突然、父の病が判明して…
ある日、父から電話がありました。久しぶりの電話に少し驚きながら出ると、「実は数日前から入院している。末期がんだと診断されて……」と。あまりに突然の告白に、私は言葉を失いました。
さらに、「入院中の着替えを持ってきてくれないか」と頼まれました。妹が父と一緒に実家で暮らしていたはずなのに、なぜ私に? という疑問を抱きながら、急いで実家へ向かうことに。
実家では、妹がリビングでくつろいでいて、「病院に届けるの面倒なんだよね〜」と悪びれもせず言いました。とっくに成人しているにもかかわらず、父に頼りきりで生活している妹。父の病状よりも、自分の都合やお小遣いの心配ばかりしていて、私はがくぜんとしました。
私たち姉妹の母は、数年前に他界しています。妹は母の死後も実家に住み続け、家事も働くこともせず、父に生活を頼りきっていました。父はそんな妹に甘く、何かとお金を与えていたようです。
父の死、そして夫の本音
父はその後、間もなく亡くなりました。私は泣きながら夫に連絡し、父の訃報を伝えました。
ところが夫は、開口一番、「遺産はどうなるんだ!? お前の実家大きいし土地も広いし、かなりもらえるんじゃないか? 楽しみだな!」と……。
父の死に対して悲しむ様子や私への慰めの言葉もなく、資産のことばかり気にしている姿に、私は言葉を失いました。
それでも、姉妹で遺産について話し合う必要があるのは確かなので、妹と話す機会を持ちました。すると妹は、「お姉ちゃんはお金に困ってないでしょ。全部私がもらうから」と主張。
あまりに自己中心的な態度にあきれながらも、私は争う気になれず、相続を放棄することにしました。
遺産も夫も、私には不要でした
その夜、夫は私の帰宅を待ちかねたように、「で、いくらもらえるの?」と食い気味に聞いてきました。
「妹にすべて譲ったから、私は何ももらわないよ」と答えると、夫は顔色を変えて怒り出し、
「もういい! それなら離婚だ! 俺は、お前の妹と結婚する!」
と叫んで、荷物をまとめて出ていったのです。元々妹は夫からお小遣いをもらうために色目を使っていたので、結婚できると思ったのでしょう。
数日後、夫は本当に妹を連れて戻ってきました。離婚届を手にして、「お前と結婚したのは、金目当てだった。相続を放棄するなら意味ないからな」と言い放つ夫。
妹は夫の隣でうれしそうに笑いながら、「お姉ちゃんごめんね〜! 私、孤独なのは嫌だからさ!」と言いました。
これまで父に頼りきりで、家事も仕事もまともにできず生活力のない妹。父の死後、自分ひとりで生きていく自信がなかったのだと思います。
そんな妹を、夫はうまく言いくるめたのでしょう。妹にとって、夫は新たな“依存先”に見えたのかもしれません。
その場で、私は静かに離婚届に判を押しました。悲しいというより、ただただ呆れた――それが正直な気持ちでした。
真実を知った2人の末路
それから半年ほど経ったころ、妹から連絡がありました。なんと、父は妹の浪費に頭を悩ませ、生活を維持するために多額の借金を抱えていたのです。
ところが妹はその事実を知らず、相続してしまったのだとか。
その後、借金の存在が発覚したものの、「手続きがよくわからない」と言って何も対応しないまま放置。結果として、相続放棄が可能な期間を過ぎてしまい、借金を背負うことになったそうです。
無職だった妹と、遺産をあてにして仕事をやめた元夫。2人は今、借金返済のために昼夜働き詰めの生活を送っているそうです。
妹から「どうにかならないか」と弱音を吐かれましたが、私も仕事を始め、自分の生活を立て直すことで精いっぱい。そのことを伝えて、妹とは距離を置くことにしました。
日頃から父ときちんと向き合い、感謝の気持ちを持って接していれば、防げたはずのこと。それを怠り、利己的に生きてきた妹と、お金に目がくらんで妻を裏切った夫の末路は、自業自得だとしか言いようがありません。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。