にぎやかになってうれしいと喜ぶ義母の姿を見た私たちは、新居での同居を提案。しかし、妙な嫁姑のいさかいが起こっても嫌だと言って、義母は遠慮してしまったのです。
それに、義父との楽しい思い出がいっぱいつまった大事な家だから、売ってはダメだと言われているのよ、と……。そこにやってきたのが、近所でひとり暮らしをしている独身の義姉でした。
乗っ取り疑惑!?
義姉は私たちをにらみつけながら、リフォームにかこつけて義実家を乗っ取るつもりなのではないかと疑いました。とんだ誤解です! 義実家を相続するのは自分だと言い張る義姉は、言いたいことだけ言って嵐のように去っていきました。
じつは義姉、義母を気にすることなく好き勝手に夜遊びがしたくて、実家を出たのです。義父が亡くなり、義母ひとりになった状況で出ていったので、夫は義姉をあまり良く思っていません。結婚当初は義姉が実家にいたので、私たちはマイホームを別に建て、暮らし始めました。結婚当初こんなことになるとわかっていたら、同居も考えたのですが……。
しかし、同居の話は先ほど義母に断られましたし、これ以上口出ししては義姉が激高しかねません。この件については、すこし様子を見ることにしました。
義母のことも心配ですが、今は自宅のリフォームも気になる私。今日も打ち合わせです。弟が建築士なので、今回は彼の会社にお願いしています。打ち合わせ早々、弟は私の顔を真剣な顔で見つめました。何か困っていることはないかと言うのです。弟がなぜそんなことを尋ねるのか、とても不思議でした。そこで理由を聞いたところ、私に関する悪いうわさがご近所に広がっていると言うのです。なんと私がとんでもない鬼嫁で、義母をこき使っていると……。
私は、ありえないうわさ話にものすごく腹が立ちました。私がしていると言われる悪行は、身に覚えのないものばかりなんですから。じつは弟、もう犯人を見つけ出していました。名前を聞いて、あ然としました。犯人は義姉でした。
私の手作りパンをゴミ箱げ捨てる義姉
弟はうわさの火消しを手伝うと言ってくれましたが、もうじき義実家を出ますし、私は気にしません。それより、弟には得意のリフォームで力を発揮してもらいたいです。このうわさの一件で、ちょっとしたアイディアがひらめいたので、弟にはそれを手伝ってもらうことにしました。
今日は、義実家でパンを焼いています。義母からのリクエストでした。慣れないオーブンに悪戦苦闘しましたが、何とかパンは焼けました。でも、見た目が……。義母はうまく焼けているとほめてくれましたが、私は納得できません。リフォームが終わったら、いつも使っているオーブンでとっておきのパンをごちそうすると約束した私。
そんなとき、義姉が現れ一緒にどうかと義姉にも勧めたところ、「失敗作を私たちに食べさせるのか」と突然激怒。挙げ句、素人の手で作ったパンなんて食べられないと、私が差し出したパンをゴミ箱へポン! 投げ捨てたのでした。
義母は義姉をしかりましたが、謝ることなくさっさと帰ってしまいました。自分のしつけが悪かったせいだと、今にも泣き出しそうな義母を、私はなぐさめました。これ以上の暴走を許すことはできないと思った私と義母は、ある行動に出ることにしました。
もう好き勝手させない!
ようやくリフォームが終了し、自宅へ戻る日がやってきました。私は用があり、すでに帰宅。夫は、まもなく義母と義姉を連れて帰宅します。義姉は用もないわが家に連れてこられて、不機嫌そうな様子。ブツブツ言いながら車を降りた義姉は、わが家を見てびっくり。目の前に表れた真新しいパン屋兼自宅は、店の中も外もお客さまであふれています。じつは私、パン職人なのです。今まではキッチンカーで販売していましたが、人気が高まったのでついに店舗を持つことにしました。
義母は盛況ぶりを見て、さすがだとほめてくれました。義姉が目を大きく見開きました。すっかり忘れていました、義母の同居話を義姉にするのを……。
義母は、義実家を売却できた暁には、そのお金を家賃と生活費に当ててほしいと言っています。じつは手作りパンを捨てられてから、私たちは同居について話を進めていたのです。弟には、急きょ義母の部屋も作ってもらいました。
義姉の様子から危機感をつのらせた義母は、家の売却を決めました。いくら思い出の家でも、残しておけばいずれ相続トラブルが起きる。そうなれば、亡き義父も悲しむだろうと思ったそうです。
これからは心を鬼にして義姉を突き放す、そう宣言した義母。義姉は今まで義母の年金をせびっていたらしく、それも今後は一切渡さないと言われて、がく然としていました。みんな彼女とは縁を切りますから、もう知ったことではありませんが。私たちは、仲良し家族として3人で楽しくやっていきます。
◇ ◇ ◇
すべきこともせずに自分の利益だけ追い求める姿勢は、ほめられたものではありません。それに対し、思いやりを持って互いを支え合う姿は、誉れが高いものです。果たして自分はどっちの人生を送りたいのか……。よく考えなければなりませんね。
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。