横暴な振る舞い
新たな院長が就任して数日後。ナースステーションで私たち看護師が、とある患者さんの落とし物を探していたところ、新院長がやって来ました。
そして、皆で探し物をしている私たちを見て、心ない言葉を吐き捨てたのです。
「お前ら、仕事中に井戸端会議なんかしているんじゃないぞ。いいご身分だな」
私たちは理由を説明し、患者に寄り添う姿勢の大切さを訴えたのですが、彼は聞く耳持たず。挙句の果てに、看護師のことを「給料泥棒のオバサンたち」などと見下してきたのです。
その日以降、私たちに対する新院長の横暴な振る舞いはエスカレートしていきました。
「看護師の仕事は好きだけど、院長はいけ好かない! これじゃスタッフがもたないし、いずれ患者さんにも影響が出ちゃう」と、心の中で心配していたのですが……。
相談すると…
ある日、実家に帰った私は姉に相談。姉は実は、別の救急医療病院の医師なのです。
「新しい院長がとんでもない人でね……。このままでは、病院で一波乱起きそうだわ」とため息をつくと、他の職場を探したら? とアドバイスされました。
「でも、そんな簡単に次の病院は見つからないし。皆を見捨てて逃げるのもイヤだよ」と言うと、姉はニッコリ。
「私に考えがあるの。他の看護師さんたちにも伝えておいてほしいんだけどね……」
そして姉は秘密の計画を教えてくれたのです。
我慢の限界!
数日後、大変なことが! なんと院長が、同僚の看護師を理不尽に罵倒し始めたのです。
「俺にしてみりゃ、お前らみたいな中途半端なパート看護師が一番迷惑なんだ。人件費ばかりかかるし、辞めてくれれば清々する。そうしたら若くて美人の看護師をごっそり採用してハーレムだしな」
などと信じがたいことを言って、ケタケタと笑いながらナースステーションから去っていきました。
「皆……。これはもう我慢の限界よね。覚悟はいい?」
私の言葉に、看護師たちは大きくうなずきました。
「ご希望通り、すぐに辞めてやろうじゃないの!」
そしてパート看護師が一斉に退職届を提出。すでに院長は帰宅中だったので、院長室のデスクにずらっと並べて、病院を後にしました。
翌朝…
「お前ら、一体どういうことだ?」と興奮した様子の院長から、私に鬼電が。病院はもぬけの殻で、看護師が誰1人いないのです。デスクにはスタッフ全員の退職届が山積み状態。驚いたに違いありません。
私は、「パート看護師が辞めてもまったく問題ないというお話だったので、その通りにしました。皆が今どこにいるのか知りたいなら、A病院にお越しください」とだけ返答しました。
A病院は、市内に新設された総合病院。実は私の姉が、若くしてそこの院長に就任したのです。私たちは、横暴院長の病院がいずれ崩壊すると見越して、全員で転職の準備をしていました。
スタッフだけではありません。患者さんにも姉の病院を紹介し、順次転院できるよう話を進めていたのです。なじみの看護師さんたちがいる最新の総合病院で手厚い看護を受けられると、患者さんたちは大喜び。
一方、新院長の方はスタッフも患者さんも一気に失って、転げ落ちるように経営難に陥りました。
1カ月後
翌月。姉は、倒産した新院長を見かねて提案しました。
「あなたが改心するなら、医者として当院で採用いたします。もともとは優秀な医師だったと聞いているわ。助かる命が増えるならそれが一番」と話し、彼を諭したのです。
「無駄なプライドやおごりを捨てて素直になれば、人の役に立てるはずよ」
看護師たちも言いました。「先生が本気で変わるなら、私たちは協力を惜しまない」と……。
しばらくして、彼は私たち看護師に謝罪。自分の態度が横柄だったことを認め、A病院で再出発を決意しました。
今後は良い仲間として、医療活動に勤しんでいけると思います。
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横柄な新院長をぎゃふんと言わせた一斉辞職。これにはさすがの彼も反省し、心を入れ替えてくれたようですね。医者も看護師も、どちらも欠けては成り立たないのが病院の仕事。これからは協力できそうで、本当によかったです。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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