夫は、義弟のことをひどい人だと言いますが、私から見たら義弟は普通の人。むしろ、とてもやさしくて、温かい人だと思います。
私の父が亡くなったときは、わざわざ香典を届けに来てくれて、傷心していた私のことも気づかってくれました。親切で、とてもしっかりしている印象。
しかし、義弟は落ちこぼれの捻くれ者だと言う夫。学校の成績も容姿も夫のほうがすぐれているので、ずっと嫉妬されていたと言います。義弟の彼女が自分に乗り換えたこともあったと、得意げに話していました。
兄である自分に何ひとつ勝てるところがないことを僻んで、自分から実家を奪ったのだろうと、夫は推測しているようなのです。
家でも外でも不満ばかりの夫
「弟ともめようが、それで絶縁になろうが関係ない。俺は俺の権利を主張する」と言って、義父が存命の今から、亡くなった後の財産のことばかりを気にしている夫。
夫が義弟からの連絡を取らないため、義弟から何かと私に連絡が来るので、私が2人の仲介役になれるかもしれないと考え、橋渡しを買って出たのですが……。
義弟が全財産を自分に譲るならまだしも、そうではないのなら和解するつもりはないと突っぱねられてしまいました。
ある休日、慌てて会社へ向かった夫。重大なトラブルが発生し、部下の尻拭いのため夫が出勤しなければならなくなったそう。
自分のペースや予定を狂わされるのが大きらいな夫は、電話でトラブルの報告を受けて大激怒。夫にそんな権限はないと思うのですが「余計な仕事を増やされて迷惑だ! クビになりたいのか!」と怒鳴っていました。
そんな夫の姿を見て心配になった私。言い過ぎではないかと私が夫に声をかけると、夫は「何を言われても言い返せない小心者で、仕事もできない使えない部下だ」と言います。しかし私には、夫が何も言わせないようにしているのではないかと思えてなりません。
夫は、私の話をあまり聞いてくれません。機嫌が悪いときは、話しかけるなオーラや、圧がすごいのです。そんなときに、間違えて話しかけてしまうと、ひどく怒られます。会社で問題を起こさなければいいのですが……。
それから数日後、私は緊急のため夫に何度も連絡をしました。やっと電話を取った夫は、とんでもなく機嫌が悪くて……。
「仕事中に連絡するな」
「うっとうしいんだよ」
緊急の連絡だと伝え、話を切り出そうとしましたが遮られてしまい、まったく私の話を聞いてもらえません。無理やり私が伝えようとすると、「俺に許可なく話し始めるな!」と激怒。
「そう、ごめんね」
「もう絶対連絡しないから」
言われた通り、話して良いかと許可を取っても「ダメだ。忙しい」と言って、結局取り合ってはもらえませんでした。そこまで言われてしまっては、もう諦めるしか……。
言われた通り連絡をしなかったら…
3週間後、ようやく仕事が落ち着いたようで、久しぶりに義実家を尋ねた夫は、慌てた様子で私に連絡してきました。
義実家に誰もいないと言って、困惑している夫。あの日の緊急時も、夫は義弟からの連絡も今まで通り無視していたため、何も知らず、私に義弟から何か連絡が来ていないかと尋ねてきたのです。
「話をしてもいいの……?」
許可なく話すなと言われているので私は一応、夫に許可を取ってから話を始めました。
「お義父さん、亡くなったのよ」
そう切り出すと、突然のことに驚いたのか「はぁ!?」と発して、絶句する夫。数秒、沈黙した後、「大事なことはちゃんと言え! なぜ黙っていた」と怒り出しました。
しかし、何度も伝えようとした私を黙らせたのは夫。電話で話をさせてくれなかったため、私からも義弟からも葬儀の日時や場所など、最低限の連絡はメッセージで送っていました。それを自分が無視していただけなのに、どうして私を怒ることができるのか不思議です……。
葬儀はどうしたのかと尋ねられたので、義弟が喪主を務めて、つつがなく執り行われたと報告しました。私もきちんと参列し、義父を見送っています。
すると今度は、義弟に家から追い出された上に、葬儀からも排除されたと文句を言い出した夫。「一体あいつは何様のつもりだ」と憤っていたので、私は「一体何様のつもりだと思われているのは、あなたのほうよ」と伝えてあげました。
そして、夫に伝えなければならないことはもう一つ。
なんと夫は、義父の遺言により財産のすべてを義弟に譲るとされていたのです。遺留分として一定の割合を請求はできますが、それでは納得がいかないようで、義弟が義父を言いくるめたに違いないと大騒ぎする夫。義父が義弟にすべてを譲ると決めた理由に、まったく心当たりがない様子。
義弟から聞いて驚いたのですが、夫が義実家で義父と同居していたころ、ずいぶんひどいことを義父にしていたようなのです。毎日のように暴言を浴びせ、私や義弟にしていたように無視して、横暴な態度を取り……。
義父がそれに耐えきれなくなり、義弟に助けを求めたことで、義弟が義父の面倒を見るようになったそう。義弟は夫から何かを奪おうとして義実家に戻ったわけではありません。義父がすべてを義弟に譲ることにしたのも納得です。
人の話を聞かないトンデモ夫の末路
遺産をもらえないとわかった夫は、とても慌てていました。私に、「他人事じゃないだろ!」と迫ってきましたが、私は遺産になど興味はありません。義父が亡くなったことよりも、遺産がもらえないことを心配する夫に幻滅していると、夫が突然、無職になると告白してきました。
実は、先日の仕事のトラブルですが、原因は部下ではなく、あんなに部下を怒鳴った夫にあったと言うのです。そのことが発覚し、部下も黙っていられなくなり、上に報告されてしまったそう。
夫は上からひどくお叱りを受けたことで、社内ですっかり浮いてしまって、居場所がなくなり退職届を出したのでした。夫はやはり、会社でも嫌われていたのです。
そんな事情もあって、義父の遺産が頼りだった夫。このままではわが家は破産すると夫は騒ぎますが、私は離婚するつもりでいるので大丈夫です。
義父が亡くなったあの日、もうこれ以上、付き合っていられないと離婚を決意した私。これからは、人の話はちゃんと聞いたほうがいいと最後にアドバイスをして、離婚届を突きつけました。
すべてがどうでもよくなってしまったのか、夫は意外にもあっさり離婚に承諾。私は離婚後、地元に戻って、再会した同級生と半年ほどして再婚。今の夫は聞き上手で、話をするのが楽しくて仕方がありません。
元夫は、王様のような生活から一変。仕事を失い、お金に余裕もなく、つらい状況のようですが、誰の話も聞いてこなかった元夫には相談できる相手がいません。私の最後のアドバイスを聞いて、少しでも変わる努力をしてくれたらいいなと思っています。
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人の話をしっかりと聞くことが、どれほど大切なことかとあらためて感じますね。相手のことを考え、真剣に話を聞くことで、自分の話や意見も相手に聞き入れてもらいやすくなるのではないでしょうか。相手の話を聞かずに、自分ばかりになってしまわないよう気をつけたいものです。妻からの最後のアドバイスに耳を傾け、夫が少しでも改心してくれるといいですね。
【取材時期:2025年4月】
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。