「私とあなたしか既婚者いないし、同窓会で夫の愚痴とか言えないじゃん?」「だから先にカフェで2人で0次会やろうよ!」「その後で一緒に同窓会の会場に行こう!」と連絡してきた同級生。
「ちょっと難しいかな……実はその日も仕事があって、仕事終わりに同窓会に向かうつもりだったの」と言うと、その同級生は態度を豹変させたのです……。
失礼すぎる電話
「え?結婚したのに働いてるの!?」と素っ頓狂な声を上げた同級生。「この歳になって結婚できないのも普通に終わってると思うけど……結婚後も妻に働いてもらおうだなんて、あなたの旦那さんって甲斐性なしのダメ男なんだね」と言われ、今度は私がびっくりしてしまいました。
「私の夫は、結婚しても働き続けたいっていう私の意思を尊重してくれた素敵な人よ」「勝手に人の夫を甲斐性なしって決めつけるのは失礼だよ」と言い返したものの、「たしかに共働き家庭は増えてるけど、奥さんにまで働いてもらわないと家計が回らないんだよね?」とまたも斜め上の返事が。
「やっぱり同窓会に一緒に行くのはなしで!甲斐性なしと結婚したあんたと一緒にいたら、私まで同類だと思われるかもしれないじゃない」「てかそれだけ貧しいなら、いっそのこと同窓会も欠席すれば?当日も仕事なんだったら、そのまま残業もしてちょっとでも残業代もらいなよ!」と同級生。
私が呆気に取られているうちに、電話は切られてしまいました。
3日後――。
直属の部下から「部長!部長ってたしか今週末に同窓会があるって言ってましたよね?」と話しかけられた私。そうだとうなずくと、「実は俺の妻も今週末に同窓会があるって言ってて……」と部下。部下の妻の出身高校と下の名前を聞くと、なんとあの電話をかけてきた同級生なのでした。
部下は気まずそうに頭をポリポリかきながら、「あの……俺が部長の部下だってことはどうか妻にはばらさないでほしくて……」「お恥ずかしい話ですが、『出世が遅い』『ボーナスが低い』とか毎日言われて、ここのところ喧嘩ばかりなんですよ」「だから、そんな夫が同級生の部下だってバレたら『同級生よりも稼ぎの低い夫なんて恥ずかしい』ってきっとめちゃくちゃ怒られると思うんですよね……」と言ってきました。
この部下はかなり優秀なのです。それに、同年代の平均と比べたら給与はそこそこ高いはず。そんな部下にこんな顔をさせるなんて……と、私はまた同級生に対して憤りを感じていました。
「俺が部下だってこと秘密にしておいてもらう代わりに、同窓会の日の休日出勤、代わりますから!」「部長は思う存分同窓会を楽しんできてください!」と言われて、私はその言葉に甘えることにしたのでした。
嘲笑のビールかけ
そして、同窓会当日――。
部下に休日出勤を代わってもらった私。開始時刻と同時に会場に入ったのですが、例の同級生にビールをかけられ、そのまま会場から締め出されてしまいました。
あまりの仕打ちに、思わず同級生に電話をかけた私。すると、「場違いな奴を会場から追い出してあげたのよ」「あんたみたいな貧乏人がいると、みんな気を遣って盛り上がれないじゃない?」と同級生。
「さっき受付の様子を見ていたけど、会費をあんただけ払っていなかったじゃない」「幹事に聞いたら、あんただけ免除されてるって……会費も払えないくらいお金に困ってる人は、優雅に同窓会を楽しむ権利なんてないのよ!」
それには理由があって、と説明しようとしたのですが、同級生は間髪入れずにまくしたててきました。
「もうビールで髪も服もベタベタでしょう~?w」
「同窓会の会費すら払えない貧乏人はさっさと帰りなw」
「あんたの旦那クビにするね」
「え?」
部下との約束を破る形になってしまいましたが、私は部下が同級生の夫であることを明かしました。
すると、「はああ!?あんたが私の夫の上司ですって!?」「じゃあ、うちの夫より給料が高いってこと!?」とかなり驚いている様子。
次いで、私は会費を支払わなかった理由も説明しました。この同窓会の会場は、うちの会社が所有しているもの。格安で貸し出したため、幹事がお礼に私の会費を免除してくれたのです。
「それじゃ、私は言われた通りに帰るね」「幹事には私から伝えておくから」と言って、私は電話を切りました。どちらにしろ、このビールまみれの状態では会場に戻れません。
会場の外まで同級生の騒ぐ声が響いていましたが、私は無視してタクシーに乗って帰宅しました。
同級生の末路
私が帰宅したのとほぼ同時に、部下から電話がかかってきました。「このたびは俺の妻が誠に申し訳ありませんでした!!」「ビールをかけて会場から締め出すなんて……ドレス代などはすべてこちらでクリーニング代を負担します、いやもうぜひいくらでも請求してください!」と謝り倒す彼。正直、あの同級生にこの部下はもったいないと思ってしまいました……。
「妻から聞きました……俺のこと、クビにするつもりだって……」と涙声になってしまった部下。あの時は売り言葉に買い言葉でついクビ宣言をしてしまったのです……。
「実はね、もともとあなたにはうちの会社を辞めてもらう予定だったの」「系列会社の課長の席が空いたから、そちらに移ってもらう形で……どうかな?」と言うと、「それはクビって言わないんですよ!!」「喜んでお引き受けさせていただきます!」と部下。
念のため、同級生には栄転の話を伝えないように釘を刺し、私は部下との電話を終えました。
その翌日――。
同級生から「本当に夫をクビにするなんて!」と怒りの連絡がありました。「あんたが同窓会から本当に帰ったせいでみんなからは怒られるし、夫はクビになるし、何もかも最悪なんだけど!」と怒りをあらわにしていました。
「あんたが部長だって聞いたわ!部長の職権乱用でうちの夫がクビにされたって、あんたのとこの社長にチクってやるんだから!」と息巻く彼女に、私は「どうぞご自由に」と答えました。
「でも、社長は私の夫だから、あまり非常識なことは言わないでね」「変な同級生がいるなんて思われたら恥ずかしいもの」
そう、私の夫は私と同級生の夫が働く会社の社長なのです。同級生は勝ち目がないとさとったのか、それから連絡してくることはありませんでした。
その後――。
無事に系列会社の課長に栄転が決まった部下は、同級生に離婚を切り出したそうです。同級生は慌てて友だちみんなに「夫をつなぎとめる方法を考えて!」と連絡したそうですが、「独身や共働きを馬鹿にしてる人のことなんてどうでもいい」と総スカンをくらっている模様。
元部下は離婚のおかげか心機一転したようで、さらにいい仕事をするようになりました。私も元部下に負けないよう、これからも仕事に励んでいくつもりです!