ある日私のもとに、結婚式の招待状が届きました。学生時代、私をいじめていた同級生からです。さらにその結婚相手というのが、私の元婚約者。数カ月のある日、偶然その同級生と再会したときに、婚約者の存在を知られ、私から彼を奪い、私を結婚式に招待してきたのです。困惑した私は、同じく招待状を受け取った親友たちに相談しました。
親身になって、今の今までずっと私の世話を焼いてくれる彼女たち。式に行くかどうか尋ねると、「行く!」と返事がきました。てっきり欠席すると思っていたのですが……。思わず理由を聞くと、親友の1人が答えました。「まだ反省していないから、お仕置きしなきゃ♪」と。そして、私にも式に出るようにアドバイスしてきたのです。正直迷いましたが、私も出席することにしました。
本当に変わった私
結婚式当日を迎えました。今日は、親友のお姉さんに身支度を手伝ってもらいます。プロのヘアメイクアーティストとして活躍するお姉さんは、さえなかった私に、結婚式までの約2カ月の間に、ボディメイクやファッション、ヘアメイクなど、ありとあらゆる指導を行なってくれました。
お姉さんに見送られて、自信を持って会場へ向かった私。会場に着くと、何だか視線を感じ不安になりましたが、親友たちは「そのままで大丈夫」と言って、笑顔を浮かべています。
いよいよ式が始まりました。入場時に、早速私を見つけた新婦。ものすごい顔でにらみつけられ、身がすくみました。披露宴が始まり、新郎が友人たちの席へあいさつに行ったタイミングで事件発生。なんと、1人になった新婦は顔を真っ赤にして、私のところへ怒鳴り込んできたのです。
すごい形相で、「これじゃ計画が台無しだ!」と文句を言ってきます。昔、私をいじめていたときのように、地味な私を引き立て役にするつもりだったようです。「あんなさえない地味子のブスだったくせにどうしちゃたのよ! 私よりスタイルが良いってどういうこと!? 調子に乗るんじゃないわよ」と言われ、私は苦笑いをするしかありませんでした。
いじめと略奪を乗り越え、お仕置き!
親友たちが考えたお仕置きとは、まさにこういうこと。私が幸せな顔をして式に出席することが1番のお仕置きになると考えたのです。実際、私は過去を乗り越えて、今は充実した毎日を送っています。
隣に座る親友たちは、口々に言いました。私はもともと美人で魅力的だけど、当時は自信のなさもあって目立たなかっただけと……。私のいいところは、見た目だけではないので、彼女は何1つ私に勝てないと勝ち誇ってくれました。それを聞いた新婦は、地団駄を踏んで悔しがり、ヒートアップして、周囲も気にせず、大騒ぎ。
私は、今も昔もずっとブスなのだと言います。財布を隠したときも、体操服を切り刻んだときも、弁当を捨てたときも、上履きに墨汁入れたときも、トイレに閉じ込めたときも……いつもブスだったと。そして、「あんたみたいな陰キャは一生私のおもちゃになってりゃいい」とまで言われました。
今日は私に大恥をかかせるために招待したそうで、あのころみたいに泣かしてやろうと思っていたと……。「あんたなんて、私にしいたげられていればいいのよ!」会場中にこだまする、私への悪口。会場はしんと静まり返りました。そして、怒りに震える新郎の姿が……。
「過去の私、ちゃんと見てる?」
ハッと我に返った彼女でしたが、ときすでに遅し。彼女の正体を知り、新郎だけでなく義理のご両親も怒りに震えています。彼女の両親は慌て謝罪。しかし、会場は修羅場と化し、式は中止となりました。
高校時代に持ち続けていた悔しい気持ちを、ようやく晴らした私。過去の私に、この状況を見せてあげたいです。私も親友たちも、清々しい気持ちで会場を後にしました。
後日、彼女の結婚が破談になったことを風の便りに聞きました。私は今日も、楽しく仕事に打ち込んでいます。あれからも、親友たちとは定期的に会って、おしゃべりや食事を楽しんでいます。これからも、彼女たちとの仲を大切にします。
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いじめを乗り越えて、ようやく縁が切れたと思っていたら、偶然の再会。さらには、婚約者を奪われてしまったとは、相当つらかったことでしょう。親友たち、親友のお姉さんがいてくれて本当に良かったです。いじめられていたつらい過去を完全に忘れることは難しいと思いますが、助けてくれるやさしい人たちを大切にして、幸せな人生を送ってほしいですね。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。