たまに仕事の打ち合わせで、兄や同僚の男性が家を訪ねてくれるのですが、夫より彼らのほうが娘の面倒を見るのが上手なのです。そんな彼らの姿を見るたびに私はため息が出ます。夫が少しでも家事や育児を手伝ってくれたら、どんなにラクか……。
生まれて1週間くらいは夫もそれなりに育児に参加していましたが、すぐに飽きてしまい、日を追うごとに育児をめんどくさがるようになりました。そして、娘のお世話をまったくしなくなり、娘に関心すら示さなくなったのです。家にいるときはゴロゴロしているだけで、娘が泣いても知らん顔です。
もちろん、家事もまったく手伝ってくれません。出したものは出しっぱなし、ドアを開けたら開けっぱなし、散らかし放題です。自分が食べた食器すら片付けず「いただきます」も「ごちそうさま」も一切なし。
それだけならまだしも、私に何の許可もなく、勝手に会社の人を家に呼ぶこともしばしば。急な来客におもてなしを強要し、協力するどころか、私の手をわずらわせるばかりの夫。本当に頭が痛いです……。
会社の人にイクメンアピールする夫
家に人を呼びたいのなら、少しくらい家事や育児を手伝ってほしい。そう要求すると、適当に「はいはい、わかったから〜」と返事をして謝ってくる夫。しかし、数日後にはまた勝手にお客さんを連れてくるのです。そして、みんなの前でイクメンのいい夫ですアピール……。
その上、私が仕事をしながら家事や育児をしていることが気に食わないらしく、ダメ出しをしてきます。「大した仕事もしていないくせに家のことに手を抜くな」と言います。自分は家で何もしないくせに……。
私は夫の文句に我慢できず、仕事を辞めて育児と家事に専念したいと申し出ました。安月給で散財グセがある夫には、貯金がほとんどないので、本当は辞めたくなかったのですが、私には蓄えがあるので、それを頼りにすることにしました。
仕事を辞めてからは、前よりも時間的、精神的な余裕ができました。夫からも家事に文句を言われなくなって、気持ちがラクになりましたが、夫の勝手な行動は相変わらず。
ある日もまた、何の連絡もなしに会社の人を連れて帰ってきました。実は、夫の同僚や後輩のみなさんは、夫がエセイクメンであることに気づいています。私にもいろいろ気を遣ってくださって、本当に夫が恥ずかしく、心苦しいです。
帰り際に、お子さんのいる同僚の方が、娘を見ながら急な来客に対応する私の姿を見て、少しは私を手伝ったらどうかと夫に言ってくれたのですが……。
それが、裏目に出てしまいました。なんと、みんなの前で私のことを笑いながらバカにして、悪く言い出したのです。「家事育児に専念するとか言って専業主婦になって、昼間はゴロゴロしてるだけ。こういうときだけセコセコ働いていい嫁アピールをするんだよ」と……。
じゃあ仕事復帰させてもらいます
夫の発言にブチギレた私は、「今後はお客さんを連れてきても何もしない」と宣言。対して夫は、ふざけるなと怒鳴ってきます。すると、娘が夫の怒声に驚いて泣き出してしまいました。娘の泣き声に夫はさらにイライラして、今度は私の育児を批判……。
「お前の育て方が悪いから泣くんだよ。ちゃんと育児しろ」と言い、どんどんヒートアップ。ついには、「専業主婦ってマジでいい身分だよな! 俺の金でラクに生活できてズルいわぁ~」とバカにしてきました。
しかし、実際にはそんなことを言えるほど稼いでもいなければ、大して家にお金も入れてくれていない夫。私がそのことを責めると、夫は物に当たり出して、テーブルをひっくり返し、リモコンを投げつけて怒りをあらわに……。
このままでは娘に危険がおよぶ日もそう遠くないと感じた私。この瞬間に離婚を決意しました。そうと決まれば、急いで仕事に復帰しなければなりません。私は冷静になり、今後は急な来客に文句を言わない、家事も育児も完璧にやるという条件で、夫に仕事復帰の了承を得ました。
「できるなら最初から完璧にやれよ!」とキレて、自分がぐちゃぐちゃにした部屋の片付けを私に命令し、夫はどこかへ出かけて行きました。
このとき、私はある秘策を思い付いていました。その方法なら、仕事をしながらでも家事も育児も完璧に……。
復帰後、初出勤する日の朝…♡
数日後、私はいよいよ作戦を実行。その日は平日でしたが、夫は休みでした。私が慌ただしく出かける準備をしていると、のんびり起きてきた夫。そんな夫を待ち構えていたのは私の家族です♪
私は兄の会社に再就職することになりましたが、やはり働きに出るには家族の助けが必須。夫がまったく頼りにならないので、母の力を借りることにしました。私は毎日、出社してバリバリ働くことを決意したため、その日は、兄が車で母をわが家に送り届けてくれて、出社する私を送ってくれることになっていたのです。
私の今までの生活と作戦を知った母と兄は、私の送り迎えや娘のお世話を買って出てくれて、快く協力してくれたのです。
無事に出勤初日を終えて帰宅すると、母が面食らった夫の尻をたたき、1日中家事をさせていたようで、夫はヘロヘロで倒れ込んでいました。しかし、私のお返しはこれから……!
私は今日、夫のように会社の同僚を連れて帰ってきたのです。おもてなしを夫に頼むと、「突然連れてくるなんて」と文句を言われましたが、同じことを何度もしてきたのは夫です。私と同じ大変さを体感してもらわなければ……。
立ち直れないほどのダメージを与えたのは…
そして、みんなの前で、夫に離婚届を突きつけた私。夫は泣き面に蜂状態。離婚についてはすでに義実家にも報告済みで、義父母はカンカンに怒っていて、夫のことは勘当すると言っていました。
離婚に際して養育費を請求されると知った夫は、娘を盾に離婚を回避しようとしてきました。しかし、娘は夫には見向きもせず、私の同僚に手を伸ばして、なんと「パァ……パァ……、パパァ」と言ったのです!
娘の初めての「パパ」が他人に向けて発されたことで、夫はぼう然。娘に父親と思われていなかったことにショックを受けたようで、涙ながらに離婚届にサインした夫。みんなに協力してもらい、無事に離婚が成立しました。
あのとき、娘が「パパ」と呼んだ同僚は今の夫です。私の同僚でもあり、兄の部下で友人でもあった彼は、兄と一緒に週に1、2回ほど仕事の打ち合わせでわが家に来て、その合間に娘とたくさん遊んでくれていました。元夫は娘に見向きもしなかったので、娘が同僚をパパと勘違いしても無理はなかったのです。
彼と再婚した私は、彼は家事にも育児にも協力的で、もちろん私に不満や文句など一切言いません。今は家族3人で仲良く幸せに暮らしています。
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娘の初めての「パパ」が本当の父親である自分に向けられなかったことが、一番のお仕置きになったのかもしれませんね。パートナーには恵まれませんでしたが、周りの人に恵まれていてよかったです。助けてくれた母や兄に感謝して、やさしい今の夫といつまでも幸せに暮らしていってほしいですね。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。