再会をきっかけに私とリョウは飲み友だちになりました。とはいえ、私にとっては同期の友人のひとりでしかありません。
しかし、リョウは少し厄介でーー。
飲み友だちのはずなのに…
明るくて社交的なリョウは、飲み友だちとして付き合う分にはいい人なのですが、一緒に仕事をするとなると話は別。自信家のわりに実力が伴わず、都合が悪いと人のせいにするので、もう一緒のプロジェクトに取り組むのはご免です。
自信家なところは仕事だけではなかったようで、次第にリョウは、私がリョウのことを好きだと勘違いし始めました。周りにも言いふらすので、社内では私たちが付き合っているという噂まで流れる始末。
だんだん腹が立ってきたものの、リョウはこれからも付き合いがあるであろう社内の人。「好きな人がいるから……」とやんわり伝えました。するとリョウは「好きな人」が自分だと勝手に脳内変換したようで、さらに事態はややこしいことになるのです。
新郎が寝坊?
顔を合わせるたびに、将来のことを相談しようとか、素直になっていいよとか、訳のわからないことを言うリョウ。私は相手にするだけ時間の無駄だと思って、飲みにいくのをやめ、距離を置くことにしました。
しかしリョウは、私に避けられていることにすら気付いていません。
そんなモヤモヤを抱えながらも、かねてより予定していた結婚式当日を迎えました。相手は高校時代の友人です。ドレスを着て、そろそろ式が始まるというところでリョウから電話がかかってきました。
もちろん結婚式にも二次会にも呼んでいません。参加したいという連絡かと思い恐る恐る電話をとると「ごめん! 独身最後の夜を楽しもうと思ったら、すっかり寝坊した。新郎が来なくて不安だっただろ? すぐ向かうから式は2時間くらい遅らせて!」と早口でしゃべるリョウ。
おそらく隣には女性がいるのでしょう。猫ナデ声も聞こえてきました。
結婚式に乱入
困惑しながらも「式はもう始まってるんだけど」と伝えると、新郎がいないのに式を始めたのかと聞き返され、ようやく事態が飲み込めました。
勘違いが甚だしいリョウは、社内で私が結婚式の準備を進めていることを聞き、その相手は自分だと思い込んだようです。
私はハッキリ違うと伝えました。すると、そのまま電話が切れて、ちょうど挙式が終わったころにリョウはやってきました。
俺の彼女を奪ったのは誰だと喚き散らすリョウ。図々しくも控え室まで入ってきました。
しかしリョウは夫の顔を見てびっくり。騒ぐのをやめ、急におとなしくなったのです。
もう友だちでいられない
「えっと……社長夫人てこと?」静かに呟くリョウ。実は私の夫は取引先の社長。リョウとも関わりがあり、実はリョウが苦手とする人物です。
さすがに自信家のリョウも、夫を見て敗北感を覚えたよう。トボトボと帰っていきました。
仮に結婚相手がリョウだったとしても、結婚式前夜に女性と関係を持つなどもってのほかです。もう飲み友だちでさえもいられません。
私は結婚したら仕事を辞め、夫の会社を手伝うことになっているので、もう同僚でもありません。きっとこの先も関わることはないでしょう。
やんわりした否定は伝わらなかったようです。言いにくいこともありますが、ハッキリきっぱり伝えることも、時には大切ですね。