免許の返納を条件に同居したはずなのに…
義母の荷物をわが家に運び込んでいると、なんと義母がボロボロの車に乗ってやってきました。ブレーキを踏むのがギリギリで、今にも事故を起こしそうです。同居の条件は免許返納だったはず……。一体どういうことでしょう。
義母は意気揚々と車から降り、買い物でもなんでも、この車で連れていってあげるからねと得意げ……。夫が返納するように言うと、自分の運転技術をバカにされたと思ったらしく、義母はひどく腹を立てていました。
なんとかハンドルを握らせないように説得しても、義母は聞く耳を持ちません。運転によほど自信があるようで、事故を起こすのは運転が下手なやつらだけだ、自分は絶対に起こさないと豪語していたのです。
なにがなんでも運転したい義母 VS 免許を返納させたい私たち
その日から、なんとか運転させまいとする私たちと、なにがなんでも運転をしたい義母との攻防が始まりました。
誰から見ても危険な運転をしていると思うのですが、義母に自覚症状はありません。傷だらけの車体も、知らない間にぶつけられたと他人のせいにしています。実際は、自分でこすったり、ぶつけたりしているはずです。
それなら強行突破しようと思い、夫が車の鍵を持って出勤するも、義母はいくつもスペアキーを持っていて、私たちの負け……。何度か鍵のありかがわからなくなり、そのたびに鍵を購入したのだと言います。
何度説得しても、そのたびに怒って自室へこもってしまう義母。私たちだってうるさく言いたいわけもなく、年寄り扱いなんてしたくもありません。でも、なにかあってからでは遅いのです。
それに、あんな運転を見せられては、義母だけで外出させるわけにはいきません。毎回出掛けようとする義母をなだめ、運転を代わる日々にも限界を迎えていました。
ついに警察のお世話に…
とうとう恐れていたことが起きてしまいました。警察から電話が来て、義母が事故を起こしたと言うのです。義母は私の目を盗み、自分の運転で外出したよう。私は慌てて現場に駆けつけました。
義母の車は大きくへこんで、路肩に停車していました。警官は車の中に向かって「落ち着いて出てきなさい!」 と叫んでいます。話を聞くと、事故を起こした義母が車から出てこないと言うのです。
急に飛び出してきた相手が悪い、自分は悪くない、私じゃないと、叫び続ける義母。警官も困り果てているところで、良いアイデアが浮かびました。
私はこっそり持っておいた車のスペアキーを取り出し、助手席を開けようとします。義母はとっさに助手席のドアを押さえようとしましたが、今のキーは本当に便利で、私がドアに手を触れただけでロックが解除。そのすきをついて、警官が義母を車から引きずり出しました。
警官に押さえ込まれながら、義母は興奮するように指さし「あいつが悪いのよ!」 と叫んでいます。指をさした方向を見ると、そこにはスーパーの特売の旗。義母は歩道に乗りあげ、その旗にぶつかったようです。
対人の事故でなかったのがせめてもの幸いと思い、ホッとしましたが、だからといってこれからも車に乗せていいわけがありません。
義母は有名人!?
それなのに義母は、旗くらいいいだろうと言い張り、事故を起こしたことを本気で反省している様子はありません。多くの野次馬が見守る中、警官に人を巻き込んでいたらどうするつもりだったのかととがめられても、そんなことは絶対にないと自信満々です。
そんなとき、野次馬の中のひとりが「あの車、この前ヤバい運転してたやつだ」と言って、警官にスマホを差し出しました。スマホに映し出されていたのは、危険運転をする1台の車。まぎれもなく義母のものでした。
この運転はまずいのではないかと思った人が、念のため動画に撮ったと言います。すると、集まった野次馬から次から次へと目撃情報が……。義母は私や夫の目を盗み、度々車に乗っていたよう。その運転はあまりに危険で、この辺りでは注目を集めていたのです。
免許を返納した義母のその後
その場の空気に耐え切れず、義母は免許の返納を宣言しました。気が変わられては困るので、事故の処理が終わってすぐに警察署に行き、義母の免許証の返納が完了しました。
免許や車を手放し、やっと毎日の平穏が訪れたことは言うまでもありません。
義母は時々「車があれば〜」と憎らしそうに私を見ますが、年寄り扱いされたくないと言うのが義母たっての希望。少しの距離なら歩くように言っています。
歩くようになったおかげで、毎日体調も良さそうです。安全も守られ、健康にもなる、まさに一石二鳥でした。
高齢者による自動車の運転は、家族にとって悩ましい問題です。本人の意思を尊重したいけれど、事故を起こすわけにはいきません。もし人を巻き込んでしまったらと思うと、ゾッとします。
高齢者向けの講習や、自動ブレーキや加速抑制装置がついた車の購入などの対策を講じたり、免許を返納したりと、家族で話し合い、安全を守るための決断をすることが必要ですね。
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。