初めて妊娠した際にドイツに移住したばかりだった私は、日本の妊娠検査や出産に関する記事などを参考にしてから、ドイツの婦人科へ行きました。ところが日本とドイツの妊婦健診や出産のシステムがあまりに違い、驚きの連続でした。
母親手帳は妊婦が常時携帯する携帯カルテ
婦人科で妊娠が確認されるとMutterpass(母親手帳)という手帳が交付されます。ここには出産までの検査の情報がすべて記入され、カルテと同じ役目をしています。
妊娠時はこの手帳を普段から携帯しておくことになっていて、急な体調不良の際にどの病院に行っても対応できるようになっています。かかりつけの婦人科から遠い場所に外出することが心配の種にならずに済むので、非常に気がラクでした。
出産に立ち会ってくれるのは初対面の先生
日本の出産と最もシステムが異なる点は、妊婦健診をする婦人科はあくまで「診療所」で、出産の際には母親手帳を持って「総合病院」の中に入っている産婦人科に行くことです。
知らない先生が出産に立ち会うことや、より不特定多数の方が出入りする総合病院での出産というのに若干抵抗があったのも事実です。その反面、麻酔医や救急医療の先生などが確実に病院内にいるため、何か緊急の場合にはより専門的な治療が受けられるというメリットもあります。
ほぼ保険適用で賄えるドイツでの出産
大抵の治療が保険でカバーできるドイツですが、妊娠、出産はもちろん不妊治療まで保険が適用されます。ただし妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群などの所見がない限り、エコー検査はたった3回、検査も月1回あるかないか。3回以上エコーを見たい場合は実費になります。
私の通っていた診療所は良心的だったので、エコーだけは毎回見てくれましたが、現像してもらったのは3回だけで、日本のようにアルバムに綴じるほどの枚数にはなりませんでした。
出産直後でも食事は普通の病院食
出産は一般の総合病院でおこなうこともあり、その後の食事などは普通の病院食です。昼だけは温かい食事が出てきますが、朝と夜はパンにバターやチーズ、ハム、果物など冷たい食事のみになります。日本の産院で出てくるような「お祝い御膳」など夢のような話だとうらやましく思いました。
とはいえ、この食事も保険で賄われているため食事代の負担は実質ありません。病院に4日ほど入院しましたが、退院まで一切お金がかかりませんでした。
何かと出費の多くなる出産。病院にかかるお金がすべて保険で賄われるというのは非常に助かります。その一方でサービスの行き届いた日本での出産も魅力的に思えます。両方の国の良い所を組み合わせた出産システムができることを願うばかりです。
著者:ヘガー亜矢子
結婚を機にドイツへ移住し、1歳と4歳の姉妹を育児中。婚前より携わっていたインテリアやグラフィックのデザインをメインにフリーランサーとして活躍中。