弟の学費は私が稼ぐ!
弟にとっては私が親のようなもの。両親は弟の学費を払うつもりがないので、私が用意するしかありません。学生時代、私はアルバイトに明け暮れてお金を稼ぎ、弟のお世話をしていました。
今思い返しても必死で、誰よりも熱心なアルバイトだったと思います。
そんな私に後輩は「なぜそんなに一生懸命なのか?」と聞きます。社会勉強のために働いているという彼は、少しでも時給が上がるように必死な私が理解できないようでした。
わが家の事情を話すと「そんな人が世の中にいるのか」とショックを受けていました。私の話を聞いて、自分がとても恥ずかしくなったそう。それ以来、私が少しでもラクできるように、一緒のシフトに入っているときはたくさんサポートしてくれました。
そんな学生時代を経て、ついに私は社会人に。両親は相変わらず、自分たちだけ贅沢三昧です。縁を切りたいと思っていたものの、弟のことが心配で結局家を出ることはできませんでした。
弟の学費のために結婚
そんな両親にツケが回ってきたのは、そのすぐ後のこと。これまで会社を支えてくれた従業員に見放され、会社が立ち行かなくなってしまいました。遊ぶだけ遊んでいた両親は、経営のことはさっぱりわからなかったようです。
祖父が頑張って作り上げた会社は、たちまち倒産寸前になってしまいました。
そこで両親は、私に政略結婚の話を持ちかけます。相手は取引先の企業の社長。なぜか先方から打診があったそうで、嬉しそうにニヤニヤしていました。
一度は拒んだものの、私の稼ぎで弟の学費を払うことに限界がきているのは薄々感じています。この結婚を成功させれば弟の学費を払うという約束を両親に取り付け、お見合いを承諾することにしたのです。
嘘ばかりの両親
私のどこを気に入ってくれたのか、結婚の話はとんとん拍子に進みました。理想の結婚とはかけ離れていたものの、家族のためなら仕方がありません。それに、きっと彼にも何らかの事情があるのでしょう。「訳あり夫婦」上等だと、私は結婚生活をスタートさせました。
しかし、両親が弟の学費を払うことはありません。見かねた夫が学費を出してくれることになりました。すると、それを聞きつけた両親が夫にお金の無心をするようになってしまったのです。
猫なで声で「家族になったのだから……」 と甘える両親を見るとうんざりです。「家族だからといって無条件で助けてもらえると思ったら大間違いだ」と言われて育った私には、受け入れられません。
夫には、両親を助ける必要はないと伝えています。しかし連日家を訪ねて、しつこくお金を出せと言われる毎日はストレスでしょう。夫には申し訳ない気持ちでいっぱいです。
この結婚、不幸じゃないの?
しかし夫はなぜか毎日上機嫌でニコニコしています。乗り気ではない結婚をした挙句、妻の弟の学費まで出す羽目になり、さらには毎日義理の両親が訪ねてくる日々なのに、不思議です。
その理由がわかったのは、すぐ後のこと。なんと彼は、学生時代アルバイト先で一緒に仕事をしていた、あの後輩でした。
両親のせいでつらい思いをしながらも、笑顔で毎日一生懸命頑張っていたあのころの私。アルバイトを辞めた以来彼とは会っていなかったのですが、そんな私に密かに尊敬の気持ちを抱いていたそう。
いつか一人前になったら私に会おうと決めたと話してくれました。そして彼は、一念発起し起業。一代で立派な会社を築いたのです。
そもそも政略結婚だとは思っていないと言う夫。結婚を申し込んだ理由はただひとつ。私を救いたかった、と打ち明けたのでした。弟の学費も渋々出したつもりはなく、大人になるのを一緒に見届けたいと話してくれました。
真実を知り、「訳あり夫婦」だと割り切っていた私のストッパーが外れたよう。すぐに私は彼に惹かれ、大恋愛を経て結婚した夫婦に劣らない仲良し夫婦になりました。
弟の学費や生活の心配もなくなったので、ついに私は何年も望んでいた親との絶縁を果たしたのでした。
無責任な両親に振り回されながらも前を向いて頑張っていた姿が、思わぬ形で素敵な出会いにつながりました。困難な状況の中でも腐らず、努力を続けることの大切さを教わった気がしますね。
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。