放っておいたわけじゃないと説明すると…
抱っこしようとしても、全力で嫌がって泣く娘。早く買い物を済ませて帰りたかった私はイライラ。大きな声を出してしまいそうでした。
女性の口調から、母親がそこにいるのになぜ放っておくんだ、という意図が感じられたため、責められるかもしれないと思った私は、「カートに乗るのも、抱っこも、歩くのも嫌みたいなんです」と状況を説明しました。
すると、その女性は「そうだったの」と言って、娘に向き直りました。
「お母さん、困ってるよ」「言うこと聞かないとだめよ」
その女性は声を荒げることもなく、やさしく娘を諭してくれたのです。
当時1歳4カ月の長女には、女性の言葉は理解しきれていなかったでしょう。しかし、ニュアンスは伝わったのか、そして気持ちが切り替わったのか、娘はゆっくりと私のもとへ歩いてきてくれました。もしもその女性が声をかけてくれなかったら、私はイライラしたまま、娘はご機嫌斜めのままだったでしょう。
泣いて騒いでいる娘に、何かを伝えるのは簡単ではありません。大きな声で言って聞かせるのではなく、しっかり子どもの目を見て、やさしく諭すという方法を教えてくれたあの女性には感謝してもしきれません。
イラスト/きりぷち
著者:佐藤朱莉
0歳の娘と2歳の息子を育てる専業主婦。双方の実家が遠方のため、しばらくは子育てに専念。