「ちょっと!なんであんたが私の新郎と結婚式してるのよ!」
「幼なじみだと思ってたのに…まさかあんたに裏切られるなんて!」
「言ってること意味わかんないんだけど?」
「は?」
幼なじみは、私がSNSにアップした写真を見て連絡してきたそう。そこには、新郎新婦として、夫と私が写っていました。
「式当日になって彼が来なくて、不安になって電話しても全然連絡つかないし……」「そしたらなんであんたが彼と今日、結婚式を挙げてるのよ!?」「まさか幼なじみのあんたが浮気相手だったなんて……なのに、こんな裏切り方をされるなんて……」と幼なじみ。
しかし、私は昨日、3年間付き合った彼と入籍しているのです。だから、私からすると浮気相手は幼なじみのほうになるのですが……?
幼なじみと夫の話の食い違い
夫とは3年前、交流会で出会いました。そこからずっと結婚前提で付き合っていたのです。
「私たちは付き合って1年くらいだけど……でも、半年前、彼は私に『結婚しよう』って言ってくれたもん!」「だから私、式場も予約して、ドレスも決めて……今日をずっと楽しみにしてたのに……」と幼なじみ。
幼なじみはどちらかというと現実的な女性。思い込みが激しいタイプではありません。そんな彼女が勘違いして、結婚式まで用意するとは思えません。
「あなたのことも疑いたくないけど、夫が浮気するようには思えないの」「こうなったら一度、夫に直接確認してみるわ」と言って、幼なじみとのやり取りを終わらせました。
その後すぐ、控室にて――。
「どうした?なんかテンション低くない?」と私を気遣ってくれた夫。私は思い切って、「ねぇ、今日、本当は誰かほかの人と結婚式を挙げるはずだったの?」と言って、幼なじみの名前を挙げました。
「ち、違うんだよ!」と明らかに動揺した夫。「彼女のことは知ってるけど……あいつはただのストーカーなんだ!」「取引先との打ち上げで一緒になって、そこで一目惚れされたんだよ」「告白されたけど、ちゃんと断ったから!」と早口で言ってきました。
「実を言うと、最近飲み会が多かったし……浮気を疑ってたこともあるの」と言うと、「それはごめん、結婚前にさみしい思いをさせたよな……」と夫。
「俺さ、来年からお前の実家の会社で働くんだぞ?お前のお父さんの会社の継ぐ立場の俺が、そんな裏切りをするはずないだろ?」「彼女のことを黙ってたのはごめん。でも結婚前にお前を不安にさせたくなかったんだ」「急にストーカーから連絡があって怖かったよな……。でも、俺のことを信じてくれ!」
崩された夫のアリバイ
夫は先に二次会へ向かいました。私は一呼吸おいてから、再び幼なじみへ連絡をしました。
「あのね……やっぱり私、夫が嘘をついているようには思えないの」と言うと、「でも私が嘘をつく理由なんてないでしょ!?」と幼なじみ。
「で、でも夫は浮気してないって、俺を信じてくれって……」「それにその、あなたのことはストーカーだって……」と言うと、幼なじみは「はぁ!?」と若干キレていました。
「あいつ、私をストーカー呼ばわりしやがったのね……!」「あんたが絶対言いくるめられると思ったから、私が嘘をついてない証拠、かき集めておいたわよ!」
そう言って、幼なじみは1年分のデート写真、夫とのメッセージのやり取り、そしてのろ気三昧のSNSのアカウントまで送ってきました。
「本当だ……2人で楽しそうに飲んでるじゃない」「しかも、この投稿日、夫が『会社の飲み会』って言ってた日だ……!」と言った私に、「ね!?付き合ってたの!付き合ってるつもりだったの!」と幼なじみ。
「疑ってごめんね……」と謝ると、幼なじみは「ううん、私もあんたを責めちゃってごめん……。まさか、2人とも被害者だったなんて」と言ってくれました。
「私、体調不良ってことにして二次会は欠席するわ」「夫の浮気の証拠を徹底的に探すわよ!」と息巻く私に、幼なじみも「私ももちろん協力する!私たちを敵に回したこと、後悔させてやるんだから!」と同調してくれたのでした。
浮気男が失ったもの
