共働きだというのに、家事のほとんどを私に押し付けていた夫。かろうじてお風呂掃除だけは文句を言いながらやってくれていましたが……。
日を追うごとに夫の態度は大きくなり、「昨日の晩飯の残りを弁当に詰めるな!」「母さんなら鰻くらい入れてくれたぞ!」と、忙しい中作ったお弁当にさえ難癖をつけるように。お弁当を作り始めた理由だって、夫が「マイホームの頭金のために、毎月10万貯金したい」って言ったからなのに……。
金持ち自慢の夫と義母
たしかに、義実家はお金持ち。義父は年商10億円の会社を経営しているし、学生時代の夫のお弁当には老舗の鰻屋から取り寄せた一級品の鰻が入っていることもあったそうです。
しかし、そんな義実家と同じような暮らしを私に求められても困ります。夫も私も会社員で、稼ぎは平均的。義実家とは年収も資産も違うのだから、豪勢な暮らしはできません。
夫と口喧嘩した1時間後――。
「息子から聞いたけど、あなたったらひどいじゃない!」「息子を馬鹿にして、笑いものにしているようね!」と義母から連絡が。
私は義母に聞こえないようにため息をつきました。夫は私と喧嘩するたびに、義母に愚痴るのです。そして、それに怒った義母が私に電話をかけてきてお小言を言う……いつもの流れでした。
「どうせあなたはうちでの豪遊生活を期待して結婚したんでしょうけど!」「息子が平凡な会社員なのは、嫁であるあなたの責任なんだから!」と義母。
義母によると、義父も最初は夫と同じように会社員からスタートしたそう。しかし、義母の献身的なサポートのおかげで、義父は会社経営者になったと言うのです。
「本当はお父さんが息子を早く会社の後継者にすればいいんだけど……あの人ったら仕事に関してだけは厳しくて、『息子だからって特別扱いはしない』って言うのよ」「でも私たちの息子なら、平凡な会社員から這い上がれるはず!」「あの子が成功できるかどうかはあなたにかかってるんだからね!」と言われましたが、私にはピンときませんでした。
「そうね、まずは息子に家事をやらせるのをやめなさい」「家で明日への英気をしっかり養えば、おのずと会社で結果も出せるし、昇進して収入も上がる……社長就任だって夢じゃないわ!」「私はそうやって夫を支えたのよ。私みたいなセレブ妻になりたければ、私の言うとおりにしなさい!」
そもそも、私はセレブ妻になりたいわけではありません。自分の仕事にも誇りを持っています。ただ、これ以上義母との間に波風を立てたくなくて、その場は「はぁ……」と同意にも拒否にも取れない返事をしたのでした。
勝手に決められた義実家同居
3カ月後――。
「おい!今月から俺の実家で同居するからな」「引っ越し荷物をまとめておけ」と帰宅途中の夫からいきなり連絡がきて、私はびっくり。
「俺を成功者に導く嫁になるために、母さんからしっかり学ばせてもらえ!」「嫁扱いされたかったら、旦那様に何も逆らうな」と夫。
「母さんと話し合って、お前には嫁教育が必要だってわかったんだ」
「同居したら家政婦として母さんとコキ使ってやるから覚悟しておけw」
「ご依頼ありがとうございます」
「は?」
夫の話に、静かにブチギレていた私。「もう嫁扱いなんてしなくて結構!」「そもそも、もうあなたの嫁でいるつもりはありませんので、『家政婦』としてコキ使ってくださいな」「ただし今の会社の待遇維持は最低限の条件ですし、住み込みとなると……月給35万以上、ボーナスは4カ月分ってとこかしら」と淡々と告げました。
「なんで同居するだけで俺たちがそんなにお前に金を払うんだよ!?」と言う夫に、「職業『家政婦』になる覚悟で話してるんだけど」と冷たく返した私。
