家事を協力的にしてくれるやさしい夫と、そして新しい命。幸せな毎日がこれから始まると信じていました。
結婚してすぐの悲劇
ところが結婚して間もなく、義父が突然この世を去りました。義母は「私、ひとりじゃ生きていけない」と毎日泣き、ふさぎ込む日々。
そんな義母を放っておけず、私たちは義実家での同居を提案しました。
「迷惑じゃないかしら……」と遠慮しながらも、義母の表情はどこかほっとした様子。
もともと義母は明るく朗らかな人柄だったこともあり、うまくやっていけると思っていました。
新生活が始まった途端、予想外の出来事が
義母はこれまでと変わらず家事をしてくれるので、体調のすぐれない妊娠初期を無理なく過ごせました。夫と義母と3人で過ごす毎日は、心が和む日々でした。
ところが、そんな穏やかな時間は長くは続きませんでした。
夫に転勤辞令が出たのです。
私は仕事で大きなプロジェクトを任されていたこともあり、すぐに同行することができませんでした。夫の転勤後、義母とふたり暮らしをすることになったのです。
始まりは、寂しさから
夫が引っ越した最初の週末。
義母とふたり、静かな時間が流れる中で、義母がぽつりとつぶやきました。
「2人だけだと、なんだか寂しいわねぇ……」
そして次の瞬間、親戚に電話をかけはじめたのです。
「今度の土曜、お昼でも食べにこない?」
私はゆっくり体を休めたかったけれど、おもてなし役を任されてしまい、慌ただしく動き回る羽目に。
繰り返される週末の集い
「今週だけ」と思っていた親戚の集まりは、次第に毎週恒例のようになっていきました。数週間先の週末まで親戚を呼ぶ予定を勝手に入れられてしまいました。
しかも義母は料理が得意ではないため、準備はすべて私の担当に。
思い切って、「毎週人を呼ばれても困ります」と伝えてみましたが、「人が多い方が楽しいじゃないの」と、あっさり流されてしまいました。
平日は仕事、休日はおもてなしに追われ気が休まる暇もなく、気付けば心も体も限界に近づいていました。
週末、失踪してみた結果
ある週末、私はお気に入りのカフェに逃げるように出かけました。私が食事の用意をしていなかったからか、義母から何度も電話がかかってきましたが、出ませんでした。
これまで夫には何も言えなかったけれど、もう限界だったのです。夫に電話をかけすべてを打ち明けると、「気づいてあげられなくてごめん」と言って、その日のうちに新幹線で帰ってきてくれました。
夫は義実家にいる義母と親戚に話をしてくれました。
義母は静かにこう言ったそうです。
「夫がいなくなって、今度は息子まで遠くに行ってしまって……。静かな家が、怖かったの。にぎやかにしていれば、寂しさを感じなくて済むと思ったの」と。
これからの、家族のかたち
夜、私が家に帰ると、義母は「今まで自分の気持ちばかりで動いて、本当にごめんなさい。来週は、ふたりでおいしいお菓子でも食べながらゆっくりしようか」と言いました。その言葉に、胸の奥のこわばりがふっとほどけていくのを感じました。
家族は、時にすれ違いながらも、少しずつ歩幅をそろえていくものだと思います。お互いに助け合い、思いやりを持ちながら生活すれば、きっと大きく拗らせることはないと思っています。これからは、子どもの誕生を楽しみにしながら、日々を大切に過ごしていこうと思います。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。