「あんたったらすごいじゃない!」「うらやましいわ~、こんな形で人生一発逆転ができるなんて!」と同級生。私は何のことやらさっぱりでした。
すると、同級生は「どうしてそんなに冷静でいられるの!?」「3億も遺産を相続したんでしょ!?」と言ってきたのです……!
義母の遺産の噂
「ちょ、ちょっと待って、その話はいったいどこから聞いたの!?」と焦った私に、同級生はフフッと笑いました。
「その反応……大金を相続したのは本当のようね」「実は私、あんたの旦那の母親がいた介護施設で働いてたの」「夜勤ばっかりだったから、昼間に面会に来ていたあんたは知らないだろうけど」
「やっぱり遺産は家を建て直したりするの?」「それとも会社辞めて豪華世界一周の旅?」と、同級生はあれこれ探りを入れてきますが、そもそも私と夫は遺産を相続していないのです。
しかし、いくらそのことを説明しても、同級生は聞く耳を持ってくれず……。ついには、「あんたの夫、狙っちゃおうかな~」と笑って言い出したのです。
義母に面会していた謎の男性
その後すぐ、私は義実家で葬儀の片づけをしている夫に連絡しました。夫は「どうりで……近所の人からヒソヒソされたわけだよ」「もしかしたら、母さんの遺産の話はかなり広まってるのかもな……」と夫。
しかし、遺産の話は私と夫しか知らないはず。介護施設でも一切口にしたことはありません。
それに、夫は仕事の都合で全国を飛び回っているため、施設で義母に面会したことはなかったのです。代わりに、ビデオ通話をしてもらっていましたが……。
「本当にそんな大金を相続してるなら、こんな田舎からすぐ引っ越してるっつーの」「この件についてはしばらく様子見しよう」という夫の提案に、不安を抱えながらも私はうなずきました。
それから1カ月後――。
「あんたの旦那、本当に奪っちゃった♡」と再び連絡してきた例の同級生。
「離婚させてごめんね~w」
「いま彼と婚姻届け出してきたの♡これで遺産を3億持つ旦那は私のものw」
「夫なら隣にいるけど?」
「え?」
義母のことが一段落したので、夫と2人で県外の温泉旅館に来ているのです。同級生が私の夫と婚姻届を出せるはずがありません。
「今写真送ったから見て!あんたの旦那でしょ!?」と言って、ツーショット写真を送ってきた同級生。そこに写っていたのは……夫の弟、つまり義弟でした。義弟は夫のふりをして、遺産相続の相談のために義母に面会しに来ていたのです。それも、私の来ていないときを見計らって……。
義弟は若いころからかなりヤンチャしていたそうで、義両親のお財布からお金を奪うのは日常茶飯事。私が嫁ぐ前に、堪忍袋の緒が切れた義両親によって絶縁されていたのです。
「で、でも、彼は遺産相続したって言ってるもん!」「現金で1億、そのほか不動産とかで2億!」と言う同級生。夫が相続放棄したので、権利が義弟に行ったのでしょう。
「こんな大金を捨てるってアホすぎない!?」「でも、これで私は大金持ち!ある意味、馬鹿な兄夫婦には感謝だわ!」と、すぐさま同級生はいつもの調子を取り戻して高笑いしていました。
相続の真相
1週間後――。
「ねぇ!あんたは全部知っていたの!?」「遺産に借金もあるって最初から知っていたの!?」とまたも例の同級生から連絡が来ました。私たちの予想よりもはるかに早く、彼女は今回の遺産相続の真相に気づいたようでした。
「借金だけ相続放棄したいんだけど!」「どうやったらできるの!?弁護士とかに頼めばいいの?それとも役所で手続きがいるの?」とトンチンカンなことを言ってくる同級生。借金だけを相続放棄なんて、そんな都合の良いことはできません。
義母の借金については、私たちも義母が亡くなってから知りました。義父の会社関係の借金に、知り合いに頼まれた連帯保証人……義父も義母もお人好しすぎるところがあったので、断り切れなかったのでしょう。そのせいで、借金は3億円以上に膨れ上がっていたのです。相続した3億円は、その借金の返済に充てるしかないでしょう。
「このままじゃ大金持ちどころか、一文無し……いや、借金持ちになっちゃうじゃない!」「もう遺産で豪遊しちゃったのよ!?この1週間でシャンパン開けたり、VIPルームに泊まったりしてたんだけど!」「今は義理の姉妹の関係じゃない!助けてよ!」と彼女。
そう言われても、相続を放棄した私たち夫婦には関係ありません。そもそも、義弟も義実家から絶縁されている身。助ける義理はないのです。
その後――。
義母の遺産の噂は広まり、遺産相続を放棄した私たちにまで名前も顔も知らない親戚を名乗る人々からお金の無心の連絡が来るように。事態を重く見た夫が会社に掛け合い、私たちは遠くの地に引っ越すことにしました。
引越しと同時に、私たち夫婦は義弟と例の同級生を含め、多くの人の連絡先をブロック。今は夫婦2人で平穏な日々を過ごしており、何事もない普通の毎日に感謝しています。
【取材時期:2024年11月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。