「ママから聞いたよ~!高給取りと結婚するんだって?」と言ってきた妹。やはり、母親経由で情報が漏れているようでした。
「私、あなたと絶縁するって言ったわよね?結婚式に呼ぶつもりもないわよ」とはっきり言うと、「結婚式なんか呼ばなくてもいいわよ!」「そんなのなくなるんだから!」と妹は言ってきて……?
姉の婚約者を略奪したい妹と援護する母
「私が彼と結婚するから、お姉ちゃんは結婚も結婚式もできないよ~!」
そう言われて、怒りが込み上げてきた私。「あなた、高校時代に私になにをしたか忘れたの!?」と言うと、「あぁ、あの略奪のこと?高校時代とか何年前の話よ……器が小さいんじゃない?」と煽ってきた妹。
「ママから両家顔合わせの写真も見せてもらったけど、良い料亭っぽいじゃん?」「私も行けばよかったなぁ~、なんせ私が嫁になるんだから!」と妹。
これだから、妹贔屓の母を両家顔合わせに呼ぶのは最後まで迷ったのです。なにかするんじゃないかと不安でしたが、まさかここまで妹に筒抜けだったとは……。
「こっちにはママっていう最強の味方がいるのよ?」「お姉ちゃんは今回もおとなしく私に彼をくれればいいのよ!」「……じゃなきゃ、前みたいにちょっと強引なやり方で奪っちゃうかもよ?」と妹。
私は「お断りします!」と言って、電話を一方的に切りました。
10分後――。
私は妹に情報を漏らした母に電話をかけ、「なんで妹に全部話したの!?」と詰め寄りました。
「なんでって……実の妹なんだから知らされて当然でしょう」「高校時代のことを今でも根に持っているなんて心が狭いわよ」「姉妹が仲良くないなんて、お母さん、悲しいわ」と母。
そして、「だいたいね、私は思うのよ……あんたより妹のほうが彼の嫁にふさわしいってね」「だってあの子はかわいいでしょう?私も早くかわいいかわいい孫を見たいし……お姉ちゃんなんだから、婚約者をかわいい妹にあげるのはどうかしら?」ととんでもないことを言い出したのです。
「私たちがいなくなってからあの子が困ったら誰が助けるの?あんたは妹が嫌いみたいだから、絶対助けてくれないでしょう?」「そう考えたらあの子を支えるパートナーが必要じゃない」「あんたの婚約者なら勤め先もしっかりしてるし、給料だって良いし、顔だって悪くはないし……あの子の旦那にするには申し分ないと思うの」
どこまでも妹贔屓な母。私も妹と同じく娘なのですが、私の幸せを踏みにじることにはためらいがないようでした。
「信じられない……」「お母さんが妹のためになにかするのは勝手だけど、私や彼を巻き込まないで!」「たとえ母親だとしても許さないから!」と言って、私はいつもより乱暴に電話を切りました。
妹から聞かされた2つのおめでたい報告
5カ月後――。
「お姉ちゃん、2つのおめでたい報告がありまーす!」と連絡をしてきた妹。それと同時に、海の写真が送られてきました。
「1つ目!私妊娠したの!」「2つ目!おなかが大きくなる前に新婚旅行に行っておこうと思って、今、海の見える高級ホテルに来てまーす!」
私が混乱していると、「あ、情報量多くてパニック?ちゃんと説明するねー」「ママ経由でお姉ちゃんの婚約者奪ったの!」と妹。
「お姉ちゃんの婚約者奪ったら、とんとん拍子で妊娠までしちゃったってわけ!ごめんねw」
「今ベイビーとお姉ちゃんの婚約者と新婚旅行中♡」
「夫なら私の隣にいるけど?」
「え?」
「だから、夫は私の隣に今いるけど?」と再び言うと、「ちょっと待って、夫って何よ?婚約者でしょ?」「結婚式の予定は来月だってママが言ってたわよ!」と妹。結婚式より先に入籍するカップルなんてたくさんいるはずなのに……。
「っていうか、私は今、お姉ちゃんの婚約者と一緒にホテルに来てるのよ!?」「ショックでおかしくなったんじゃない?」と私を煽りつつ、妹は男性との2ショット写真を送ってきたのです。
「ほら!ママに見せてもらった両家顔合わせの写真で、お姉ちゃんの隣にいた人!」「楽しそうにしゃべってるみたいだったし、この人がお姉ちゃんの婚約者でしょ!?」
「あ、これ、お義兄さんだ」と言うと「お、お義兄さん!?」と驚く妹。両家顔合わせの際、私は夫とお義兄さんの間に座っていたのです。
「で、あなたのおなかの子どもの父親ってお義兄さんなの?」「彼、妻子持ちよ?しかも、義兄の奥さんは2人目を妊娠中で、私たちの結婚式の翌月が予定日なの」「あなた、奥さんとお子さんがいる相手と何してるの……?一番やっちゃいけないことやってるわよ!」
「だって、私、そんなの知らなかったもん……」「ママが渡してくれた連絡先に連絡しただけだもん!」「既婚者で子どももいるなんて、どうしてこんなことになっちゃったのよ!」と悲鳴じみた声を上げた妹。
「私はなにもしないし、助けないからね!」ときっぱり言って、私はやり取りを終えました。
略奪を繰り返す妹とその肩を持ち続けた母の末路
1カ月後――。
「妹を助けてあげてちょうだい!お姉ちゃんでしょう!」と母親から連絡が来ました。義兄の奥さんから慰謝料を請求されているのだそう。既婚の事実を知らなかった妹は慰謝料の支払いは免れると思いますが、いずれにしても出産や子育てにかかる費用にも困っているのでしょう。しかし、もともと私の婚約者を奪うつもりだった人たちを助けるつもりはありません。
「どうしてこんなことに……私はあの子にあんたの旦那の連絡先を渡したつもりだったのよ!」と母。母親のメモはいつもぐちゃぐちゃに書かれていましたから、取り違えるのも無理はありません。奇跡的に義兄の連絡先だけを教えていたことには驚きましたが……。
「お母さんが助けてあげればいいじゃない、いつもみたいに」と言うと、「もうお父さんに内緒で使えるお金がないのよ!」と母。母は、父に黙って妹に援助していたのです!
