パニ子は10年前、イケメンでやり手社長として有名だったユウヒと結婚。すぐに娘が生まれ、3人で幸せな毎日を送っていました。今は訳あって、娘と2人で暮らしています。
元夫の葬儀
プルルルル〜♪
ママ友サナからの着信を見て、ため息をつくパニ子。
放っておくと延々となり続けそうだったので、しぶしぶ電話をとりました。
「久しぶり〜! あのね、うちの旦那のお葬式に参列してほしいのよ〜! 家族葬なんだけど、ゆうくんはあなたの元夫でもあるから呼んであげようと思って」
スマホから聞こえるのは、夫が亡くなったとは思えない明るい声。
遺産が手に入ることが嬉しくて仕方がない様子が、手にとるようにわかります。
パニ子とサナが知り合ったのは3年前のこと。
当時シングルマザーだったサナは、娘の授業参観でユウヒに出会いました。
ユウヒはサナの好みのイケメンで、どストライクだったよう。
パニ子のことは気にもせず、猛アタックしはじめたのでした。
遺産が1円ももらえないなんてかわいそう
葬儀場に到着すると、嬉しそうに遺影を抱えるサナの姿が。
「夫を奪われて離婚……生活も大変なのに、ゆうくんの遺産は1円も入ってこないなんて、かわいそう」
見下したようにニヤついています。
これ以上相手にできない!
「やだぁ〜私、離婚してませんけど〜ユウヒは私の旦那です」とパニ子。
そろそろタネあかしの時間がやってきます。
そのとき、葬儀場の入り口にユウヒの姿が!
遺影に写る顔が目の前に現れたものだから、参列客も驚きを隠せません。
「ゆうくん?! どういうこと?!」
サナも信じられない! という顔で立ち尽くしていました。
入れ替わり作戦を決行!
遡ること3年前。サナの猛アタックに困っていたユウヒは、兄のユウキに相談を持ちかけました。
しかしサナの写真を見たユウキは
「俺、メッチャタイプ! その気の強さも最高だなぁ〜俺が代わっていい?!」
と、誰も思い付かないような提案をしたのです。
実はユウキとユウヒは双子。知り合って間もない人たちからは、見分けがつかないといわれるほどにそっくりなのでした。
最初は大反対していたユウヒでしたが、ガンを患い余命1年という兄の説得に折れ、入れ替わりを決意。そこからは3人で念入りに相談を重ねました。
もちろん、夫婦の愛情や信頼関係が芽生えたら本当のことを話そうとしていましたが、サナはユウキの話に聞く耳を持ちません。
ユウキからお金をもらい、遊び回る日々を送っていたのです。
その間ユウヒはというと、ちょうど良いタイミングで長期の出張の話があり、今日まで海外赴任をしていたのでした。
遺産なし!借金あり!
3年もの間、入れ替わっていることに気が付かなかったサナ。
こともあろうに、診断書や祭壇の名前が「ユウヒ」ではなく「ユウキ」になっていることにすら気が付いていませんでした。
さて、サナが期待していた遺産ですが、実はユウキの残したお金を使い切ってしまい、残りはゼロ! それどころか、ユウキはユウヒに借金までしていたのでした。借金はユウキと結婚していたサナが払わなければなりません。
顔も名前もそっくりな双子でしたが、金遣いだけは似ていなかったのですね!
余命1年といわれていたユウキも、寿命を2年延ばし充実した結婚生活を送っていたよう。
ユウキは幸せな余生を、ユウヒは平穏な家庭を、しっかり手に入れたのでした。
一緒に生活していると、体調や気持ちの変化に気が付くようになるはず。日頃から顔を合わせて会話をしていたら、借金を背負うことはなかったのかもしれません。相手の話に耳を傾けること、目を見て話すことの大切さがよくわかりましたね。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。