そんなある日、夫が開発したソフトを大手企業が採用してくれることになりました。前払い金としてある程度のお金を先に払ってもらえるようで、かなりの好条件です。社員も増やして機材にも投資をして……、ついに夫にチャンスが到来しました!
夫に訪れたチャンス
しかしこれはまだ夫の会社にとって最初の一歩でしかありません。気を引き締めて、一層頑張らねばならない時期だったはずでしたが、夫は有頂天! 機材の投資より先に、自身のスーツや時計にお金を使い、社員を引き連れて高級なお店に頻繁に出かけるようになりました。
前払い金が入ってお金持ちになった気でいるようですが、あくまでもそれは投資金。ソフトの納品はまだ終わっていません。1回きりで契約が打ち切りになってしまうこともないとは言えません。夫に釘をさすと「縁起が悪い」「お前がそんなことを言うから士気が下がる」と文句ばかり言います。
ついには、私のような現実的な人間と一緒にいると想像力が欠如すると言い張って、家に帰らず会社に泊まり込みで仕事をする日が増えていきました。
忘れ物を届けに行くと…?
あるとき、家に下着を取りに帰ってきた夫が「重要書類」と赤字で書かれた封筒を忘れて会社に戻ってしまいました。仕事のことは詳しく知りませんが、今日取引先に渡さなければならないものだとわかります。
私は封筒を持って、急いで夫を追いかけました。夫は仕事をしていると疑いもしなかった私。ドアに手をかけて開けようとしたところ、中から何やら楽しそうな声が聞こえてきました。
忘れたことすら気付いておらず…
ドアの隙間からそっと中を覗くと、夫と若い女性が寄り添ってイチャイチャしている姿が確認できました。夫は「仕事なんて何かしら理由をつけてリスケすればいいだけw」なんて信じられないことを言って、女性を旅行に誘っています。女性もまんざらではない様子……。夫は、大切な書類を忘れていることさえ、気が付いていないようです。
それに続けて「嫁とはもう離婚するから。あいつもうババアだし」なんてひどい言葉も……。この瞬間、私の中で何かが切れてしまい、封筒を渡さずにそっとその場から去りました。
信頼を失った夫の末路
一週間後、夫が真っ青な顔をして帰ってきました。無理もありません。だって、大手企業との取引が打ち切りになってしまったのだから……。
実は私、例の封筒を直接取引先に届けたのでした。そのとき担当者には、夫が旅行に行っていてすぐに返事ができないことや、機密情報の管理が甘くて危うく封筒を失くすところだったことを伝えておいたのです。
それには先方の担当者も激怒。取引の打ち切りはもちろん、前払いしていた開発費の返還を要求され、開発の遅れと機密情報の漏洩未遂で、夫の会社は賠償金も支払うことになったのでした。
あっけなく倒産した夫の会社。せっかくのチャンスだったのに、自分の手ですべてをダメにしてしまうなんて残念でなりません。もちろん私はあの後すぐに夫とは離婚しているので、もう私の知ったことではないのですが……。
今までの苦労が報われる大きなチャンスだったのに、本当にもったいないですね。ときに間違いを犯すこともありますが、人の助言に耳を傾けることも大切です。謙虚な姿勢を持って取り組んでいきたいものです。