30歳の私と33歳の夫は結婚して2年。なかなか子宝に恵まれず、夫婦で検査したところ、夫に問題があり子どもができる可能性がほぼないことが判明しました。
しかし、私は子どもが欲しいから結婚したのではなく、夫が好きで結婚したので別れるつもりなどはありません。
私と夫の出会い
私は現在、義父が経営する中小企業で事務兼社長秘書として働いています。前職を辞めて再就職先を探していたときにたまたま求人を見つけ、入社したのがきっかけでした。
仕事に真面目に取り組んでいたことを社長である義父に評価され、社員の一人として、家族ぐるみの社内バーベキューにも呼んでもらえるようになりました。
そこで初めて紹介されたのが、義父の息子――つまり、今の夫です。夫は別の会社で働いており、家業については「いずれは継ぐかも」と口にしてはいたものの、あまり興味があるようには見えませんでした。
その後、交際・結婚へと進み、私はそのまま義父の会社で働き続けていました。
子どもが欲しい。でも夫には原因が…
結婚してしばらくしても子どもができず、検査を受けた結果、医師からは「自然妊娠は難しいかもしれない」と言われました。
原因は夫にあるとされ、私はショックを受けましたが、夫を責める気にはなれませんでした。
「子どもがすべてじゃない。私は夫と一緒にいたい」と心から思っていました。
しかし、そんな私の気持ちとは裏腹に、夫の様子がだんだんおかしくなっていったのです。
夫の行動に違和感…そして義父からの予想外の話
帰宅時間が遅くなったり、休日に突然外出したりすることが増えてきた夫。スマホを見る頻度も増え、私が話しかけてもどこか上の空。
嫌な予感を抱えていたころ、夫から突然こんなことを言われました。
「父さんから『大事な話があるから2人で来てくれ』って言われたんだけど、今度の土曜日、俺は行けないから、ひとりで行ってきてくれない?」
大事な話なら夫も行くべきでは?と思いましたが、「急な出張が入った」と言う夫に半ば押し切られるような形で、私はひとりで義実家へ向かいました。
私がひとりで訪れた様子を見て、「やっぱりアイツは、来ないかな……」とため息をつく義父。
そして、こう言われたのです。
「そろそろ会社を任せたいと思っている。◯◯(夫)ではなく、君に継いでもらいたい」
突然のことに、私は言葉を失いました。
「でも、私で本当にいいんですか? 義理の娘ですし、社員として入ってまだ数年しか……」と戸惑う私に、義父ははっきりと頷いて言いました。
「君は誠実で、誰よりも会社を大切にしてくれている。責任感もあるし、社員からの信頼も厚い。息子には……残念だがその覚悟が感じられない。会社を安心して任せられるのは、君しかいないとずっと思っていたんだよ」
私は迷いながらも、その言葉を真剣に受け止め、「私でよければ、精いっぱい頑張らせていただきます」と伝えました。
出張帰りの夫がまさかの人物を連れてきて!?
出張中の夫に義父の話を伝えるか悩みましたが、大事な話なので帰宅後にちゃんと面と向かって話をしようと考えた私。
1週間後、出張から戻った夫から「帰ったら、ちゃんと話したいことがある」とメッセージが入っていました。
私が家で待っていると、帰宅した夫の隣には、見知らぬ女性――A美がいました。
そして夫はためらいもなく、こう言ったのです。
「彼女と付き合ってる。子どもができた。俺、会社を辞めてきたから、家業を継ぐことにした。だから、離婚してくれ」
あまりにも突然で自己中心的な宣言に、私はあぜんとしました。
しかし、すぐに落ち着きを取り戻し、こう言いました。
「ありがとう。無職の夫を引き取ってくれるなんて、感謝しかないわ」
2人がポカンとしているのを見て、私は続けました。
「ちなみに、お義父さんが『会社を継いでほしい』って言ってるの、私なんだけど」
義父母の怒りと、不倫の真相
当然、夫もA美も信じられないという顔をしていましたが、他の部屋で待っていてもらった義父母が現れ、夫に向かって怒りをあらわにしました。
「妻を裏切って不倫に走るようなやつに、会社を任せられるわけがない!」
実は、夫の不審な動きを怪しく思った私は探偵に依頼し調査をしていたのです。
その結果、A美との不倫関係が発覚。
義父母にもこの事実を伝え、この日、出張から帰宅した夫に事実確認をするために、わが家に呼んでいました。
調査の結果、A美には夫の他にも複数の交際相手がいたことがわかりました。
また、夫は子どもができにくい体質だという診断を受けていたため、A美の妊娠も本当に自分の子どもなのか疑わざるを得ない状況でした。
夫は言葉を失い、その場に崩れ落ちます。
「……嘘だろ……俺は騙されていたのか?」とつぶやく姿に、さすがに同情の気持ちが湧くこともなく、ただあきれるばかりでした。
一方のA美は、「そんなの知らない! 私は◯◯さんの子だと思ってる! 社長夫人になれると思ってたのに!」と逆ギレ気味に声を荒らげましたが、もはや誰にも相手にされていませんでした。
私は静かに言いました。
「あなたとは、もう終わりにします。慰謝料のことは弁護士を通して連絡します」
私は社長に、夫は無職に
その後、私は夫と離婚。そして正式に義父の会社を引き継ぎ、新社長として就任しました。
一方、夫とA美には慰謝料を請求。2人は別れたようですが、夫は職も家庭も信頼もすべて失って、現在は義実家で暮らし、肩身が狭い思いをしているようです。
義父は私に言いました。
「誠実な人間こそ、社員が安心してついてこられる社長になれる。君なら絶対に大丈夫だ」
つらい思いをしましたが、義父の言葉を胸に、私はこれからも、地道に、真面目に、自信を持って新たな人生を歩んでいこうと思います。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。