ある日、私のSNSに見知らぬアカウントから突然メッセージが届きました。「いきなりごめんね?彼本人には聞きづらいことがあって、奥さんに聞くことにしたの」──夫の元カノでした。この時点で嫌な予感はしていたのですが、彼女はいきなり「ぶっちゃけ、彼の年収っていくらなの?」と聞いてきたのです……。
面の皮が厚い元カノ
「大学時代はパッとしなかったし、就活は全滅したのに……。いったいどうやってそんな勝ち組になれたのか、すっごく気になるの」「あのビジネス街の超高級タワマンに住んでるって本当?」「年収はやっぱり1,000万超えてるわよね?」
無神経すぎる質問の嵐に、きっぱりと「何も答えるつもりはありません」と答えた私。
すると、「そんなケチくさいこと言わないでよ~!」と元カノ。さらにとんでもない言葉を続けたのです。
「まぁ否定しないってことはほぼ当たりってことよね?」「じゃあさ、彼のこと、私に返してもらえない?」
「は?なんでそうなるんですか!?」とだけ、淡々と返信しました。「え?私が離婚したばっかりでさみしいからだけど?」と元カノ。開いた口が塞がらない私。無神経というか、もはや横暴です。
「私ね、ついこの間離婚したの!」「大手勤めの旦那だから期待してたんだけど、財産分与もぶっちゃけ期待外れで……でも彼なら、余裕で私の生活レベル維持できそうじゃん?」
「あの……私たち新婚なんですが……」とやんわり言うと、「私が『さみしい』って言えばきっと振り向いてくれるはず!」「早く譲ってくれたほうが、あなたも傷つかなくて済むんじゃない?」と元カノ。
その場では「絶対に嫌です」と言った私。しかし、私はすぐに元カノの執念深さを思い知ることになったのです……。
家に帰って来なかった夫
2カ月後――。
私は冷めきった夕食を前に、夫の帰りを待っていました。スマホに通知が来たので開くと、「ごめん! 今日も仕事で帰りが遅くなりそう!」「先にごはん食べて、寝てていいからね!」とメッセージが来ていました。
1カ月ほど前から、繁忙期でもないのに明らかに残業が増えた夫。このモヤモヤを抱えたままでは夫婦関係にヒビが入ると思ったので、私は「本当に仕事なの?」とだけ返しました。
すると、しばらく既読にならず……2時間後、ようやく「……ごめん、やっぱり気づいてたよね」と返信が来ました。
「実は仕事じゃなくて、元カノと会ってて……。と言ってもただ食事して話を聞いてただけだよ!」「彼女、離婚して地元に戻ってきたんだけど、ご実家が彼女を受け入れてくれないらしいんだ……。つらくて家に帰れないって言うんだよ!」
「そういうときは既婚の異性じゃなくて、同性の友だちを頼ればいいんじゃないのかな」と言うと、「友だちはみんな既婚者で頼りづらいみたいで……。今まで専業主婦だったから、これからの生活も不安みたいでさ」「泣きながら話を聞いてくれって言われたら断れないよ」と夫。
もともと夫は気の弱い部分があるので、元カノの押しに負けてしまったところもあるのでしょう。しかし、新婚の妻より元カノを優先する夫なんて、聞いたことがありません。
「悪いけど、もう彼女とは会わないで」「新婚の妻に嘘ついて、別の女性と食事なんてひどいよ……」と言うと、「なんでそんな冷たいことばかり言うんだよ!?」と、まるで責めるような口調の夫。
「彼女は毎日、本当につらい思いをしてるんだ!実家からも見放されて、友だちも頼れなくて……そんな人を見捨てろって言うのか!?」「君がそんなに思いやりのない人だったなんて思わなかった、わかってくれないならもういいよ!」「彼女もまだ泣いてるし、今日は家に帰らないからね!」
その宣言どおり、夫はその晩家に帰ってくることはありませんでした。
夫にアプローチした元カノの末路
翌日――。
「昨日はごめんね~!」と私に連絡をしてきた夫の元カノ。夫の話ではさめざめと泣いていたとのことですが、なんとなく、そうは思えませんでした。
