義姉の離婚と待ち受ける試練
たまに義実家へ訪問すると、義姉は虫の居所が悪いのか、私に対して「存在感がない」「どうしてこんな子を嫁にもらったのか不思議〜」と、顔を合わせれば嫌みばかり。
義実家での食事会でも、酔った義母と義姉が私をからかい、夫はそれを止めることもなく黙って見ているだけでした。
義実家が近所にあるため関係を絶つわけにもいかず、私はこれから生まれてくる子供のことを考えて、なんとか我慢していました。
人助けがきっかけで心温まる出会い
ある日、気分転換に近所のショッピングセンターへ出かけたときのことです。 帰ろうとした私の前で、ご高齢の男性がふらつき、転びそうになりました。とっさに体を支え、話を聞くと「孫とはぐれてしまった」とのこと。心配だったのでお孫さんが見つかるまで一緒に待つことにしました。
しばらくして無事にお孫さんと合流。お孫さんはスーツの似合うしっかりとした男性で、「祖父がすみません、助かりました」と、お礼に喫茶店でお茶をご馳走してくれました。
そのとき、おじいさんが嬉しそうにこう言ったのです。
「この子は自慢の孫なんだ! 〇〇法律事務所で弁護士をしていてな、すごいだろ〜」
お孫さんは「おじいちゃん、そんな大声で恥ずかしいよ」と苦笑いしていましたが、帰り際に「祖父がご迷惑をおかけしました。何かあればご相談くださいね」と、勤務先の名刺を渡してくれました。
夫からの信じられない言葉
帰宅して夕飯の準備をしていると、帰ってきた夫がいきなり怒り出したのです。
「お前、今日喫茶店で男と楽しそうに話してたな。どういうことだ?」
どうやら夫は、偶然その様子を見ていたようでした。私は人助けのお礼でお茶をしていただけだと説明しましたが、夫はまったく信じてくれません。それどころか義母と義姉を呼び出し、私の浮気を疑って責め立ててきたのです。
さらに夫は、信じがたい言葉を口にしました。
「そのおなかの子、今日一緒にいた男の子なんじゃないか? 本当に俺の子なのか?」
臨月の妻に向かって耳を疑う最低な発言。義母たちもここぞとばかりに「慰謝料を請求する」「出ていく準備をしなさい」と騒ぎ立て、勝ち誇った様子で、夫を連れて義実家へと帰っていきました。
昼間に出会った弁護士さんに相談
あまりに理不尽な言いがかりに困り果てた私は、財布に入れた名刺の存在を思い出しました。
「確か、弁護士さんだって言っていたはず……」
藁にもすがる思いで名刺の番号に電話をかけ、昼間に出会った男性に取り次いでもらいました。事情を話すと、彼は驚きながらも、とても誠実に対応してくれました。
「僕らのせいで疑われてしまったようで申し訳ありません。僕が当日の証人になります」 そう言ってくれた後、彼は少し声を潜めてこう続けました。
「それにしても……そこまで奥さんを責め立てて、すぐに離婚や退去を迫るというのは、ちょっと違和感がありますね。まるで、別れる口実を探していたかのような……」
さすがはプロです。私の感じていた違和感を、彼は的確に指摘しました。
「実は僕、離婚問題をメインに扱っているんです。徹底的に戦いましょう」
彼の読みは的中していました。
アドバイス通りに夫の身辺調査をおこなうと、案の定、夫は真っ黒。なんと5年も前から、会社の部下の女性と不倫関係にあったのです。調査報告書には、言い逃れできない決定的な証拠がそろっていました。
夫の勘違いを正し、反撃開始
数週間後、夫と義母、義姉が再びやってきて、離婚届と慰謝料の請求書を突きつけてきました。
「不倫女はさっさと出ていけ! この家は俺たちが引き取ってやる」
夫はそう言って、さも自分が家の主であるかのように振る舞いました。
「……引き取る? 何を言っているの?」 私が聞き返すと、夫は「はあ?」とあきれたように鼻で笑いました。
「夫婦なんだから、家の権利だって半分は俺のもんだろ。お前が出ていくなら、当然この家は俺のものになるんだよ」
どうやら夫は大きな勘違いをしているようです。
私は冷静に真実を告げました。
「あのね、この家は私が結婚する前に祖父から譲り受けたものだよ?」
「は? だから何だよ。夫婦で住んでいるんだから、夫婦のものだろ」
「この家はあなたと築いた財産じゃないから、私の特有財産なの! たとえ夫婦でも、あなたには1ミリも権利がないのよ」
「えっ……?」
「だから、出ていくのはあなたのほうです」
自信満々だった夫の顔から、みるみる血の気が引いていきました。
証拠を突きつけ、こちらから離婚要求
あぜんとする彼らに、私は畳み掛けました。
「それから……、あなたこそ5年前から不倫していますよね?」
私がテーブルの上に、調査で入手した証拠写真を並べると、顔面蒼白になり言葉を失う夫。
「不倫相手は、取引先の重役の娘さんですよね? 弁護士を通じて、彼女のご実家に内容証明郵便を送らせていただきました」
相手が実家暮らしだったため、親御さんの目にも触れることになるでしょう。
「お義母さんとお義姉さん。あなたたちが頼りにしている息子さんは、これから慰謝料と養育費の支払いに追われますし、住む場所も失います。私を追い出してこの家に住む計画だったようですが、残念でしたね」
そう伝えると、あんなに威勢の良かった義母と義姉は顔を見合わせ、真っ青になって黙り込んでしまいました。
その後、弁護士さんに代理人になってもらい、こちらに有利な条件で離婚が成立しました。夫は不倫が相手の親にバレてしまい、取引先との関係悪化を恐れ、会社にいづらくなって自ら退職したそうです。多額の慰謝料と養育費を抱え、今は昼夜アルバイトをしていると共通の知人から聞きました。
また、私は家を売却することにしました。 夫との嫌な思い出がある家に住み続けるのも嫌でしたし、何より義実家が近所にある状況では安心して子育てができないと思ったからです。祖父には申し訳ないと思いましたが、事情を墓前で報告し、心機一転、新しい土地へ引っ越しました。
無事に出産を終えた私は今、娘と二人で穏やかに暮らしています。 あのとき、おじいさんを助けていなければ、名刺をもらっていなければ、私は泣き寝入りしていたかもしれません。偶然の出会いと、おじいさんの孫自慢に救われた、忘れられない出来事です。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。