転居先の保育園で出会った“クレクレママ”
ある日、新しい保育園で娘が友だちになった子のママから話しかけられました。
「マイホームを購入して引っ越してきたんですよね? 庭付きで素敵なおうちって他のママから聞きましたよ〜」と興味津々。そのうち「ローンは何年? いくらかかったの? 教えて〜」と質問攻めにされたのです。
さらに、私が持っていたバッグや娘の服を見て「それ、うちの子にも似合いそう! 今度譲ってよ」などと図々しいお願いまで。どうやらそのママは、あちこちのママたちに物をねだってまわる、いわゆる“クレクレママ”のようでした。
「社長さんなんでしょ?」夫に急接近するママ
それから数日後、私と夫が休みを合わせて2人でデートしていたときのこと。偶然そのママと出くわしてしまいました。
「あら〜、こんちは! 旦那さんはじめまして! たしか経営者さんなんですよね? 他のママが“社長さんらしい”って言ってましたよ〜」と、なぜか根拠のない噂を信じ込んでいる様子。
夫は苦笑いしながら「いやいや、ただの個人事業主です。自分ひとりでやってる仕事なので、社長なんてとんでもないです」と否定。
それでもそのママはまったく引く様子もなく、「でも実質、社長みたいなものでしょ? 自分で仕事回してるってすごいな〜!」「やっぱりオーラが違うと思ったのよね〜」と、やけに夫を褒めちぎりながら、距離をどんどん詰めてきました。
私は内心かなり警戒しながら、なんとかその場を穏便に収めようと「そろそろ娘のお迎えがあるので……」と切り上げる理由を口にし、夫と一緒にそのママに頭を下げて立ち去りました。
まさかこの数日後、あんな修羅場が待ち受けているとは思いもしませんでした――。
自宅前で待ち伏せし、トンデモ発言!
それから数日後。仕事を終えて家へ向かっていると、なんと例のママが私の家の前をうろうろしているのを発見。
不安に思いながら声をかけると、信じられない言葉が返ってきました。
「私、あなたの旦那さんに一目惚れしたの! お願い、譲って!」
さらには「私のほうが支えてあげられるし、見た目もお似合いでしょ?」とまくし立て、あまりの図々しさに私は言葉が出ませんでした。
その騒ぎを聞きつけた夫が家から出てくると、彼女は目をキラキラさせながら「さすが社長〜! テレワークで部下をまとめてるなんて素敵♡」と妙にテンション高め。
夫が冷静に「いやいや、フリーランスでやってるだけで、部下なんていませんよ」と返すと、彼女は一瞬ショックを受けた様子でしたが、すぐに気を取り直してこう言いました。
「でも、家を建てる経済力があるってことよね? 私、夫とうまくいっていないの。それに、生まれて初めて一目惚れして……。この出会いは諦めちゃいけないって思ったの!」
しかし夫は毅然とした態度で、「僕は妻を愛しています。今の家庭を何よりも大事にしています」ときっぱり断ってくれました。
夫の背後から現れた人物は…!?
断られた瞬間、クレクレママの態度は一変。「せっかく私から声をかけてあげたのに、なんなの!? もういいわよ! フリーランスだなんて願い下げ! 本当は無職なのを隠してるだけじゃないの!?」と、今度は夫を罵倒し始めたのです。
そのとき、後ろから「おい、お前……何してるんだ?」と男性の声が。振り返ると、そこにはなんと、クレクレママの夫が立っていました。
実は彼は夫の仕事相手で、ちょうどその日も打ち合わせのために私たちの家に来ていたところだったのです。
クレクレママは彼の姿を見た瞬間、明らかに動揺し、「な、なんでここにいるのよ……!」と声を震わせました。
「一部始終聞いてたよ。人の夫に告白って……正気か?」と、彼は怒りを露わにし詰め寄ります。
クレクレママは「だって……私、本当は一目惚れした人と結婚したかったのよ」などと、身勝手すぎる言い訳をし始めましたが、とても聞いていられない内容でした。
あまりに騒がしくなり、娘も家の中から不安げにこちらを見ていたので、私は「ここは自宅ですし……今日はとりあえず帰ってください」と二人に声をかけました。
クレクレママの夫は深く息を吐いてから「ご迷惑をおかけし申し訳ございません」と言って、彼女を連れて帰っていきました。
クレクレママの末路
後日、仕事のために夫のもとを訪ねてきたクレクレママの夫から、あの騒動のあとに離婚したことを聞きました。
彼女はもともと家事や育児をほとんどせず、夫を見下すような態度ばかり取っていたそうです。さらには保育園でのクレクレ行動で迷惑をしているという苦情も多く寄せられており、そうした積み重ねもあった中、あの日の暴走が決定打になったのだとか。クレクレママは親権も手放すことになり、実家に戻ったそうです。
それ以来、私たち家族とクレクレママの元夫、そして娘同士は、家族ぐるみで良い関係を築いています。
あの一件を通して、家族の大切さや夫婦としての信頼を改めて実感しました。これからもこの小さな家庭を、何よりも大事に守っていこうと思います。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。