「噂じゃあのオープン記念パーティーには有名人がいっぱい呼ばれたって……会社経営者とか!」「そんなパーティーに呼ばれるなんて、あんたの彼氏っていったい何者なのよ!?」「やっぱり、社長とかなの!?」と親友。
しかし、私の彼氏はごく普通の会社員。レストランのオーナーとは小学校のときの同級生だっただけです。そう伝えても、親友は「なんで私に彼氏の正体を隠すのよ~!」「成功者の友だちは成功者に決まってるのよ!」と聞いてくれません。
そして、「あんたがそんな勝ち組彼氏を手に入れていたとはね……」「うらやましくて仕方がないわ、奪っちゃいそう!」と言ってきたのです。すぐさま彼女は「なーんてね、冗談よ!」と言いましたが、私は不安で仕方ありませんでした。
そしてその1カ月後、私は彼氏から突然別れを切り出されて……?
彼氏と親友の浮気
「今すぐ俺と別れてくれ!俺は彼女と結婚する!」といきなり言い出した彼氏。「あなたの彼女は私だよね?」と返すと、「お前なんてもう俺の彼女じゃない!俺はもうお前には興味なんてないんだよ」と言われました。
そして、「俺が一番愛しているのは、彼女だけ!」と言って、スマホで私に2ショット写真を見せてきたのです。そこには満面の笑みの彼氏と……同じく、満面の笑みの親友が写っていました。
「実は1カ月くらい前から俺たちは付き合っていてさ」「それでその……俺、彼女のことを本気で好きになったんだ!結婚するならお前なんかよりも彼女がいい!」
「彼女といるとすごく居心地がいいんだよ……とにかくやさしく甘やかしてくれて、仕事の愚痴だって聞いてくれるんだ」「同じ会社で働いているのに、俺とお前の差は開くばかり……。俺よりも出世していて給料も高いお前は、俺のことを内心馬鹿にしていたんだろ?」「俺よりも稼ぐ女はムカつくし、大嫌いなんだ!」と今までの鬱憤を晴らすかのように言ってきた彼氏。
私にとって仕事での彼と、プライベートでの彼はまったくの別物。ただただ、純粋に彼氏のことが好きだっただけなのに……。
開き直った親友
その後すぐ――。
「どうして私から彼氏を奪ったの!?」「私に隠れて2人が付き合っていたなんて……親友の彼氏と浮気なんてひどすぎる!」と、親友に電話をかけた私。
しかし、親友は「どうして奪ったのかって言われてもねぇ……うらやましかったから、ただそれだけよ」と平然と返してきました。「私、最近彼氏に振られたばっかりだし、仕事もクビになって大変なのに……。あんただけ勝ち組になろうとするのが許せなかったの」と親友。
「そんなのただの八つ当たりじゃない!」「どんな事情でも親友の彼氏を奪っていい理由にはならないわ」「それに、なによりも私たちの友情はこれで終わってしまうのよ?それでもいいの?」
親友はつまらなそうに、「別にいいわよ」と返してきました。続けて、「ただの親友と彼氏だったら、彼氏のほうが大切に決まってるんだから」「あんたはもう私に必要ないし、略奪が許せないなら許さないままで結構」と言ってきました。
「それに、彼も今すぐ私と結婚したいみたいよ?」「今度の週末は早速2人で結婚式場の下見に行くの」「男って本気で好きな子ができると行動早いよねぇ?あんたたちは5年も付き合っていて、結婚の話も出なかったのに」
たしかに、彼氏は私が結婚の話を出すと、すぐにつぶしにかかってきました。でも、親友とは付き合って1カ月で結婚の話まで出ているなんて……。
私がショックを受けていると、「早く結婚して、社長夫人になりたいわ~」「毎日エステに通って、買い物もし放題!有名人のパーティーにもお呼ばれするの」「彼に高級タワマンも買ってもらって、毎日2人で夜景を楽しみながらワインでも開けたいわ」と親友。
親友が思い描いている結婚生活に驚いた私は、「ちょっと待って、そんな贅沢三昧の日々を彼と過ごせると本気で思ってるの?」と尋ねました。しかし、「なによ、その質問は?彼は会社経営者だから超お金持ちなのよ?」「彼に買ってもらうタワマンだってもう目星をつけてあるんだから!1部屋で1億もするけど、彼ならきっと余裕よね!」と取り合ってくれません。
「彼を奪った私が許せないなら許せないで結構よw」
「社長夫人になったら彼とタワマンに住んで毎日贅沢三昧するの♡」
「手取り14万なのに?」
「え?」
