代」(39.0%)が最も多く、次いで「社会人時代」(31.9%)、「高校生時代」(26.1%)という結果となりまひた。
このことから生理の貧困の問題は本アンケートの回答者層(22〜45歳)が中学生であった10年〜30年以上前から存在し、また「社会人時代」という回答も次いで多かったことから若年層だけの問題ではないことがわかります。
金銭的ハードルだけでなく心理的ハードルも「生理の貧困」の要因に
続いて「生理用品を手に入れるのに苦労したことがある」と回答した理由を質問したところ、最も多い回答は「恥ずかしいなど心理的な理由」が53.5%と過半数を占め、次いで経済的な理由(23.7%)、家庭の事情(12.3%)という結果となりました。
一般的に「貧困」という言葉から連想されるのは経済面ですが、生理の貧困については経済的なハードルだけでなく、心理的なハードルにより生理用品にアクセスできない状態からも生じていることがわかります。
実際「中学生時代に困った」と回答した方からは、具体的にどのような状況で困ったかについて下記のようなエピソードが挙げられました。
・中学生や高校生のときは、親から生理用品やサニタリーショーツを買うお金をなかなかもらえず、おこづかいを残しておいたり、たくさんの量を買いたくても足りないので、容量の少ないものを選んだりしていました。生理日に家に生理用品がないこともあり、お金もないときには、学校の保健室で借りたり、友達に頼んで譲ってもらったりしていました。
・父子家庭だったので生理が初めての時どうしたらいいのか分からず恥ずかしく買えなかった。
・家族が用意したナプキンが肌に合わなかったが、言えなかった。自分で買いに行きたいけどお金がないのと恥ずかしいのとで苦労しました。
・学校で急に来たときに焦った。 友だちが持っていて助かったが、トイレットペーパーで過ごしたこともあった。
・薬局のレジの店員さんが男性だと、ナプキンを買うのをためらった。
また、「社会人時代に困った」と回答した方からは下記のようなエピソードが挙げられました。
・産後、子どもを連れて夫の実家に滞在した際に、ナプキンがなくなってしまったが、義母にも夫にも購入を頼むのが抵抗があってできなかった。
・出張先で近くに購入できる店舗がなかった
・海外にいて、自分の肌にあう生理用品をなかなか見つけれなかった
・災害やコロナ禍の初期に近所で売り切れになっていた
上記を比較してみると、中学生時代の困りごととしては経済面・心理面の両方が挙げられる一方、社会人時代の困りごととしては心理面から来るアクセスのしづらさや行動範囲が広がったことで生理用品が入手できなかった経験が挙げられていることがわかります。
「生理は人間の仕組み」「女性としてショック」ー生理の貧困に対する女性たちの声
最後に「昨今報じられている『生理の貧困』について、あなたはどう思いますか?」というフリーコメントでの問いに対しては、下記のような声が寄せられました。
・初めて「生理の貧困」という言葉を聞いた時、また社会問題になっていることに対し、女性としてとてもショックです。 なかなか声をあげにくい問題だと思うので、社会でもっともっと認知されることが必要だと感じます。
・女性には不可欠なものなので、最低限の補助が必要と思う。
・生理は人間の仕組み。女性だけの問題とせず、全ての人が知識を深めるべきで、義務教育の中で、男性もしっかり学ぶべき。
・とてもつらい思いをしてしまうことだと思う。学校などで性教育の時に、困ったときはどこに相談すればいいかなども一緒に教育できたらいいなと思う。
・最近はトイレの個室にナプキンが置いてあるお店もあるが、こういった配慮があると助かる。
・女性にとって生理用品は生活必需品であり、生理用品を入手することが困難な状態は非常に精神的苦痛が大きいと思う。すべての女性が容易に生理用品を入手できるよう、生理の貧困は解決すべき問題だと思う。
生理用品は女性にとって必需品なので、最低限の補助や公共の場所での無償提供が必要と考える方々の声が多く見受けられました。また物資の補助という観点のみならず、「教育」不足を指摘する声も上がり、困ったときの相談窓口や、男女一緒に生理について学ぶ機会が必要という意見も見られました。
海外で急増する生理用品の無償提供や課税撤廃の動き
こうした問題は日本だけでなく、海外でも”Period Poverty(生理の貧困)”として声が上がっています。こうした社会の動きから、ここ数年海外では生理用品を無償で提供したり、税率を撤廃する事例が急増しています。
例えば、2015年にはカナダで生理用品の課税が撤廃。またお隣の国・韓国では2016年に困窮世帯への生理用品の補助を開始し、2018年にはマレーシア・インド・オーストラリアが生理用品への課税を撤廃しています。
さらに、2020年にはスコットランドが生理用品の無償化を決定し、2021年にはイギリスでもぜいたく品としてかけられていた課税を撤廃、フランスやニュージーランドでは学生への生理用品無償配布が始まりました。
日本ではコロナ禍の影響の文脈で語られることも多い生理の貧困ですが、世界各国の事例を見るとコロナ禍以前から議論が始まり、課税撤廃や無償配布などのアクションにつながっていることがわかります。
軽減税率はいまだ適用されない日本でも、各自治体での取り組みは加速
海外で生理用品の課税撤廃が進む一方、日本においては現状消費税10%の課税対象となっており、軽減税率8%すら適用されていません。
ただ生理の貧困がメディアやネット署名を通じて取り上げられるなかで、全国の自治体での無償提供などの動きは加速しており、2021年7月の内閣府調査によると581団体が取り組みを実施しています。
また毎年6月に発表される「経済財政運営と改革の基本方針2021(骨太の方針)」においても、生理の貧困への対策が初めて明記されました。
この議論が一過性のものでなく継続的な支援や負担軽減につながり、実際に経済的・心理的に生理用品にアクセスできない状況がいち早く改善され、必要な人が必要なときに生理用品にアクセスできる社会になることを願います。
ムーンカレンダー編集室では、女性の体を知って、毎月をもっとラクに快適に、女性の一生をサポートする記事を配信しています。すべての女性の毎日がもっとラクに楽しくなりますように!