夫が他界
そうこうしているうちに義妹の結婚が決まり、家を出ていくことになりました。ぐうたらな義妹の婚約者は、きちょう面でしっかりとした男性。お互いを補い合えるような、良い相性のようです。
しかし、ようやく平和な日々を取り戻せるとホッとしていたのも束の間、夫が不慮の事故で他界……。あまりに急なことだったので、私は現実を受け入れられずにいました。涙が止まらず、頭は働かず、食べ物ものどを通りませんでした。
そんな状況でも義妹は相変わらず、私が赤の他人になったとバッサリ。夫の財産を置いて家から出ていけと、ののしってきたのです。
夫が遺したもの
一方、義母は私にやさしい言葉をかけてくれました。自分もつらいはずなのに……。
義母は、このままここで暮らすか、家を出て新たな人生を歩むか、私の意思を尊重してくれると言います。そしてこれだけは持っておいてほしいと、私に通帳を差し出しました。夫の荷物を整理していたら、偶然見つけたのだそうです。
それは夫が私との結婚10周年に向けてコツコツ貯めていた預金通帳でした。夫婦で海外旅行に行くお金だと義母に話していたそうです。
しかし、通帳はその話を聞きつけた義妹に奪い取られてしまいました。貯金額を確認して歓喜の声を上げた義妹。夫婦のための貯金だという証拠がないと言い張ります。
義母がどんなに法律の話をしても聞かず、血のつながった家族で遺産を分けるべきだと言う義妹。正直、夫を亡くしてすぐにそんな話はしたくありません。
横暴な義妹を制したのは
「全部置いて早く出ていけ」と私を詰める義妹。戦う気力もなく、もうそれでもいいかと思い始めていると、義母が立ち上がり、遺産をもらう権利があるのは妻であり、妹ではないとキッパリ言いました。これ以上言うなら家から出ていけと……。
いつも穏やかな義母が初めて見せた厳しい顔。それを見た義妹は、義母の本気を悟って黙ります。しかし、一度は黙ったものの「少しくらい分けてくれたっていい」とブツブツ言い続けていました。
そんなとき、トドメを刺したのは義妹の婚約者。「100年の恋も覚めた」という冷ややかな顔をした彼は、婚約破棄を申し出ました。
こんな義妹の本性を見たら、無理もありません。兄を偲ばず、義姉を労ることなくお金のことしか見えていなかったのだから……。
義妹のその後…
婚約は白紙に、義母からも家を追い出され、1人で生きていくことになった義妹。友人たちを頼ろうとしたけれど、夫の告別式に来てくれた友人が一部始終を見ていたようで、義妹の本性は友人たちにも広く知られることに……。
結果、誰1人助けてくれる人はいなかったようです。今はどこで何をしているのやら。ときどき家を訪ねてきますが、私も義母も相手にしません。
私は今も義母と一緒に楽しく暮らしています。息子を亡くしたあのとき、娘とも縁を切るという決断は、義母にとって大きな決断だったことでしょう。私に寄り添いやさしくしてくれた義母の面倒は、私が見ようと決めています。
揉めがちな嫁姑関係ですが、血縁を超えた絆が生まれることもあるのですね。誠意を持って接することの大切さを感じさせられました。