婚約者の実家へ挨拶へ行く日の前日、婚約者から「大事な話がある」と言われた私。あらまった言い方に私も思わず姿勢を整えました。そして、婚約者が切り出した話は……?
婚約者の実家は大金持ち
「実は俺の家、プール付きの大豪邸なんだよね」「俺の実家は資産家で、両親はマンションを10棟も持ってるんだ」「今まで隠していてごめんね。でも実家の資産目的で近づいてくる人も多いからなるべく言わないようにしていたんだ」
なるほど、とうなずいた私。しかし、続く言葉に私は口をあんぐり開けることとなったのです。
「お前の実家なんかとは比べ物にならないだろうから、無駄にはしゃいだりとか貧乏人みたいな恥ずかしい真似はしないでね?」「あと、明日は俺の実家のレベルに合わせてそれなりの格好で来てもらわないと」「うちは代々続く地主で、オーラが普通の人とはかなり違うと思うけど、がんばって俺の家族になじむようにしてくれよ!」
私も、そして私の実家も馬鹿にされたのです。私が何も返せずにいると、婚約者は「やっぱり庶民には想像もつかないよなぁ」「簡単な話じゃないとは思うけど、お前は庶民のくせに顔だけはいい方だから俺のお眼鏡にかなったんだぜ?」とさらに続けてきました。
さっきから庶民、庶民って……!と言い返す言葉を探しているうちに、婚約者は
「それじゃ、明日はよろしくな!」と電話を切ってしまったのです。
待ち構えていたのは婚約者の妹
そして、翌日――。
婚約者の家の玄関に入ると、仁王立ちで一人の女性が待ち構えていました。
「ふーん、まぁなんとか合格ってところかしら」「お兄ちゃんとの結婚は認めてあげるわ」といきなりの上から目線。おそらく、婚約者の妹でしょう。
今後のためにも仲良くしておこうと思った私。挨拶をしようと口を開きかけた途端――。
「喜びなさい。私に仕える人間として認めてあげたんだから」
「え?」と私は思わず聞き返してしまいました。「仕えるってどういうこと……?」と聞くと、「そんなこともわからないの?私の世話をさせてあげるってことよ」「お兄ちゃんと結婚したら、すぐにうちで同居してもらうからね」「家族全員の世話をするのがあなたの役目なの!」と婚約者の妹。
婚約者からは、一度も同居の話を持ち出されたことはありませんでした。そもそも、私も結婚早々同居をしたいとは思えませんでした。
「そんな話、聞いてません」と言うと、「うちの家族の話し合いで決まってるから」「庶民に文句を言う権利なんてないのよ」と義妹。
玄関でのやり取りに気付いたのか、婚約者と婚約者の両親が義妹の後ろから顔を出しました。私は「この結婚、ちょっと考え直させてください」と言って、そのまま婚約者の家を出ました。
私が結婚を白紙にした理由
すると驚いた様子で連絡をしてきた婚約者。
「おい!挨拶もせずに帰ろうだなんてどういう了見だ!」と言う婚約者に、「一方的に同居を決められて、奴隷のように仕えろなんて言われたんだから仕方ないでしょ!」と言い返しました。
すると、婚約者は「不動産王の息子の俺と結婚できるんだぞ!?同居くらい安いもんだろ」と言ってきたのです。
実家がお金持ちなことを鼻にかけるのは構いませんが、それで見下される筋合いはありません。大事にしてくれないどころか、対等にすら扱ってくれない人と結婚するつもりもありませんでした。
「俺とお前が対等なわけないだろ!うちは資産家!お前は格下庶民!立場が違うんだよ!」「俺と結婚するチャンスを捨てたら、庶民のお前は一生後悔するぞ」と勝ち誇ったように言う婚約者。私の中で急速に愛情が冷めていく音がしました。
「後悔しないから大丈夫。結婚は白紙で」と言うと「えっ!?」と婚約者は目を剝きました。
「実は私もあなたに言ってないことがあったの」「うちの両親も不動産をいくつか持っているわ」「東京の一等地のマンション5棟にビル2棟、駐車場5箇所、そのほかにもさまざまな金融資産……」
私が実家のことを黙っていたのは婚約者と同じ理由でした。挨拶に来る前に、こっそり告げようと思っていたのです。
「だから私にとって、この結婚は玉の輿でもなんでもないの」「あなたたちの態度には納得できないし、結婚は白紙にさせてもらいます」
その後――。
婚約者は私の素性をすぐさま両親と妹に伝えたようで、「家族全員で反省したんだ」「同居もしなくていいから、俺と結婚しよう」と再度連絡をよこしてきました。でも、平気で人を見下すような婚約者とは結婚どころか、金輪際関わりたくありませんでした。
両親や友だちのサポートもあり、なんとか婚約破棄。しかし、婚約者は逆玉を諦められなかったようで、共通の友人に「どうにか仲を取り持ってくれ」「復縁できたら報酬をやる」なんてことを言っているそう。
いずれ受け継ぐことになるかもしれませんが、親の資産は私のものではありません。私自身は、今の稼ぎに合った、つまり身の丈に合った生活を続けて行こうと思っています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。