貧乏だといじめられて…
そんな私たち家族が暮らすのは、築70年になるだいぶ年季の入った家です。しかし、昔ながらの建築技法が使われていたり、立派な大黒柱が立っていたりと、とても頑丈な作りで気に入っています。
しかし、近ごろ娘は「ボロい家に住んでいる」とからかわれているよう。少し心配していました。
娘をからかっているのは同じクラスのミキコちゃんです、娘いわく、お父さんは地元で有名な企業に勤めているようで、セレブ自慢が絶えないのだそう。
娘が小さな消しゴムを使っていると「貧乏だから買ってもらえないんだ!」と笑われ、家のことも「あんなボロ家にしか住めないんだね」とバカにされていると聞いて、私もショックでした。
それでも私は「スルーしたらいい」とアドバイスをし、娘もそうしていたようですが、ある日事件が起きてしまったのです。
娘の体操着が捨てられた!
ことの発端は学校からの電話。娘が体操着をクラスメイトに捨てられ、喧嘩になったと言います。慌てて駆けつけると、そこにはミキコちゃん親子の姿がありました。
先生は、私に謝るようミキコちゃん親子に促しますが、ミキコちゃんのママは謝るどころか「うちの子、当たり前のことをしただけみたい」と言って笑いました。
私があっけに取られていると「おたくの娘さんの体操着が古すぎたせいで、ゴミと間違えたみたい。親切心で捨ててあげただけよ」と言うではありませんか。そして私を舐めるように見て「親子揃って貧乏くさいのねぇ」と失礼な発言を続けます。
それだけ言って、ミキコちゃん親子は帰っていきました。どうやら親子揃って相手にしないほうがよさそうです。
どうにか懲らしめたいけれど…
しかし、このままやられっぱなしでは私も納得ができません。新しいものや高級品がわるいと言いたいわけではなく、まだ使えるものを大切に使うことや、いろいろと比較しながらお得なものを買うことも大切だと子どもに教えるのも、親の大事な役目ではないでしょうか。
ただ、あのママには正攻法は通用しないでしょう。策を練っているとき、ちょうど娘の授業参観がありました。ミキコちゃんのママと顔を合わせると思うと気が重かったものの、私は仕事を調整して出席することにしました。娘が学校で過ごす姿を見たいと言うので、夫も一緒です。
そして迎えた授業参観日。結局、急ぎの仕事が入り、2人ともいつもの節約スタイルではなく、仕事用のスーツのまま学校に向かうことになりました。
私たちが教室に到着したのは、授業開始の5分前。仕事モードで到着した私たちの姿を見た数名のクラスメイトから「今来たの誰のパパとママ? かっこいい!」という声が聞こえてきて、少し恥ずかしくなりましたが、娘が誇らしそうに「私の!」と言う姿を見て、うれしくなりました。
思わぬところでギャフンと言わせた!
先に到着していたミキコちゃんのママは、私たちの姿を見て少し動揺しているように見えました。仕事モードの私たちは全身ハイブランドで固めていたので、無理もありません。
そこに、もうひとり誰かのパパが入ってきたかと思うと、私たちを見て「あ……! 社長、副社長! お疲れ様です!」と頭を下げました。顔を見れば、さっきまで一緒に仕事をしていたわが社の社員です。
質素な暮らしを好んでいるものの、私と夫は地元企業の社長と副社長。実は貧乏人だとバカにされる筋合いはないのです。
そのやりとりを見ていたミキコちゃんのママは「え、どういうこと……」とソワソワ。この社員、どうやらミキコちゃんのパパだったようです。
「どうかした?」と言うミキコちゃんのパパに向かって、私は先日の体操着事件とこれまでの失礼な発言を報告しました。パパはミキコちゃんのママと廊下に出て、すぐさま事実確認。授業参観の終わりには、平謝りをしながらダッシュで去ってしまいました。
その後、ミキコちゃんのパパからはあらためて謝罪をされ、離婚したと聞かされました。どうやら、今回の件とは別に、ミキコちゃんのママがブランド物の購入や外食で散財していて、借金まで作っていたことが発覚したそうで、ミキコちゃんの教育のためにも離れて生活したほうがいいと判断したようです。
その後、娘の貧乏いじりもなくなり、楽しい学校生活を過ごしています。身に着けているものや住んでいる家に関係なく、娘にはたくさんのお友だちを作ってほしいと思っています。
その人の価値は、住んでいる場所や持っているものだけでは決められません。偏った価値観で他人を見ないよう、そしてその価値観を押し付けないよう、気を付けたいですね。