27歳の会社員パニ子には、3つ年上の彼ハヤトがいます。イケメンでとてもやさしい彼は理想の恋人で、他の女性に取られやしないかと日々心配しています。しかしその心配をよそに、付き合って半年で突然のプロポーズ! 完全に舞いあがったパニ子は即オッケーをし、善は急げと実家の両親に挨拶に出かけます。しかしその日が人生の分岐点になるとは思っても見ませんでした。
突如変貌した婚約者
今日は挨拶に出かける日。しかし、パニ子の父は急ぎの用事で家を空けることになってしまいました。ハヤトに日程を改めるかと相談したところ、「別にいいよ、さっさと済ませたいから予定通りに行こう」 と言うではありませんか。
結婚の挨拶は大切なものだと思っていたパニ子は、すこし違和感を覚えました。しかし、ハヤトは緊張からそう言っているとも思い、母だけが待つ家にハヤトと向かいました。
パニ子の実家に到着したハヤトは、挨拶も早々にズカズカと家に上がり、用意されていた席にどっかり座りました。そして、お菓子に手を伸ばし、無言でガツガツ食べ始めるではありませんか。呆然とするパニ子と母。
動揺しながらも、ハヤトにまず挨拶をするようにうながしたパニ子でしたが……。「男が話し始めるまで女は黙っているもんだよ!」 いつもとまったく違うハヤトの態度に、パニ子はびっくりして声を失いました。
堂々の関白宣言!
その後ハヤトは続けて、堂々の関白宣言!
嫁をしつけるのは夫の役目で、パニ子を甘やかさず、家事と仕事を完璧に両立させる。もし子どもが生まれたら、里帰りはさせず、最低限の育児休暇を取らせ、孫の面倒を見にパニ子の母には家に通ってもらう、と主張します。
「お義母さんは女だから、理解できますよね?」 さも当然のような顔のハヤトに、母は、「よ〜くわかるよ! あんた、いい人が夫になってよかったね! 」
まさかの反応に耳を疑ったパニ子ですが、次の言葉を聞いて合点がいきました。お父さんにも会ってもらわないとね、驚くわよーと。
はは〜ん、なるほど! パニ子は急いで父とハヤトを会わせる手はずを整えました。
ハヤトはというと、自分が褒められたと勘違いして、うれしそうに帰っていきました。
逆襲劇場、はじまり、はじまり〜
「あれは、釣った魚にエサはやらないってヤツの典型だよ」 ハヤトが帰った後、パニ子の母は大きなため息をつきました。
「結婚してあんたが自分の物になったら、自分は好き勝手をしてあんたに何でもやらせようって魂胆だね」 今日のところは我慢した2人ですが、ハヤトの鼻っ柱をへし折る逆襲劇のシナリオを用意しました。
そして迎えた次の週末。
何も知らないハヤトがパニ子の実家にやってくると、そこにはにらみを利かせた父。ハヤトは前回とは打って変わって、借りてきた猫のように小さくなっています。
「妻からおもしろい話を聞いた」と父。重ねて母が「前回はふんぞり返っていたのにどうしたの」と尋ねます。
「君、結婚したら娘をしつけると言ったらしいね」
「お父さんも、男として私の考えはわかりますよね? 」
「いいや、わからんねぇ。まったくもってわからん!! お前は何様のつもりだ!? 」
時代錯誤のハヤトの考えに理解は示さず、大事な家族を不幸にはさせない、結婚は許さないと息巻く父。しどろもどろになるハヤトに、怒り爆発の母の一言が追い打ちをかけました。
「何をグズグズ言っているんだ、ったく情けない男だねぇ! 」
「も、申し訳ありませんでした……」
振り絞るような声で謝ると、ハヤトはすごすごと帰っていったのでした。
とんだ魚を釣ったけれど…
これにて一件落着、と思ったのですが、話には続きがあります。
なんと婚約破棄の話になったとたん、ハヤトはひどく態度を変え、「慰謝料を請求する」と言い出す始末。
しかし、これもすぐに解決。なぜならパニ子の父はやり手の弁護士なのです。
どうやらハヤトは現在無職でお金がまったくなかったよう。パニ子の稼ぎをあてにして自分はさっさと仕事を辞め、義理の母親までこき使おうと思っていました。楽して暮らすために、結婚を持ちかけたのでした。
今回はとんだ魚を釣って痛い目にあったパニ子ですが、家族のおかげで事なきを得ました。人生、失敗から学ぶことは多くあります。パニ子には、この失敗を糧に今度は幸せをつかんでほしいですね。