美乃梨(みのり)は、夫の英人(ひでと)が希望したこともあって、結婚して専業主婦になりました。今までは何も問題ありませんでしたが、ある日急に英人の給料が大幅に少なくなって……。
先月と比べて給料が半減!
英人はここ最近仕事関係で忙しくしていましたが、すこし落ち着いたことから、美乃梨と一緒にお互いの実家に顔を出そうと話していました。先月買った新車もほとんど乗ることができずにいたので、ドライブデートも兼ねてのお出かけです。
その提案に美乃梨は「せっかく買ったんだから、しっかり活用しないとね」と笑顔で言いました。まだローンも残っているので当分は節約生活になりますが、どうせ買っちゃったのなら楽しみたいと思っていたのです。
しかし、その話をしているとき、美乃梨はあることを思い出しました。先月までは30万くらいあった英人の給料が、今月は半分の15万しか振り込まれていなかったのです。何か手違いでもあったのかと思い、英人に聞いてみると……。
「あーそれは別に間違ってないし、手違いとかでも無いよ」
「今日帰ったら給料明細見せようと思ってたんだけど……」
「俺、先月転職したんだよね」
まったく聞いていなかった美乃梨はビックリ!
英人は、美乃梨の両親から家をもらっていて家賃がかからないため、15万円でも十分生活できると言い張ります。結婚前に経理をしていた美乃梨のやりくり術なら、問題ないと思っているようです……。「来月からしばらくの間は生活費5万な」と悪びれる様子もなく言ってきたのでした。
どうなっても知らないからね?
手元にお金がない状態でも、なんとか英人にお弁当を持たせていた美乃梨。しかし英人から、量が少なかったからコンビニ弁当を買い足したと聞かされて、そんな余裕があるなら渡してほしいとお願いしてみましたが、「俺が稼いだ金をどう使おうが俺の勝手だ」と取り合ってもらえません。
英人がそんな態度なら、美乃梨にだって考えがあります。「どうなっても知らないからね?」と言って、とある作戦を実行しました。すると、案の定怒った英人から電話がきます。
「お前弁当に雑草入れた? 帰ったら覚えとけよ」
じつは、どうしても手元に食べ物がなく、苦肉の策で材料費がかからない近所で採ってきた山菜をお弁当に入れたのでした。そのまま言葉を続ける美乃梨。
「それしか食べ物ないし、あんたが帰る家ももうないよ」
「は……?」
やりくりの難しさを実感しているはず…
美乃梨は、すべての事情を両家の両親に伝えました。もちろん、どちらの両親も激怒。今住んでいる家は美乃梨の両親からもらっているので、もう英人が入れないように鍵も交換しました。
やっと美乃梨が本気で怒っていると察した英人は、玄関先で泣きながら土下座しますが、今さらそんなことをされても許せるわけありません。結局、美乃梨と英人は離婚をすることに。
その後、実家からも勘当を言い渡され、車のローンと慰謝料の支払いに四苦八苦している英人。少ない生活費でのやりくりがどれだけ大変か、少しは理解できているはずです。
美乃梨は、結婚前の経験を活かして経理としてまた仕事を始める予定で、久しぶりに働けるのを楽しみにしています。
給料が半減すると分かっていながら勝手に転職していた英人。お金も渡したくない、家事もしたくないと、とんだワガママ夫でしたね。結局、新車でのドライブは叶いませんでしたが、夫の本性を早く知れてよかったのかもしれませんね。