結婚当初から、義母からは嫁いびりをされ続けてきました。私が何か意見をすると「嫁のくせに生意気!」と言われ、常に義母の顔色を伺って生活する日々。夫に相談しても、夫の前ではいい義母なので「考えすぎだ」と、真剣に取り合ってもらえませんでした。そんなとき、いつも助けてくれたのが義父だったのです。
義母の機嫌を損ねないように私をかばってくる義父には、本当に感謝しています。そんな義父に、残された時間があまり長くないとわかったとき、私は最期まで誠心誠意お世話をすると決めたのですが……。
私は遺産目当てで介護している…?
義父は、一瞬でも目が離せない状態が続いているため、私は極力、外出しないようにしています。どうしても出かけなければならないときは、義母に義父の面倒をお願いするのですが、私が帰宅すると、義母はどこかへ遊びに出かけていて……。
さらに、私の留守中に義父にひどいことをしているのです。寒いと言っているのに部屋をキンキンに冷やしたり、とんでもない味の食事を出したりと、聞いていてつらくなるような報告を受けることも。さすがに黙っていられず、義母に意見しても「嫁が口ごたえするな!」「自宅療養になって、半年も生きているなんて長すぎる!」などと、とんでもないことを言う始末。そして義母は「さっさと独り身になって、恋愛したいのよ」と言います。
それどころか義母は、私が義父の介護をするのは『遺産目当て』だと決めつけて、遺産は全部自分のもの、嫁には一銭もやらないと毎日のように言ってきます。私は義父に良くしてもらったから介護をしているだけで、遺産を貰おうなんて思っていません。夫を経由して、義母にもそう伝えてもらっているはずなのですが……。
旅立った義父からの贈り物
それから1カ月後、とうとう義父は天国へと旅立ってしまいました。大きなプロジェクトのリーダーを任され、激務が続いていた夫からは「自分が介護すべきだったのに、丸投げにしてしまって申し訳なかった。本当にありがとう」と、ねぎらいの言葉を貰いましたが、義母からは当然何の言葉もありません。
そして、義父の初七日を終えると、義母から合コンで知り合った男性と海外旅行に行くと言われ、私も夫もさすがにビックリ。さらに驚くことに「私が旅行に行っている間に、家から出て行ってね、帰ったらその家は売るから!」と言うのです。夫が「母さんがこの家を売るの?」と聞くと……。
「遺産はすべて嫁に渡すって遺言書に書いてあったわよ」
「夫のお金を狙ってたんでしょ? 残念だったわね」
私は夫と顔を見合わせて、義母が勘違いをしていることを確信。楽しい旅行の前に悪いと思いながらも、真実を教えてることにしました。
「その『嫁』の嫁は私ですが」
確かに、義父の遺言書には「土地と家、預金はすべて『嫁』に託す」と書かれていました。わかりにくい表現ですが、この『嫁』は、義母ではなく私のこと。遺言書を最後まで読むと、『妻』には一銭も渡さないと書いてあるのですが、義母はそこまで読んでいなかったのです。
義父は、夫の了承も得て、家と土地の名義を私に変更してくれていました。そして私と夫は、義父の介護が終わったら海が見渡せる小さな家を買おうと話していて、タイミングよく物件も見つけたため、義父から譲り受けた義実家の売却手続きを進めるところでした。
つまり、出て行かないといけないのは義母のほう……。最後に謝罪や感謝の言葉でもあれば、老人ホームの費用はこちらで出そうと思っていたのですが、四十九日を待たずに恋愛を楽しむ義母に、その必要はなさそうです。
泣きながら助けを求める義母
1週間後。海外旅行から帰ってきた義母から鬼電。一緒にいた男性と、旅行中に大喧嘩をしたとかで、彼の家に住む予定が狂ってしまい、行くところがないと泣きついてきました。
さらに、遺産をあてにして相当な額の買い物をカードでしていた義母は、支払いができないから助けてほしいと言います。義父が亡くなって以降、連日たくさんの買い物袋を抱えて帰ってきていた義母。てっきり男性から貰ったものかと思っていましたが、そうではなく、すべて義母が男性に購入したものだったようです。
義父は生前「お義母さんがどんなに謝ってきても許すな」と、私に言っていました。そのため私は、何があっても助けられないと義母に伝え、電話を切りました。もちろん、引っ越し先も教えていません。私も夫も着信拒否にしたので、もう義母が私たちに連絡する手段はありません。
その後、どうやら義母は近所をまわって助けを求めたようですが、私たちが義父へのひどい仕打ちを話していたので、助ける人は誰一人いませんでした。今はどこにいるのかわかりませんが、今までの行ないがすべて返ってきたと反省していてくれていれば、天国の義父も浮かばれるのではないかと思います。
◇ ◇ ◇
見返りを求めず、介護をしてきたことが、義父にはしっかりと伝わっていたようですね。義母には、人の不幸の上に成り立つ幸せなどないということを、しっかりと自覚しながらこれまでの行ないを反省し、残りの人生を誠実に生きてもらいたいですね。
【取材時期:2024年11月】
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。