「料理が上達しなければ離婚な!」
「洗面台の鏡が汚れてるぞ!」
「今すぐやれよ!」
「お前って本当に料理下手だよな!!」
なにかにつけて私に文句をいう夫。
最近では先輩の奥さんと比べて、嫌みばかりいうように……。
「先輩の奥さんは料理じょうずなんだってさ〜。仕事も持っているのに弁当も豪華なんだよ! 俺もそんな奥さんがよかったな〜」
夫は大きなため息をつきます。
「そうだ、お前明日から料理教室通えよ!」
そういって1冊のパンフレットを渡してきました。
「それでも上達しないようだったら、離婚とかも考えようかな〜。ま、離婚されたくなかったら、一生懸命勉強して来いよ!」
夫はそういってゲラゲラと笑っています。
軽々しく離婚を口にする夫に腹は立ったけれど、料理が得意ではないことを自覚している私。
家事ばかりの生活に飽き飽きしていたこともあり、料理教室に通うことにしました。
料理教室はとても楽しく、行って正解!
私はみるみるうちに料理の腕を上げました。
そしてもうひとつ、頼れるお姉さんのような友だちに出会えたのも、よかったことのひとつ。
週1回の料理教室が良い気分転換にもなって、夫との夫婦仲も改善されそうと思っていたのですが……。
「料理教室に通っているくせに、手抜きするな!」
今日の夕飯は、料理教室で習ったサクフワの唐揚げです。
肉の漬け込みもバッチリ! あとは揚げるだけです。
「おかえり! もう少しで夕飯できるわよ!」
「は? 俺が帰ってきたときには夕飯ができている状態にしておけって言ったよな!?」
夫は相変わらず不満ばかり。
でも、作っておかなかったのは揚げたてを食べてほしかったから。
それに、いつ帰って来るかわからないのに、用意しておくなんて不可能です。
すこぶる機嫌の悪い夫は、それでも気分が晴れないよう。私への文句が止まりません。
「質素な食事だな! 料理教室に通っているくせに、手抜きするなよ! 先輩の家では毎日5品は作るって言ってたぞ。お前も見習って明日から5品作れよ!」
あまりの物言いに、言葉を失う私。
「そう言うなら……、今に見ていなさい!」静かに決意したのです。
すべて計算どおり!
先輩を見習えと夫が言うので、私は毎日5品以上のおかずを作ることにしました。料理教室のおかげでレパートリーも増えたので、苦ではありません。
メニューは夫の好きな肉料理中心に、喜ばれるものばかりを用意。5品作って余ったぶんは、翌日の弁当に回します。
次第に夫はブクブクと太りはじめ、食費もとんでもない額に!
すべて私の計算通りです。
それに気づいた夫は、真っ赤になって怒ります。
「あなたが5品作れと言ったから作っただけ!」と私。
「こんなの嫌がらせだろ! もう我慢の限界だ。お前とは離婚してやる!」夫は叫びました。
ブクブク太ったモラハラ夫。仕返しはこれから!
しかし私は準備万全!
離婚の証人になってもらうために、料理教室で出会った友だちを呼びました。
実は友だちの旦那さんは、夫の先輩。
毎日5品作っているという話は、友だちのことだったのです。
これには夫もびっくり。
「当然お二人は俺の味方ですよね!?」と頼ったのですが、
「奥さんに対して、心ない言動ばっかりだな」
「家事を任せてばかりで文句を言うのはおかしいよ」
「自分の家のことなんだから、家事は分担するに決まってるだろ」
「うちの毎日5品の食事だって、分担して作っているし買うこともある」
「お前は自分の都合のいいように解釈しすぎなんだよ! 仕事でも同じだ!」
そうやって夫は長い長〜い、先輩夫婦からのダメ出しを受けたのです。
毎日偉そうにふんぞり返っていた夫。
太った体が一回り小さく見えるくらいシュンとしていたのでした。
◇ ◇ ◇
ただでさえ人の家庭は良く見えるもの。大して知りもせず自分の家庭と比較し、けなすのは賢明とはいえません。比べて蔑むのではなく、どうしたら良いところをマネできるかを考えるようにしたいですね。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。