超ワガママなA男
売れっ子のA男は、ワガママっぷりを隠そうともせず、遅刻してきたかと思えば楽屋でスマホゲームをしながらごろ寝。バラエティ番組の収録前だったため、私はほかの共演者にあいさつしに行くよう促したのですが、「うるせぇな、指図するな!」と言い、スマホの画面から顔をあげようともしません。
私は、彼の横暴な態度に毎回うんざりしていました。「人気があるからこそ改心させないと……」と焦っていたものの、本人はまったく意に介していないよう。
「注目されている今だからこそ、きちんと時間を守り礼儀正しく周りへの感謝の気持ちを忘れずに……」
私が注意すると、A男は逆ギレ。
「お前、ただのマネージャーだろ? そんな態度なら仕事してやんねぇ。大手事務所から引き抜きの話もあるのに、ここにいてやってるんだ。俺の人気でお前は飯が食えているってこと、忘れんな!」
ドラマ撮影中にも問題行動!
そんなある日、傍若無人な振る舞いを続けるA男はとんでもないことをしでかしました。なんと彼は、ドラマの撮影期間中に突然髪を短くカット。現場で真っ青になっている監督にこんな発言をしたのです。
「実は、急に短髪にしてこいってマネージャーに言われて。びっくりしましたよー」
もちろん私は髪を切れなど言っておらず、完全なるA男の嫌がらせ。しかし、監督は私をにらみ「ちょっと来い!」とおかんむりです。
陰で笑いをこらえているA男を横目に、「ちょっと待って、何で私のせいになっているの?」と泣きそうになる私。それでも、ともかくこの場をとりなして撮影を進めることが最優先です。幸い、スタイリストさんが持っていたウィッグが使えたので、なんとか危機を乗り越えることができました。
好きで始めたマネージャーの仕事ですが、こんなヤツの担当ではどうしようもありません。私は「もう手に負えない。辞表、出しちゃおうかな……」と思い始めていました。
私は我慢の限界に…
それから数日後。相変わらず遅刻の常習犯で、スタッフや共演者への態度も改めないA男。事務所が禁止しているにもかかわらず、プライベートな飲み会の写真をSNSに投稿するなど、トラブルがいつ勃発してもおかしくない言動を続け、私は「あなたを守るためにルールを設定しているのに、指示に従えないんですか?」と叱りつけました。
するとA男は、「俺はここの稼ぎ頭。お前のせいで俺が移籍してもいいのか?」と脅してきたのです。これには私も我慢できず、退職覚悟で「移籍でも独立でもどうぞご勝手に!」と宣言。すると、騒ぎを聞きつけ、わが事務所の女社長が駆けつけてきました。
「何かあったのかしら?」
A男はすかさず社長に猫なで声で訴えます。
「こいつが、事務所の看板アイドルである俺にあれこれ指図してきて、挙句の果てに移籍しろって言うんだ。社長、こいつをクビにしてくれ! じゃなきゃ、俺は別の事務所に行くからな!」
社長「お好きになさい」
すると社長はニッコリ笑って答えました。
「はいどうぞ、お好きになさい。私は止めないから」
「はぁ? いいのかよ!? 一番の稼ぎ手がいなくなるんだぞ!」
予想外の返答にA男は焦っています。
「あなたの態度に問題があることは、よーく聞いています。そんなんじゃすぐに業界から干されるわ。見た目はいいかもしれないけれど、トーク力も歌唱力も演技力も中途半端。何より人間力とプロ意識がゼロ。そんなヤツ、芸能人としての寿命は短い。とっととやめちゃいなさい」
どうやら社長はA男の実態をしっかり把握していたよう。ちょうどそのとき、私の業務用スマホに電話がありました。
「お世話になっております。はい、彼は私の担当です。え、映画の主役? あの有名監督の作品で? はい、もちろん! よろしくお願いします」
これを聞いたA男はニヤリとして、「ほら見ろ。今度は映画の主役? 俺がやめたらこの事務所は潰れるよ!」と言い放ったのですが……。
きっぱり別れたA男とB男の明暗
私はA男をじっと見て言いました。
「今のは、B男さんへのオファーよ」
そう、それは私が担当しているもうひとりの俳優・B男へのオファーでした。これには社長も満足気。
「ようやく彼の魅了をわかってくれる監督が現れたわ。マネージャーの売り込みも功を奏したのね」
「彼は個性が強い演技派ですから、馬が合う監督を探すのに苦労しました。でも、これをきっかけにB男さんは注目され、もっともっと活躍するはずです!」
この出来事がきっかけで、A男は鼻息荒くウチをやめて大手事務所への移籍を試みたのですが、同時期に彼の裏の顔が週刊誌で暴露されてしまい……。イメージが地に落ちた問題児を受け入れてくれる事務所はどこにもないよう。
一方、映画の主役に抜擢されたB男は大注目され、海外からも絶賛の嵐。彼を慕ってわが事務所に移ってくる若手俳優たちも、実力たっぷりの人ばかりです。何より、周りに感謝の気持ちを持ち続け、役者としての志の高いB男が事務所の顔だと安心。私は「やっぱりマネージャーの仕事はやめられない!」と実感したのでした。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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