「なんでこんなところにあんたがいるのよ!?」と背後から声をかけられ、私はびっくりして振り返りました。そこには、忘れもしない、私から婚約者を奪った幼なじみがいて……?
ハワイでの偶然の再会
「私たち、新婚旅行以来、2回目のハワイなの♡」「彼が昇進するからそのお祝いで来たのよ?」「……で、なんであんたがここにいるの?まさか寂しく一人旅?世間体とか気にならないわけ?」と相変わらずの同級生。
「幼なじみから婚約者を奪って結婚して……あなた、世間体うんぬん言える立場なの?」と返すと、「な、なによ!かわいそうな幼なじみを心配してあげたのに!」と顔を真っ赤にした幼なじみ。
しかし、すぐさま幼なじみは「この高級ホテル、ロビーが素敵だから泊まれない庶民がロビーの見学に来るんだってね!あんたもその1人でしょ!」「私たちが泊まってるお部屋はスイートルームで最上階のオーシャンビューよ!あんたは一生見られない景色でしょうね!」と、マウントを取ってきました。
「高級ホテルの見学だなんて、目障りなのよ!」
「貧乏人が来るところじゃないの。警備員呼んでつまみ出そうか?」
「私、スイートルームに泊まってるんだけど?」
「え?」
「あの、スイートなんて……ただの冗談よね……?」と言う幼なじみに、「あら、私が嘘つくタイプに見える?」「私の馬鹿真面目さ、あなたが一番わかってるんじゃない?」と返した私。
「スイートルームってすごいよね、最上階で、オーシャンビューで……」「でも、私が泊まっている部屋以外のスイートは、今日は誰もいないって聞いたけどな?」「1泊100万だから……昇進祝いとはいえ、かなり奮発したんだね!」
しばらく目を泳がせていた幼なじみでしたが、「そ、そんな部屋にあんたが泊まれるわけないじゃない!」と言ってきました。
「あれから3年経ったのよ」「あなたに婚約者を奪われてから、私はそれまで以上に仕事に打ち込んだの」「そしたらありがたいことに評価されて……今じゃ営業統括本部の部長よ」
今回、私はこのホテルの買収交渉に来たのです。もともとは別でホテルを取る予定だったのですが、ホテル側のご厚意でスイートルームを用意してくれていたというわけです。
「そ、そんな……ただ真面目なだけで、地味でかわいくもないあんたが……?」「で、でも、彼だって昇進したもの!あんたなんかよりずっとずっと上の立場なんだから!」と幼なじみ。
私は下から幼なじみの顔を覗き込み、「本当に?」と尋ねました。
元婚約者の本性
元婚約者が勤めている会社は、地元でも大きな企業でした。しかし、そこからうちの会社へ転職してくる人が後を絶たないのです。不思議に思った私が転職組の1人に話を聞いてみると、「部下の成果を奪う人がいて……」と口を開いてくれました。
「お父様が大手企業の取引先の役員で、その人はコネで出世しまくっているんです」「部下に仕事を押し付けて、手柄を奪ってばかり」「何人も上層部に苦情を申し入れましたが、全部もみ消されるんです!」
そんなひどいことをする人がいるなんて……。ショックを受けつつも、私はその厄介な人の名前を聞きました。すると、その人は私の元婚約者の名前を挙げたのです!
私に「馬鹿真面目でかわいげがない」「仕事は効率良くやらないと」と言ってきた元婚約者。どんどん昇進していく彼に追いつきたくて、仕事をがんばっていたのに……。コネとずるさで昇進していたなんて……。
ハワイ旅行の本当の理由
私は幼なじみの顔を覗き込んだまま、「同じ業界だから、彼の噂も私のところに入ってくるのよ」「本当かどうかはわからないけど、彼、大幅降格と減給が決まったって聞いたんだけど……?」と言いました。
「なんでも、数億円の損失を出したとか?」「取引先に対して横柄な態度で仕事してたらしいわね……部下に責任をなすりつけようとしても、必死に謝ってももう手遅れ」「親のコネでもみ消そうにも損失額が大きすぎて、ついに大きな処分が決まったらしいじゃない」
「う、嘘よ!私、そんな話聞いてないもの!」と耳をおさえ、頭を横にぶんぶん振る幼なじみ。
「だって、彼、『上層部に呼ばれた』って言ってたもん……!」「上の人に呼ばれるってことは、昇進ってことでしょ……?」などとブツブツ言っていましたが、おそらくその呼び出しは降格と減給処分のことだったのでしょう。
彼には見栄っ張りなところがありましたから、喜ぶ幼なじみを見て、引くに引けなくなってハワイ旅行に連れてきた、といったところでしょう。
未だにブツブツ言っている幼なじみに、「私も伝え聞いた話だから、まずは彼に確認してみたら?」「最後の贅沢旅行にならないことを祈ってるわ」と言って、私は部屋に戻りました。
その後――。
私の聞いていた話はおおむね真実のようでした。せっかくの高級ホテルなのに、幼なじみと元婚約者は大喧嘩を繰り広げたそう。挙句の果てに、幼なじみは私に「最後くらい私もスイートルームに泊まりたい!」とわがままを言ってきました。もちろん聞きませんでしたが。
今回のことで元婚約者は会社に居づらくなったのか、退職したと聞きました。幼なじみと別れたのかどうか、そして今何をしているのかはわかりません。
私は相変わらず海外や日本国内を飛び回っています。憧れを抱いていた元婚約者が虚像だったことは残念ですが、おかげで未練はこれっぽっちもありません。今はより上のポジションを目指して毎日仕事に励んでいます。
【取材時期:2025年1月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。