マンションで苦手なママと鉢合わせ
同じマンションに住むAさんは、シングルマザーとして息子さんと暮らしていました。会えば明るく挨拶を交わす仲でしたが、私は彼女のことが少し苦手。エレベーターで一緒になるたび、彼女は悪気のない笑顔でこう尋ねるのです。
「お子さんの予定は? 若いうちに産んでおかないと大変よ〜!」
デリカシーのない発言に毎回、胸がチクリと痛みました。夫にそのことを話しても、「考えすぎだよ。普通に世間話してるだけじゃないか」と気にも留めてくれません。私だけが抱えるこのモヤモヤは、次第に夫との間の溝を深めていきました。
夫との温度差に不満が募り…
「一度、一緒に病院へ行ってみない?」
勇気を出して不妊治療を提案した私に、夫は面倒くさそうに言いました。
「え、俺も行くの? 大げさだなぁ。もし何か原因があるとしたら、普通は女のほうじゃないの?」
その無神経な発言に、私はショックを通り越してあきれてしまい、何も言い返す気になりませんでした。
結局、私はひとりで検査を受けることに。結果は「異常なし」で、医師からは夫側に原因がある可能性を伝えられました。
結果を伝え、今度こそ一緒に病院へ行こうと誘っても、夫は「仕事が忙しい」と話をはぐらかすばかり。そのころから、夫の休日出勤や飲み会が急に増えたように思います。
夫の浮気現場を目撃!
ある週末の昼下がり、私は買い物帰りに信じられない光景を目にします。駅前のホテルから、Aさんと仕事へ行っているはずの夫が出てきたのです。私はすぐ近くに立っていましたが、二人は気づいていない様子。そして親密そうに笑い合い、キスを交わしていました。
頭が真っ白になり、持っていた買い物袋を落としてしまった私。物音に気づいた夫と目が合った瞬間、彼の顔からサッと血の気が引いていくのがわかりました。Aさんは一瞬驚いた表情をしましたが、その後は何食わぬ顔で堂々としています。
「どういうことなの?」と震える声で問い詰める私に、開き直った夫が放った言葉は、私の心をズタズタに引き裂きました。
「お前はもう女として見られない! 子どももできないし……。家にいても息が詰まるんだよ!」
追い打ちをかけるように、Aさんから「ごめんねぇ。旦那さん、すごく悩んでたみたいで、相談に乗ってるうちに、こういう関係になっちゃって♡ 彼も私のほうがいいって言ってくれてるの」という発言が。
夫の本性を知って、悲しみよりも怒りが勝り、夫への愛情は急速に冷めていきました。私はすぐに離婚を決意。二人は不倫を認め、今後は再婚予定とのことだったので、私は慰謝料を請求したのでした。
元夫と不倫相手に再会
数年後、私は職場の同僚と再婚しました。彼との間に3つ子を授かり、毎日が嵐のようですが、笑いの絶えない幸せな日々を送っています。
先日、家族で公園に出かけたときのこと。思いがけず、元夫とAさんにばったり再会してしまいました。赤ちゃんを抱いたAさんは、私を見るなり得意げに言います。
「あら〜、久しぶり。この子は私たちの子どもよ♡ あなたにはわからないでしょうけど、子育てって本当に大変なのよ?」
そのとき、たまたま夫と子どもたちは少し離れた場所で遊んでいたため、Aさんはその存在に気づかなかったようです。
「わかりますよ。うちは3人なので、子育ての大変さは毎日実感していますから。それより、お子さんおめでとうございます。そういえば以前に病院で、『不妊の原因はもしかしたら彼のほうにあるかも』なんて言われたことがあったんです。無事に授かって、本当によかったですね」
私の言葉に、Aさんはみるみる顔面蒼白になり、元夫は「……どういうことだ?」と凍りつきました。私がかつてひとりで検査に行き、「異常なし」という結果だったことを思い出したのでしょう。
「俺に……原因があったのか? じゃあ、この子は……誰の子どもなんだ?」
そう呟く元夫の視線が、隣で固まっているAさんと、その腕に抱かれた赤ちゃんへと移ります。そして、すべての辻褄が合ってしまったかのように、絶望の表情へと変わったのです。
二人がその後どうなったのか、詳しくは知りません。ただ、風の噂で離婚したらしいとだけ聞きました。
今の私にはもう関係のない話です。かつてのつらい日々があったからこそ、目の前で笑う夫と3人の子どもたちの存在が、何よりも愛おしい。今はただ、この幸せを大切にしていきたいと思っています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
著者はもっと広い視野を持とう