パニ子と夫のダイチ、娘のパニ美は、念願のタワーマンションへの引越しを控えた3人家族。素敵な住まいを手に入れたことに幸せを感じていたものの、ひとつ心配なことがあって……。
マザコン夫と息子を溺愛する姑
パニ子が心配していたのは、近所に住む姑のこと。
マザコン気味のダイチと、ダイチを溺愛する姑の距離感は、異様ともいえるくらいです。
「おはよう」と「おやすみ」の挨拶のために毎日欠かさず電話をかけ、週末には必ず会いに行っています。ダイチが体調を崩したと聞きつければ、「パニ子の体調管理がなっていないからだ」と怒鳴り込みにきて、過剰なまでの看病を始めます。もちろんダイチは姑に甘えっぱなし……。
そんな態度、結婚前は微塵も見せなかったのですが、年々ひどくなるのでパニ子もうんざりしています。
「ママがここに住みたいって!」嫁を追い出す姑
「来週そちらに引っ越すわね!」
突然の姑からの電話に唖然とするパニ子。なぜそのようなことになったのか、訳がわかりません。
ダイチを問い詰めると、
「部屋も広いから、一緒に住もう」と、パニ子の許可も取らずに言ったそう。
しかし、姑の同居には大反対のパニ子。毎日の生活が脅かされるのは容易に想像できます。パニ子は、断るようダイチに言いました。
しかし1週間後、引越しのトラックと共に、姑が引っ越して来たのです。
「引っ越して来ちゃえばこっちのもんw」ダイチを睨むも、確信犯。
「俺の母親だぞ?! お前の許可なんて必要ないだろ」
と、筋の通らないことを言い通します。
「そんなに私のことが嫌なら、あなたが出ていきなさいよ! 大地の稼いできたお給料なのに、あなたがそれを使って生活していると思うとイライラするもの」
姑からのトドメのひと言も発されます。
「パニ子さんとパニ美ちゃんがいないほうがずっと良い暮らしができるんだから! だって私には年金があるもの!」
姑のひと言に「えっ?! ホントっ?!」と、目がキラリと光るダイチ。
「ダイチ、まさかあなた肝心なことを……」
もっと言いたいことがあったのですが、ここはグッと我慢のパニ子。
「出て行け! ってことは、私たち、離婚するってことでいいんだよね?」とダイチに確認し、その場で諸々の手続きを済ませて新居を出ることにしました。
あんなマザコン夫に未練はありません。
大きな勘違いの果て
早々に新たなマンションを見つけたパニ子とパニ美。パニ子の事業がうまくいっているおかげで、これまでよりもさらに良い部屋に住むことができました。
ダイチの生活なんて知ったことではありませんが、そろそろ電話がかかって来るころです。
実はダイチはもう1年以上前に仕事をクビになっていて、それを姑に言っていないよう。
もちろんタワマンの賃料なんて払える訳がありません。おそらく姑の年金をアテにしています。
しかし、月50万円以上する賃料。年金暮らしの姑にも払える訳がありません。
案の定、慌てふためいた姑から連絡が入りました。
「ちょっとパニ子さん、どういうことなの!? 督促状が来ているじゃない」と姑。
「ダイチとは離婚したので私は払いませんよ?」パニ子は当たり前のように返します。
すると電話の向こうでダイチの声。「えぇ!!ママ年金で払ってくれたんじゃないの!?」
姑の年金でタワマンの賃料が払えると思っていたダイチ、ダイチは高収入であると疑いもしない姑。互いに勘違いをした結果、住む場所を失うことになった2人なのでした。
母親に依存する息子、息子を溺愛するあまり現実を見なかった母親。タワマンに住む夢は、たった1カ月で散ってしまいました。他力本願で無責任な2人。他人の援助や協力をアテにしてはいけませんね。