交通事故で夫が突然逝去。悲しみに暮れる私に、義母は「お前と結婚しなければ、息子は幸せな人生を送れたはず」「お前のせいで息子の人生は台無しよ!」と心ない言葉をかけてきました。
さらに、亡くなった夫の元カノを名乗る女性から、「私のおなかには彼の子どもがいます」「だから彼の遺産をください」と連絡があったのです……。
「大事な話をしたくて連絡しました」
夫の葬儀を終えて、一息ついていた私のもとに見知らぬ番号から電話がかかってきました。出てみると、私とそう変わらないくらいの女性の声。
「このたびは……」とお悔やみの言葉を述べられたので、夫の知り合いかと思い、私は丁寧に返事をしました。その女性は続けて「実は私、彼の元カノで」「今回の訃報は彼のお母さまから聞いて……あなたに大事なことを話したくて連絡したの」と言ってきました。
「彼とお付き合いしてたから私も遺産をもらうわよ!」
「おなかには彼との子どもだっているんだから!」
「それは変ですね」
「え?」
夫は浮気をするような人じゃない、と思っていた私は最初の言葉にショックを受けました。しかし、元カノから発せられた「子ども」の言葉で我に返りました。
彼女が嘘をついていることがはっきりとわかったからです。
子どもは授かりものだから
私たち夫婦には子どもがいません。私も夫も子どもを望んでいたのですが、なかなか授からず……。早く孫を見たいと言ってくる義母のプレッシャーもあり、ついに不妊治療のための事前検査を受けることにしたのです。
そこで発覚したのは、夫原因の不妊でした。自然にできる可能性はほぼ0%とまで言われました。
夫が「母さんをがっかりさせたくない」「だから俺が子どもを欲しがらないことにして、検査結果は黙っていてくれ」と頼み込んできたので、私も夫の気持ちを尊重して隠してきたのです。
「本当に、あなたのおなかの子どもは夫の子どもなんですか?」「本当に夫とヨリを戻していて、夫の子どもを妊娠したんですか?」と質問すると、元カノは言葉を詰まらせました。
「生まれたら、親子関係を検査できる機関がないか探しておきますね」
「形見にと思って、夫の髪の毛をひと房切ってあるので鑑定してもらいましょう」
そう告げると、元カノは電話をガチャッと切ってしまいました。
義母と元カノの修羅場
その1時間後――。
次に電話をかけてきたのは、義母でした。どうやら夫の元カノから、夫が子どもができないからだだということを聞かされたそうです。
「まさか、うちの息子が……そんなわけないわよね?検査結果はあるの?」と聞いてきた義母に、「信じられないならお見せしますよ」と言うと、大きなため息。元カノは私が検査機関を見つける動きを止めたかったのか、義母に「奇跡的にできた子どもなんです!」と言ったそうです。ですが、さすがの義母も信じられなかったようです。
「息子の忘れ形見に会えると思ったのに……」「あなたよりあの子の方が息子にぴったりだったし、なんで別れたのか、今でも不思議なくらいだわ……」と義母。
そこで、私は生前の夫から聞いていた元カノと別れた理由を義母に伝えることにしました。
元カノは高級取りだった私の夫と早く結婚したかったそう。しかし、夫はかなりの慎重派。なかなかことが進まないことに苛立った元カノは、義母と仲良くすることで結婚を早めようとしたのです。
元カノの目論見通り、すぐに元カノに気を許した義母。すぐに家にも上がれる状況になり、元カノは義母のタンス貯金などに手をつけるように。それに気付いた夫は激怒して元カノと別れたそう。さらに、義母を悲しませないようにと、こっそり自分の貯金から義母のお金を補填していたのです。
「そ、そんな……あんないい子が私のことを裏切るはずないじゃない……」「おなかの子どもが息子の子どもだと思って、クレジットカード渡しちゃったし……」と義母。やや義母にも呆れながら、私は電話を切りました。
その後――。
案の定、義母のクレジットカードは元カノに使い込まれました。義母が元カノに激怒すると、元カノはあっさりとおなかの子どもの父親は別にいると、義母に吐き捨てたそうです。クレジットカードを使い込まれた義母は、警察に通報するとわめいていました。
誠実に生きていた夫の死後に、浮気や妊娠をでっちあげるなんてあんまりです……。私のことが気に入らなかったからという理由で、元カノを信じた義母も私からすると同罪です。元カノの本性がわかってからというもの、義母からは謝罪と同居要請が定期的に来るようになりましたが、そんな気持ちにはとうていなれません。
私は義母に別れを告げて別の地へ引っ越しました。夫が残してくれた遺産を大切にしながら、静かに暮らしていこうと思います。