「昨晩、彼は私をやさしく抱きしめてくれて、ずっと慰めてくれていたのよ」「彼、想像以上にチョロかったわ!」「なんかごめんね♡」と、自慢げに語る元カノ。
「離婚して1人で寂しいって言ったら、すぐに再婚してくれるって!」
「前の旦那よりお給料いいし、無事に私のものになってうれしい♡」
「頑張ってくださいね」
「は?」
……その瞬間、私の中ではもうすべてが終わってしまいました。怒りも失望も通り越して、ただ関心が消えていたと表現するのが、私のこのときの感情に近かったかもしれません。
「あ、強がってるのね。あっけなく奥さんの座を奪われちゃって……無理もないわね。結婚してたった数カ月で旦那さんがこっちに来ちゃうなんて、びっくりよね!」と元カノ。
「いえ、私のことはお気遣いなく!専業主婦でもないですし」「彼は差し上げますので、結婚するなりお好きにどうぞ」「とはいえ、正式な手続きが終わるまでは、私の部下として接することになりますけど」
「え……?『私の上司として』ってどういうこと?」と私の言葉を繰り返した元カノ。
夫はつい先日課長に昇進し、私も社内でそれなりに知られた存在ですが、彼女はどうやら、私が夫の上司だという事実を知らされていなかったようです。夫が意図的に話していなかったのか、それとも彼女が聞く耳を持たなかったのかはわかりませんが――。
「な、なんですって……!」「もしかして、彼のことをクビにするつもりじゃないでしょうね!?」と言ってきた元カノ。私情による解雇はできないと言うと、彼女は安心したようでした。
「でも、彼が課長になれたのは私のサポートあってこそです」と私。海外支社との対談前には夫を英会話教室に通わせ、家での会話はすべて英語に。プレゼンの原稿チェックなどもすべて私がやっておきました。
取引先との会食で緊張した夫が体調を崩したときも、代わりに行ったのは私。夫は家事もできなかったので、どんなときも私は上司として、妻として、ずっと夫をフォローしてきたのです。その結果、夫は課長へと昇進しました。
「……自力でこれ以上の昇進は厳しいってこと?」「でも、転職先なんていくらでもあるはずだし……あの性格じゃ元嫁と同じ会社だと、能力発揮できないだろうし……」とブツブツ言っている元カノ。
しかし、実際はこの地域では今の会社よりも待遇の良い会社なんてなかなかありません。あったとしても、緊張しやすい夫が面接を突破できるとは限りません。そのことは口に出さず、私は「とりあえず私は離婚手続きを進めるので、これで失礼します」と言ってやり取りを終えました。
その後――。
夫と離婚した私は、タワマンから元夫に出ていってもらいました。この部屋は、もともと父が所有していたもので、結婚前から私が住んでいたのです。
それから、わずか数カ月後、元夫と元カノは本当に再婚。「タワマンに住もうと思ってたのに~」と言う元カノは、最初のうちは威勢がよかったものの……。
「クビじゃないなら安心」と言っていた元カノでしたが、社内での立場が悪くなった元夫が自主的に退職したことを聞いたときには、さすがに動揺した様子だったと、あとで人づてに聞きました。
結婚数カ月で離婚したことが社内に広まってしまった元夫は、やはり会社に居づらくなったようで退職してしまいました。次の就職先は決まっていないようで、2人で狭いアパートで暮らしているようです。
さらに、慰謝料も2人に重くのしかかっているようです。私から請求した慰謝料はもちろん、もともと元カノのほうに前の旦那さんからも慰謝料請求されているらしいのです。元カノの離婚原因は、元カノの浮気だったようです。
夫のために費やしていたエネルギーを、今はすべて自分のキャリアに注いでいます。まだまだ上を狙えると思うので、これからも着実に成果を重ねていこうと思っています。
【取材時期:2025年3月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。