貯蓄(預貯金や有価証券の運用等)を始めたい、増やしたいと考えている人は多いと思いますが、上手にできない、長く続かないという人も多いのが実情です。貯蓄を増やすには、単純に考えると支出を減らすか、収入を増やすか、のいずれかが必要です。月3万円程度の貯蓄を増やすために、できる方法をいくつかお伝えします。前回は支出についてお伝えしましたが、今回は副業についてできることをお伝えしてまいります。
1.副業は収入が確実で安全なものを前提にしましょう
貯蓄を増やすには、支出を減らすことによって貯蓄できる額を増やすことが一般的ですが、支出を減らすことが苦手な人や支出を減らすことだけでは足りない場合には、収入を増やすために副業を検討されることもあるかと思います。その場合には、収入を得られることが確実で安全なものを前提に選ぶようにしましょう。基本的には、副業を探す場合には、ハローワークや信頼できる求人サイト等から確認することが無難です。逆に以下に挙げるものは、100%危険とは言い切れませんが、避けた方が良いでしょう。
(1)時給などの条件が良過ぎるものは疑ってかかりましょう
時給が一般的な相場よりかなり高い場合や未経験でも高収入を謳っている場合は、リスクが高いことがほとんどです。このような募集は、①個人情報の不正取得、②マルチ商法(会員の勧誘をしたうえで物やサービスを買わせる)、③副業商法(副業に必要な機材や商品を購入させる、多額な登録料・資格料を支払わせる)、④闇バイト(詐欺やマネーロンダリング等の犯罪行為を実行させる)等の可能性が否定できません。月に2~3万円の収入を得ようしただけなのに、それ以上の支払をしたり、犯罪行為に巻き込まれたりする必要はありません。
(2)業務委託は条件が見合わないものはやめましょう
業務委託とは、雇用ではなく、出来上がったものを納品する請負契約や一定の業務を行い、報酬を受ける委任契約をまとめて業務委託と言います。フードデリバリーやWebコンテンツの作成、システムの開発や改修、イラスト作成など本業以外の時間を使ってできるものも多く、業務委託そのものはリスクが高いものではありませんが、時給換算にして最低賃金を下回る場合や業務の内容が難しい場合、業務で損害が生じた場合の賠償が多額に設定されている場合等には、副業で収入を増やすという観点からは、別の副業を選んだ方が良い可能性が高いです。決まった時間が拘束されないメリットともらえる報酬が見合ったものを選ぶと良いでしょう。
(3)投機的な資産運用やギャンブルで増やすことは難しいです
資産運用は選択肢が多く、ほとんどの場合元本保証ではないので、運用商品はどれも差がないと考える人もいると思いますが、実際には1年に2~3%程度しか上下しないものもあれば、1日に20%以上も上下したり、大きな相場変動では短期間で0になったりするものもあるため、同じものとして考えることはできません。
iDeCoやつみたてNISAで採用されている投資信託であればリスクはあるものの、1日で20%以上の下落や短期間で0になることはほとんどありませんが、FXや暗号資産(仮想通貨)等では、利用の仕方によってはそのリスクがあります。これらは当たれば何倍にも増える一方、外れれば0になる競馬や競輪、競艇等のギャンブルと同じとは言わないまでも近い部類に入ります。家計に影響しない金額を趣味程度に行う場合には問題ありませんが、副業として貯蓄額を増やす観点からすると投機的な資産運用やギャンブルは相容れないことがほとんどです。
2.副業をする際の注意点
副業をする場合には、収入を増やす目的以外にも、経験を積みたい場合や家族や友人等に頼まれる場合などの理由もありますが、収入を増やす観点からは注意する点がいくつかあります。主に以下の内容に注意をしましょう。
(1)副業は禁止されていないか確認しましょう
現在、会社等に勤務されている人は勤務先の就業規則等で副業・兼業が禁止されていないかを確認しましょう。厚生労働省もガイドラインを定め、副業・兼業を促進していますが、以下に該当する場合には、就業規則で副業・兼業を禁止または制限をしても良いとしています。
① 労務提供上の支障がある場合
② 企業秘密が漏洩する場合
③ 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
④ 競業により、企業の利益を害する場合
副業・兼業の禁止や制限がある場合に、それを無視した場合には、懲戒の対象になったり、人事考課に影響があったりする可能性も否定できません。中には、副業が勤務先にバレない方法を説明しているWebサイト等も散見されますが、100%バレないという保証もありませんので、慎重に行動されることをお勧めします。
(2)副業の所得が20万円を超える場合には確定申告をしましょう
勤務先で年末調整をして確定申告をしていない人も、副業(年末調整した給与以外の所得)が20万円を超える場合には、確定申告が必要な場合があります。確定申告が必要な場合には、所得のあった翌年3月15日までに申告・納税を済ませましょう。確定申告が必要な人が手続きをしない場合には、無申告加算税や重加算税等の追徴課税がされる可能性もあります。確定申告が必要かどうかや手続きが分からない場合には、税務署に匿名で相談もできますので、必要に応じて事前に確認をしっかりしましょう。
(3)扶養している人が働く場合には要件の確認をしましょう
税金や社会保険の扶養に入っている人が、副業をすることによって所得が増えた場合、扶養の対象外となる可能性があります。収入源が2つ以上ある場合には、扶養を判定する所得を別々に判定するのではなく、所得の金額を合計して扶養の対象かどうか判定されます。
例えば、社会保険の扶養(健康保険・国民年金)の対象になるには、原則、年収130万円未満である必要がありますが、メインの収入が120万円であれば、扶養の範囲内ですが、これに加えて12万円の副業があった場合には年収132万円となり、社会保険の扶養を外れる必要があります。
扶養を外れることによって、国民健康保険料(国民健康保険税)・国民年金保険料に年間約30万円の支払いが必要となり、手取り額で考えると副業をすることによって、マイナスになってしまいます。所得税の配偶者控除であれば年収103万円以内、配偶者手当・扶養手当等であれば配偶者の勤務先の年収基準とそれぞれの年収基準も所得の合計によって判定されますので、副業によってその金額が超えて扶養が外れる可能性はないか、扶養から外れてもプラスになるかを計算した上で、副業をするかどうかの判断をしましょう。
貯蓄を増やすためには、節約か副業かのいずれかを選ぶ人もいると思いますが、両方組み合わせることも一つの方法です。例えば、固定費の見直しで15,000円、日々の節約で5,000円と合わせて、副業で月10,000円を加えて、合計3万円にすることも可能です。ご自身やご家庭に合った方法で貯蓄を増やす方法を実践してみてください。また、副業をする場合には、お伝えした注意点を踏まえて無理のない範囲で取り組むようにすると良いでしょう。