「お父さんはあの子が大学卒業して就職することを条件に、大学の学費を出すこととひとり暮らしを許してくれたのよ……」「でもあの子が本当は大学中退してて、ただのフリーターなんてバレたら、お父さんは『学費返せ』とか言い出しそうじゃない?」
妹が大学を中退したのは2年生のとき。残りの学費は、母が妹に直接渡し、妹の生活費となったようです。
「だからこれ以上、わが家からお金は出せないのよ!」「お姉ちゃんなんだから、なんとかしてあげなさい!」と母。母は自分のしでかしたことの罪の重さをわかっていないようでした。
「学費に使われると思っていたお金が別の使われ方をされてたなんて、お父さん、怒るどころじゃないでしょうね」「……ところで、今、私、お父さんと一緒にいるんだよね」「結婚式のときのスピーチの最終打ち合わせのために、来てもらったの」
途中からスピーカーに切り替えていたこともあって、私の隣には怒りで顔を真っ赤にした父がいました。
「お母さんは妹の味方なんでしょ?」「私はお父さんの味方だから」「お父さんが帰ったら話があるって!」と言って電話を切ろうとすると、母は「嘘でしょ!ちょっと待って!」と必死に叫んでいました。
1週間後―。
「お姉ちゃん、助けて!ほんとにヤバいの!」と今度は妹から連絡が。「私、これからどうすればいいの!?」「彼とも連絡取れなくなるし!私、妊娠してるのに!子どもいるのに!」と泣く妹。
離婚の危機に直面し、義兄は妻から慰謝料と養育費の請求を受けていました。自分の隠された事実が原因で、彼自身も関係修復に必死な様子。その影響で、家計に大きな穴があいてしまったのは明らかでした。
「義兄に、自分の子どもじゃない子にまでお金を払わせる気?本当は義兄の子どもではないんでしょう?」と私が言うと、「え……?なんでお姉ちゃんが、おなかの子どものこと知ってるの……?」と呆然とした様子の妹。私は「お父さんが教えてくれたのよ」と返しました。
「お父さんがブチ切れたの。『姉より妹をあからさまに贔屓して、家のお金を勝手に使っている!もう目に余る』って」「でもお母さんは専業主婦で貯金だってないし、こんなタイミングでお父さんと離婚したら生きていけない」「だから、お父さんから聞かれたことは馬鹿正直に全部答えたの」
父曰く、そもそも妹がどこの誰とも知らない人の子どもを妊娠したことが事の発端だったと、母が白状したとのこと。ひとりで育てるのは無理だと判断した妹が母に相談して、2人で私の婚約者を奪う計画を立てていたことがわかったのでした。
「計画が丸つぶれよ!お姉ちゃんが私にちゃんと自分の旦那を紹介しなかったから!」「パパに大学中退もバレて『学費返せ』って言われてるし、私の人生お先真っ暗すぎる!」「せっかく玉の輿にのれると思ったのに!」
そんなことを言っても、ただの八つ当たりにしか聞こえません。そもそも、人の婚約者を奪って幸せになろうというのが間違っているのです。
私はため息をついて、「おなかの子にはあんたしかいないんだから、大人として親として、恥じないように生きなさい」とだけ言って、電話を切りました。
その後――。
出産費用と父からの学費返還のために、妹は働き始めたと父から聞きました。また、母も父に家を追い出され、妹と一緒に暮らし始めたそう。父は母に今まで使い込んだお金を請求しているそうで、母も慣れないながら働き始めようです。
私は夫と新婚生活を楽しんでいます。義兄や妹のことで散々迷惑をかけてしまいましたが、それでも私と一緒に生きる道を選択してくれた夫には感謝しかありません。
【取材時期:2025年1月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。