1時間後――。
「まだ気分悪いのか?」「新婦がいないと盛り上がらないんだけど……」と、二次会にいる夫から連絡が。
「ごめんね、二次会には行けないわ」と言うと、夫は残念がっていました。しかし、「さっきはごめんね、浮気とか疑って」「でも、もう大丈夫だから!」と続けて言ったところ、「ようやく俺を信じてくれたのか!」「それにしてもストーカーにも困ったもんだよな、結婚式当日に新婦のお前に連絡してくるなんて!」「妄想で婚約者気取りとか、本当やめてほしいよ」と夫。
「そんな言い方しないであげてよ、彼女なりに本気であなたを愛してたんだと思うよ?」とたしなめても、夫の暴言は止まりません。
「俺は全然愛してないけどな!」「なのに勘違いの妄想で俺たちを振り回しやがって……俺はこんなに一途にお前を想ってるのに浮気を疑われて……」「このまま離婚とか言い出されたらどうしようかと不安だったよ!」
「そうだよね」と私も夫に同意しました。「本当にごめんね、疑っちゃって!」「疑ってる時間がもったいないから、とっとと離婚届たたきつければよかったわ!」と言うと、「え……?」と夫。
「会社の飲み会って嘘をついて、浮気相手と会ってるなんてねぇ」「しかも、場所は会社の飲み会でよく使う居酒屋!私が疑わないように、いろいろ考えてたのね?」「そんなことまでして浮気するような人はもう信じられないし、夫婦なんて無理!だから離婚しよ!」
翌日――。
私は昨日のうちに実家に帰りました。そして、事の次第をすべて両親に話し、夫が後継者となる話も白紙に。父のつてで弁護士を紹介してもらい、離婚届と慰謝料の請求についてまとめたものを夫に送ることになりました。そのことを幼なじみに伝えたところ、幼なじみは「私は結婚詐欺で訴えられないか弁護士さんに相談中!」と返してきました。
一方の夫は諦めが悪く、「お願いだ!俺を捨てないでくれ!」と連絡をしてきました。
「俺、友だちに『いずれ俺は社長だ!逆玉だ!』ってさんざん自慢しちゃったし……」「マンションのローンも組んだし、外車も予約しちゃったし……」と夫。自慢話はさておき、マンションや外車の話は初耳でした。
「だって、社長になれるのは確実だと思ってたから……別にこれくらい先走っても問題ないと思って!」と言われて、私は呆れ果てました。父は堅実で、派手な買い物などはしない人。夫も同じようなタイプだと思っていたのですが、実際は正反対だったのです。
「浮気のことだってこんなに何度も謝ってるのに……許してくれたっていいだろ!」「もういい、どうせお前のことなんか最初から好きじゃなかったし!ただの実家の会社と財産目当てだよ!」「こうなったら浮気相手と結婚する!あいつのほうがかわいいし、性格も良かったしな!」と夫。
「本当最低ね……でも、浮気相手の子も、あなたと結婚するつもりはないみたいよ?」「なんだったら、『結婚詐欺で訴える』って言ってるくらいだし」
「え……?なんで?お前が浮気相手のことを知ってるんだ?」「まさか、知り合いなのか!?」と驚く夫。
「知り合いどころか、小さいころからの幼なじみですけど?なんなら家族ぐるみの付き合いよ」
その後――。
私は夫と離婚し、慰謝料をしっかりもらいました。幼なじみは慰謝料と結婚式の費用を元夫に請求したようです。
さんざん「俺はこんなところやめて、社長になるからさ」と会社内で言っていたらしい元夫ですが、慰謝料の支払いのため、退職届を取り下げることになったそう。会社ではさぞかし肩身の狭い思いをしていることでしょう。
幼なじみとは「まさか同じ男に騙されるとは思わなかったね」と苦笑いしながら話しています。今では月に数回、ランチや飲みに行くようになりました。私たちの間に亀裂を入れた元夫のことは一生許せそうにありませんが、幼なじみとの友情を確かめ合えたことだけはよかったと思っています。
【取材時期:2024年7月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。