「お前の肩書きは俺の嫁だろうが!」「嫁として家族のため、そして夫のために身を粉にして働けって話だよ!」と言われたので、「だから、私はもうあなたの嫁でいるつもりはないの!」と私は言い返しました。
「離婚が成立したら、私たちはただの他人」「他人を住み込み家政婦として働かせたいなら、それ相応の報酬を払いなさい」
「ちょ、ちょっと待って、なんでいきなり離婚の話が出てくるんだよ……」とトーンダウンした夫。私に相談なく義母と勝手に同居を決めて、さらに家政婦扱い宣言までされたら、離婚を考えないほうがおかしいでしょう。
「今日中に私はこの家から出ていくから」「離婚については後日、弁護士を通じて連絡します」
傲慢な夫と義母の末路
弁護士を通じて連絡した後も、「俺の実家は会社を経営してるんだ、そんな金持ちの家の嫁の座を捨てていいのか?」「親父は今の俺の歳のころにはもう会社を経営していたから、焦っちゃったんだ」と、脅したり泣き落としに走ったりと忙しい夫。すでに愛情もなかったので、私はすべて聞き流していました。
私が思ったような反応を示さないことに業を煮やしたのでしょう、夫は義母にまたも相談したようです。今度は義母から電話がかかってきました。
「あんたみたいな女と結婚させたのが間違いだったわ!」「せっかくあなたのために、嫁教育してあげようと思ったのに!」「まさか離婚を選ぶなんてね!二度と我が家に近づくな!」
義母に言われなくても、義実家には近寄らないつもりです。私が黙っていると、「息子と離婚したら絶対に公開するんだから!」「私の特別嫁教育を受けなかったことも!セミナーを開いたら受講料100万はくだらないのに!」と義母はヒートアップ。
「まるで詐欺の情報商材だな」「毎日不平不満を漏らして、家を居心地の悪い場所にしていたというのに……そんな嘘八百の君の話、金出して聞く価値はあるのか?」
私に代わって義母に返事をしたのは義父。ちょうど、義母と夫のことを謝罪しに私のところへ来てくれていたのです。
「まさかお嫁さんの意見も聞かずに同居を進めていたなんてな」「しかも離れに部屋を用意して、家政婦扱いするつもりだったとか……いやぁ、寝耳に水で驚いたよ」と義父。
義母は「え、えっと、それはその、隠していたわけじゃなくて……ほら、お父さんは会社のことで毎日忙しいし、言うタイミングがなかったっていうか……」と大慌て。
ため息をつきつつ、「本当にお前は昔から口だけは達者だな」と義父。
「俺の成功をまるで自分のサポートによるものだと言い出したり、結婚した途端に勝手に会社を辞めて専業主婦になったり……お前の口癖は『早く稼いでもっと私を幸せにしなさいよ』だったよな」「そんなお前に文句を言われるのが嫌で必死に仕事に取り組んだら、運よく成功できたんだ」「俺の汗と涙の結晶を、よくも自分の手柄にできたもんだ」
「そんな言い方しなくても!」「私は家を守っていたし、息子を立派に育て上げたのよ!」と反論する義母。義父はやれやれと頭を振りました。
「たしかに子育てだけは立派にやってくれたと思っていたよ、だから離婚はしなかったんだ」「だが、そんな息子もこんな恥ずかしい醜態をさらしてお嫁さんに愛想を尽かされて離婚」「せっかくだから、私たちも離婚しようか」
その後――。
私と夫の離婚とほぼ時を同じくして、義父と義母も離婚。元義母は家を追い出されて、元夫が借りた安いアパートに転がり込んだそうです。
夫の分の家事がなくなり、のびのびと仕事に取り組めるようになった私。それでも、義父は「いつでも通いの家政婦として雇うからね」と言ってくれています。もしも転職を考える時期になったら、家事代行もひとつの選択肢として入れようと思っています。
【取材時期:2024年12月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。