「なんでこんなところにいるんだ?独身のくせに!」と相変わらずの調子で話しかけてきた元婚約者。
友だちの出産祝いを探しに来た、と正直に答えると、「惨めな独身のお前に構ってくれるなんて、物好きな人もいるんだな」と私の友だちのことまでおとしめてきました。
元夫とベビー用品売り場での再会
一方、元婚約者はおむつや育児用ミルクなど、さまざまなベビー用品をカートにてんこもりにしていました。どうやら、妹が出産間近な様子。産後に必要になるものをすべて一度に揃えてしまおうと、1人で買い物に来たと言うのです。
セルフレジで夫は会計中のようでしたが、会計金額が出ると「支払いはよろしくな!」と言ったのです。私は思わず「えっ!?」と大きな声を出してしまいました。どう考えても、レジに表示された金額は10万を超えていました。簡単に支払える金額ではありません。
「友だちに出産祝いを贈る余裕があるんだろう?だったら妹夫婦へ出産祝いを贈るのも当然だろう」「じゃ、よろしく」と言って、元婚約者はそのままカートを押して、店外へ。
残された私はしばらく呆然と立ち尽くしていました。
妹からの止まらない要求
1カ月後――。
妹から無事に出産を終えた、という連絡を受けた私。思うところはありますが、「おめでとう」と姪の誕生を祝いました。
しかし、妹は「出産祝い待ってるからね!」と言い出したのです。さらに妹は続けました。
「初めての出産をがんばった妹とかわいい姪っ子へのプレゼントは別でしょ?」「おむつやミルクって消耗品でなくなっちゃうし……」「今すぐ高級抱っこ紐とベビーカーを買ってきて!」と要求は止まりません。
「独身の惨めなお姉ちゃんに赤ちゃんを見せてあげる♡」
「あ、お祝いは絶対忘れずに持って来てよねw」
「いいよ、警官の夫と行くね!」
「え?」
ぽかんとした妹に、私は数カ月前に今の夫と結婚したことを伝えました。「せっかくだから夫と一緒に行くわ」「お祝いは持っていけないけど、うちの夫から大事な話があるから聞いてほしいのよね」と言うと、妹は「私、何も悪いことしてないわよ!」とわめき出しました。
「あなたじゃなくて、あなたの夫について、よ」「あなたの夫が犯した罪について、うちの夫から話があるからしっかり聞きなさい」
夫の罪
赤ちゃん用品店で元婚約者と出くわしたとき、元婚約者は会計をせずに商品を持って店外へ出て行きました。私は支払いはしていません。
「そ、そんな……お姉ちゃんが支払ってくれたんじゃないの……?」とおそるおそる聞いてきた妹に、私は「どうして浮気した元夫とその相手に私がお祝いを払うのよ?」と答えました。
夫が調べてくれたところによると、元婚約者はあの赤ちゃん用品店では要注意人物とされていたようです。何も下調べをせずに購入しては、無理やり返金・返品を繰り返していたそう。
店員さんに対しての暴言もひどかったらしく、土下座謝罪させたこともあるとか。なかには辞めてしまったスタッフさんもいたそうです。お店側もかなりの被害を受けていたようで、その後商品のお支払いはしたようですが、お店側はこれまでの件を本社に相談をしていると言っていました。
その後――。
元婚約者は、赤ちゃん用品店の本社から訴えられました。そちらはすぐに和解金を支払って解決に至ったようです。
しかし、元婚約者は会社から解雇されてしまいました。会社は今回の事態を重く見たようです。
元婚約者はプライドが高く、「俺に合う会社がない」と言って無職のまま。「助けてほしい」と妹から泣きつかれましたが、妹が私から元婚約者を奪わなければこんなことにはならなかったのです。助けてやる義理はありません。
今では元婚約者と結婚していなくてよかった、と心から思います。そして、誠実で曲がったことが大嫌いな今の夫と巡り合えたことに感謝しています。
【取材時期:2024年8月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。