親友と私の彼氏が結婚したところで、待ち受けているのは節約三昧の毎日でしょう。親友は仕事をクビになったばかりだし、彼の手取りは毎月14万円。そこから家賃や光熱費、スマホ代を払ったら……食費も相当切り詰めないといけません。
「ちょ、ちょっと!!!いきなりなにを言い出すのよ!?」「彼の収入がたった14万なわけないじゃない!?」と親友。
「私は何度も彼は社長じゃない、ただのサラリーマンだって言ったはずよ」「私たち、同じ職場で働いていてね……はっきり言って、私のほうが彼より出世してるし、年収も高いんだから」「それどころか彼は最近仕事でミスしまくっていて、ついに減給処分まで出て、手取り14万になってしまったの」
だから、私はここ最近のデート代はすべて支払っていました。「生活が苦しい」という彼氏の家賃まで立て替えてあげていたくらいです。それが彼のプライドを傷つけていたようでしたが……。
「い、いやいや、そんなの嘘よ!私に略奪されたのが悔しいからって、テキトーなことを言わないで!」「あの高級レストランのオーナーと知り合いなんでしょ!?あの日、めちゃくちゃ高そうなスーツも着ていたじゃない!」と、まだ認めてくれない親友。
「あのスーツはただのレンタル品よ」「私は普段のスーツで十分だって言ったんだけど、友だちの前で見栄を張りたいのか、わざわざレンタルしてきたの」「高級スーツだからレンタルで数万円もしたのよ?ただでさえ収入が下がって、節約しなきゃいけないっていうのに……」
私はため息をひとつつき、「でも、私は彼とあなたが幸せに暮らしてくれることを願ってるよ」と心からお祝いを述べました。すると、親友は「い、いやいやいや!社長じゃないなら無理だから!私、彼と別れてくる!!」と言い出したのです。
能天気男と略奪女の末路
翌日――。
「マジで最悪なんだけど!」「まさかもう婚姻届を出してるなんて……!」と、再び親友から連絡が来ました。
親友は彼氏に毎日のように「結婚したい」と言って、記入済みの婚姻届を渡していたのです。昨日のうちに記入を終えた彼氏は、そのまま役所に提出。晴れて2人は夫婦となったのでした。
「内助の功って言葉もあるし、あなたががんばって彼を応援してあげたらいいのよ」「彼、意外と単純なところあるし、仕事だってがんばるようになるはずよ」とアドバイスをすると、「そんなの無理に決まってるでしょ!」と逆ギレしてきた親友。
「彼、勝手に婚姻届を出しただけじゃなく、相談なしに仕事まで辞めてきたのよ!」「『結婚を機に転職しよう』と思ったって言って……でも、転職先のあても何もないままに退職したのよ!?」「これから探すなんてのんきなこと言ってたけど、無収入な男と新婚生活なんて無理無理無理!!」
彼の行動に内心引きつつも、「とりあえず、バイトでもしながら仕事を探したらいいんだよ」「なんだったら、あのレストランオーナーのお店でちょっとだけ雇ってもらうとか!」と提案してみました。
「そんなのとっくに断られたわよ!」「私が『すぐに仕事かバイトを探せ』って言ったら、彼、そのオーナーに連絡したらしいんだけど……」「『友だちとしては好きだけど、お前は従業員にはできねぇわ』『いつも遅刻魔だし金にもだらしない……友だちとして悪いところも全部知ってるから、うちの店では雇えないよ』ってはっきり言われたんですって!」
「これから私たちどうしたらいいのよ!?」「2人そろって無収入だよ!?明日からどうやって生きていけばいいの!?」と嘆く同級生。私は彼女を鼓舞するように、「そこは2人で相談してがんばらなきゃ!だってあなたたちはもう夫婦なんだから」「健やかなるときも病めるときも、お金がないときも無職なときも、夫婦2人だけで乗り越えてね!」と言って、電話を切りました。
その後――。
共通の友人から聞いた話ですが、親友とその夫は派遣に登録したけれど仕事は見つからず、家賃の安いぼろぼろのアパートへ引っ越し。親友は「社長と結婚する」と周りに自慢していたらしく、SNSだけはキラキラな投稿を続けているようです。まぁ、周りは「見栄っ張りもここまでくると大変ね……」と呆れているようですが……。
私は同じ会社で今も勤め続けており、今は管理職を目指しています。管理職になれたら、自分へのお祝いとしてまたあのレストランへ行きたいな、と思っています。
【取材時期:2024年12月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。