昇格決定、かーらーの?
来年度に昇格が決定した私。苦節十何年、ようやく努力が報われるのです。帰宅してすぐ妻にも報告したところ、開口一番「やったじゃない! なら年収も上がるんでしょ!」と満面の笑み。
「まあね、年収は2000万くらいになるよ」。すぐにお金の話というのも何だかな、と思いつつも、妻も有頂天になっているので水を差さないでおきました。
それから数日後。なんと、青天のへきれきとも言うべき出来事が起き、私はガックリと肩を落として妻に伝えました。
「今日さ、病院で検査してきた。前に健康診断で引っかかったから。そうしたら俺、難病にかかっているんだって……。治療に専念しても寝たきりになるかもしれない。もちろん昇格の話は白紙だよ……」
妻は真っ青。しかしそれは私の心配ではありませんでした。
「ひどいわ、期待させておいてやっぱりナシ? しかも寝たきりになったら私が働いて介護しなきゃいけないわけ? そんなの絶対にイヤ。先が短い病人の世話なんて生産性ゼロよ……。貯金があるうちに離婚して財産を分与して! 介護要員にされないように、娘も連れていく」と、絶縁宣言をしてきたのです。
娘の思いは?
そうして妻は荷物をまとめて、嫌がる娘を無理やり連れて家を飛び出しました。中学生の娘は昔からパパっ子で、私の体調や仕事の様子をいつも気にかけてくれていたのです。
「本当はやさしいパパといたい……。でも私がいたらパパは治療に専念できないって、ママが言うの」というメッセージが届いたので、私は娘を安心させるためすぐに返信しました。
「治療を頑張るからな」
「ママに付いていくことになっちゃって」
「ごめんね…」
「パパのことは心配するな」
すると娘は私に謝罪までしてくれたのです。私は電話を掛けて、「すぐに完治して、また家族3人で暮らせるようになるさ」と伝えました。すると娘は、「3人で? ママは、ずっと家族のために頑張ってきたパパを見捨てたんだよ? もう新しい結婚相手を探している……。ひどすぎるよ」と涙。
「そうか、そうだな……。パパはママを幸せにできなかったから仕方がない。でも、この家はこれからもお前の家なんだから、何かあったらいつでも戻っておいで。パパは絶対治ってお前を迎えるから」
わずか数週間後に
ところがわずか数週間後。娘がひとり、本当に泣きながらこの家に戻って来たのです。聞けば、母親が生活費をホストクラブで使い果たし、膨大な額の借金を背負ったのだとか。さらには娘に受験と高校進学を諦めさせ、働きに出ろと強制しようとしたというのです。
これにはぼうぜん。私は正式に彼女と離婚し、娘を引き取ることを宣言しました。
「でもあんた、老い先短い病人なんでしょ? だから娘を引き取って、あちこちでバイトをさせる予定なのに」という元妻。是が非でも娘を働かせて借金返済に充てようという魂胆のようです。私はこれで最後と冷たく伝えました。
「ああ、それな。実はその後の詳しい検査でわかったことがあって。病気だけどまだ初期段階で、投薬で治療可能。仕事にも支障は出ない。会社に事情を話したら理解を示してくれて、昇格も予定通りだよ」
真実を知った妻はわめいていましたが、後の祭りです。復縁する気などこちらには皆無。これからは父娘で力を合わせて、仕事も闘病も受験も日々の生活も、一歩一歩実直に歩んでいこうと思います。
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年収アップの話で浮かれた挙句、病気とわかった夫への思いやりも愛情もない妻の言動には、深く傷ついたのではないでしょうか。これからは娘と二人三脚で幸せになってほしいですね。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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