海のはじまり
『海のはじまり』は目黒蓮さん演じる月岡夏が父親になるまでの葛藤を描くドラマ。2024年夏クールの月曜日21時から、フジテレビにて放送中です。
ことの発端は、夏のかつての恋人・水季(古川琴音)の訃報。葬儀場に駆けつけると、そこには中絶すると告げられていた、自分と水季の子ども・海(泉谷星奈)がいました。
さまざまな形の親と子のつながりを通して描く家族の物語。突然父になった夏がどんな家族の形に行き着くのか、注目を集めています。
学生の妊娠、望まぬ堕胎、妊娠における男女不平等、子宮頸がん予防、シングルマザーの大変さ、お手本のようなステップファミリー……たくさんの社会問題に切り込む『海のはじまり』を見ていると、考えさせられることばかりでした。
妊娠における男女不平等
「男の人は(妊娠や出産を)隠されたら、知りようがない。妊娠も出産もしないで、父親になれる」これは、水季の母親である朱音(大竹しのぶ)の悲痛なセリフ。SNSでも話題にあがり、心を乱された人が多くいたようです。
このセリフは、水季の葬儀で初めて海の存在を知った夏に向けてのひと言。7年間もの間、元恋人の出産や子育てを知らずに生きてきた、娘の元恋人に抱いていた気持ちが漏れてしまったのでしょう。シングルマザーだった娘の苦労を見てきた母親の気持ちがよくわかります。
しかし、夏にとっては水季の出産は想定外。
一度は中絶すると言い張る水季を止め、産むという選択肢はないのかと問うものの、水季は頑なに聞き入れませんでした。「男性はおろすことも産むこともできない」「私が決めたい」と強い意志を示され、中絶の同意書にサインをしたはず。
その上、突然別れを切り出されて連絡を断たれては、元恋人のその後について知る由もありません。
そんな夏に、実父が「(妊娠・出産を)隠されていたほうが被害者」と告げるシーンも。それもそのはず、視点を変えると、自身の同意なしに出産され、知らないところで子どもが育っていたとなると、責められる筋合いはないとも言えます。妊娠・出産できない側の性別ならではの気持ちをドラマの中で表現していました。
これが妊娠における男女の不平等。妊娠は1人ではできないものの、女性は1人で妊娠を続け、出産することができます。しかし、ときに中絶のつらさや子育ての苦労を1人で背負うことも少なくありません。
一方、男性は朱音のセリフにあるように、妊娠も出産の苦労なく父親になれます。しかし出産の最終的な決定権は持っていないのです。
この男女不平等は、男と女の体が違う以上、解消することはできません。また、誰しもが夏や水季の立場になりうるとことも、忘れてはなりません。
重要なのは、どちらが良い悪いと決めつけるのではなく、想定外の妊娠という問題に対して、男女がいかに理解を深め、共に考え、分かち合っていくか、という点です。夏や水季の視点を通して、私たち視聴者もまた、妊娠や出産の不平等さを改めて考える機会を得たのではないでしょうか。
人はいつどのように“父”になり、いつどのように“母”となるのか
『海のはじまり』の最終回は第12話になるそう。残すところあと2話となりました。
助産師・看護師としての経歴を持つ脚本家・生方美久さんが、本作品を通して伝える「妊娠」そして「出産」。『海のはじまり』の特設サイトには「人はいつどのように“父”になり、いつどのように“母”となるのか。“親子の愛”を通して描かれる“家族”の物語」と書かれています。
“妊娠も出産もしないで父親になれる”男性が、自身の選択を持って父になる姿……最終回まで目が離せませんね。
『海のはじまり』を見ていた人は+ボタンで教えてください。また、ドラマを通じて感じたことがあれば、コメント欄から教えてください!