しかし義父の他界をきっかけに義母は元気をなくしてしまいました。あんなに楽しみにしていた孫の誕生にも興味がなくなり、毎日ただぼーっとしているのです。
おまえが全部やれ!
さらに義母は、だんだんと物忘れが激しくなっているよう……。出産を控えていることもあり、早めに病院を受診しておいたほうが良いと感じていました。
夫も義母の物忘れに気づいていました。それなら話が早い! と思ったのも束の間、「俺、忙しいから、世話とか無理。めんどくさいから、おまえが全部やれよな」と義母のお世話を私に丸投げしてきたのです。
臨月でおなかも大きくなってきた私に、どれだけ負担をかけるつもりでしょうか……。
認知症になった義母
夫の協力が期待できないのなら、赤ちゃんが産まれる前に義母を病院に連れていかねばなりません。すぐに義母を病院に連れていくと、認知症が進行していることがわかりました。
その日の夜、夫に義母の症状を説明し、デイサービスなどの介護施設にも通ってもらおうと思っていると話すと、なんだか渋い表情……。そして「それ金かかるよね? あんまり無駄金は使いたくないなぁ……」と呟きました。
義母にとっても、家に引きこもっているよりもずっといいはず。さらに、これから子育ても始まるというのに、義母のお世話をする余裕などありません。どこが無駄金なのか、私には理解できませんでした。
自宅介護
結局、強引にデイサービスの利用手続きをし、義母には定期的に通ってもらうことにしました。すると、みるみるうちに以前の元気を取り戻したよう。義母はデイサービスでの生活がよほど気に入っているのか、家にいるときもデイサービスと同じタイムスケジュールで動くと言い始めたのです。
しかしお風呂も運動も1分でも遅れると、不安になるのか大騒ぎ! 私もヘトヘトです。夫は「母さんが風呂に入りたいって」と義母の言葉を伝言するだけ。動きが遅いと「嫁に見てもらえなくてかわいそう」と小言まで言うようになりました。
さらに「こんなに元気なら、金がもったいないから自宅介護な!」とデイサービスを断ってしまったのです。元気になったとはいえ、物忘れは依然激しいままなので、私の苦労は変わりません。
さすがにこの言葉にブチギレた私は、内緒である計画を実行しました。
お迎えが来ましたよ
数日後。朝から義母のお世話に追われていると、玄関のチャイムが鳴りました。夫は「朝早くから誰だ?」と怪訝な顔を見せます。私は「お迎えが来ましたよ〜♡」と笑顔で言いました。
チャイムの主は、老人ホームのスタッフ。私は水面下で義母がすぐに入所できる老人ホームを探し、夫の給与口座から利用料が天引きになるよう、手続きをとっていました。きっと老人ホームでの生活も義母は楽しんでくれるに違いありません。
夫は「お金はどこから出したのか?」と費用の心配ばかり。こんな夫に義母を任せることはできません。嫁としての役目はここで終わり。義母を送り出し、私は離婚しておなかの子どもと2人で生きていくと決めたのでした。
いつかはやってくる親の介護。いつそのときが来てもいいように、結婚前にしっかりと話し合っておくと安心ですね。子育ても介護も、夫婦で協力する姿勢が大切なのではないでしょうか。