春子は在宅ワークをしながら、夫の弘明と暮らしています。最近、義父が亡くなったことをきっかけに、独りになってしまった義母はふさぎ込んでしまい、弘明は頻繁に様子を見に行くようになりました。そしてある日、義母が心配だからという理由で急に夫が同居を提案してきて……。
同居なんてまったく考えていなかった
いつものように夫の弘明から帰宅時間の連絡がなく、確認をしてみた春子。すると、義父を亡くしてから元気がなくなった義母の様子を見るために、実家に帰っていました。春子も近々会いにいこうかなと話していると、弘明から相談があると打ち明けられます。
どうやら、独りになった義母が心配で同居を考えている様子。今までまったく考えていなかった春子は、急な提案に戸惑います。しかし、これまで義母にお世話になっていたことを思うと、簡単には断れません。そこで、お互いに住みにくいと分かったら同居を解消するという条件のもと、春子は同居を受け入れることに。
ワガママ&小言三昧に豹変した義母
そうしてスタートした同居。弘明は義母に家事も手伝ってもらえると言っていたのに、実際の義母はそんな様子はまったくありません。むしろ、細かい用事を頼んできたり、ご飯の用意や掃除もすべて春子任せ。自分の気に入らないことがあると文句を言うこともあり、春子の負担は増すばかり……。おかげで日中は仕事が進まず、徹夜しながらなんとかこなしていました。
そんな生活に限界を感じ、弘明に訴えたところ「俺の仕事が落ち着いたらちゃんと母さんの相手をするから、もう少しだけ我慢してくれないかな?」と言われます。
義母に手がかかっていてすっかり忘れていましたが、そういえば弘明も最近は土日も関係なく家を空けていることに春子は気が付きます。弘明は急に新しい部門を任されたらしく、毎日バタバタしている様子。お互い大変なんだなと思い、春子はもう少し辛抱してみることにしたのでした。
「お願い、出て行くのはやめて!」義母が懇願する理由は…?
ある日、出かけていた義母から帰りの時間に合わせて迎えに来ないことを責められた春子。電車かタクシーで帰るように伝えると、義母は激怒。これまでのこともあって、もうダメだと悟った春子は義母に告げます。
「もう限界です...実家に帰らせてもらいます」
その言葉を聞いた瞬間、義母の態度が変わりました。
「待って!息子と2人きりにしないで!!」
「お願い、出て行くのはやめて!」
「じゃないと私が怒られるの」
「え……?」
さっぱり意味が分からない春子。
「私は春子さんの行動を制限するためにわがままを言ってたの」
そう言って、義母は真実を語り始めます。じつは、弘明は不倫をしていて、それを春子に悟られないようにわざと面倒をかけさせていたと言うのです。信じがたい話ですが、それを裏付ける証拠のやりとりもあり、義母がウソをついているわけではなさそうです。
弘明は義母の通帳を取り上げ、ときには暴力をふるって脅迫していたようです。
おそろしい真実を知ってしまった春子は、弁護士を通して弘明と離婚。その後、弘明は不倫相手とも別れて仕事もうまくいっておらず、寂しく暮らしているようです。義母はというと、遠く離れた街の高齢者向け住宅で新しい人生を歩み始めました。今ではすっかりやさしかった義母に戻り、義母を救うことができたことに安堵する春子でした。
豹変したのは義母ではなく、まさかの夫でした。義母は、本当は春子にやさしくしてあげたかったのですね。それなのに酷い言葉を浴びせなくてはいけない状況だったのは義母にとってもかなり辛かったはず。義母が打ち明けてくれた結果、弘明と離れることができて2人ともよかったですね。義母も春子も新しい人生を穏やかに暮らせますように。