離婚するときに「二度と私の前に顔を出さないで、連絡もしてこないで」と、元夫と親友の両方に伝えた私。その後すぐ、元夫と親友は入籍していました。
やがて浮気や離婚のショックから立ち直り、前向きに生きていこうと決めて日々を過ごしていると、突然、元夫から連絡がありました。「実は、彼女が妊娠したんだよね……」と。おめでたい連絡ですが、元夫はなぜか落ち込んだ声で……?
元夫が抱く親友への疑念
「……幸せ自慢ならやめてくれない? 二度と連絡しないで、って言ったよね?」と言って電話を切ろうとすると、「待ってくれ!」と元夫の悲痛な声。
「自慢とかそういうつもりじゃないんだ、どうしても相談したいことがあるんだよ」「俺、どうしても彼女の妊娠が受け入れられないんだ!」
仕方なく話を聞いてみると、彼女が妊娠したと話した時期と、元夫が3カ月間の地方出張に出ていた時期が、ぴったり重なっていたとのこと。
それだけでも十分怪しかったのに、カード明細を見返すと、彼女が出張中に何度も隣の県に行っていたことがわかったらしいのです。
「あの場所って、何か心当たりあるか? 旅行にしては妙に回数が多くて……」
私は一瞬、言葉を失いました。大学時代に親友が頻繁に通っていた、元彼の地元だったからです。
「……ああ……そういうことね」思わず口にした私。「そういうことって……おい、まさか……」元夫の声が低くなり、動揺している様子が伝わってきました。私が元彼の地元だと伝えると、「……あいつ! 元彼と会ってたのか!」電話越しに、怒りを押し殺すような息づかいが聞こえました。
「……なんかさ、ずっと引っかかってたんだよ。妊娠のこと言ってきたときも、やけに落ち着いてたし……普通、もっと大はしゃぎしたりとかするもんじゃないかって。でも俺の気のせいだと思おうとしてたんだよな」「それに最近、けんかすると『元彼はこうだった』とか言い出してきて……なんか、ずっとモヤモヤしてたんだ」
自業自得だろうに、と内心思いつつも、あの親友の奔放さを思い返すと、ありえない話でもない気がしてきた私。人の夫を平気で奪うような女なのだから……。
「……あなたの子だって、信じられないのね?」
「いや、信じたいよ。でも……妊娠のことを聞いたとき、うれしさより先に違和感が来たんだ。俺、出張中だったのに『できた』って言われて……時期のことを聞いてもはぐらかされるし、ちゃんと向き合ってる気がしない」
「最近はスマホで誰かと連絡を取ってるみたいだけど、『友だちだよ』って濁されて終わりだし……気づけば、また『本当に俺の子なのか?』って考えてる。考えたくないのに、何度も戻ってくるんだ」
浮気で始まった夫婦生活って、そもそも疑念にまみれているのかもしれないなと妙に納得しつつ、「あなたが私を裏切ったように、今度は私の親友があなたを裏切った、ってことじゃない?」「でも悪いけど、私には関係ないから」と言うと、「そんな冷たいこと言わないでくれよ……」と元夫は半泣き。
「俺たちの離婚が原因で、両親や友だちには避けられてる。お前以外に相談できる人、いないんだよ……」
「……もう、何を信じていいかわからないんだ」
元夫は相当疑心暗鬼になっている様子でした。しかし、夫に言ったように、私には関係ないことです。
「同情の余地もないわ」「あなたは私の人生をめちゃくちゃにして出て行った人だから、心底どうでもいいし」「自分の問題は自分で解決してね。でも、あなたに似た赤ちゃんが生まれてくることを祈ってるわ」
マウントを取るつもりだった親友の末路
数カ月後――。
「久しぶり~! 元気してた?」と例の親友から連絡が。出産報告をしてきたのです。
「気持ち切り替えて、大事な親友の出産をお祝いしてよ! 出産祝いは豪華によろしくね!」
そう言って、マウントを取ってきた親友。人の夫を略奪しておいて、出産祝いまでねだるなんて……どこまで面の皮が厚いのでしょう。
「3年前は旦那奪ってごめんね~! 元気な男の子が生まれたのよ♡」
「抱っこさせてあげてもいいよ? まさか元夫に未練なんてないよね?」
「元夫ならいま隣にいるけど?」
「え?」
私は今、会社近くのカフェで昼休みを過ごしていました。そこに、元夫がふらりと現れたのです。「……あ、やっぱりここにいた……」どうやら私が会社の昼休みにこのカフェでひとりでランチをとる話を覚えていたらしく、わざわざ来たようでした。私は親友に、念のため誤解のないように、状況を簡単に説明しました。
そして、「『どう見ても父親の俺に顔が似てない』『やっぱり俺の子どもじゃないんじゃないか』って、元夫が私のところに相談しに来てるんだよね」と伝えた直後、すぐさま親友から着信が。出た瞬間、怒鳴り声が響きました。
「赤ちゃんだもの、これから顔も変わるわよ!」「っていうか、なんであんたのところに相談に行ってるのよ!!」
私は静かに言いました。「私としては正直、どっちでもいいの。最初は彼の考えすぎだと思ってたけど……でも、あなたが妊娠したころ、彼は3カ月間ずっと地方出張だったって話よね?」「それで彼……元夫が、私にあなたの元彼の写真を見せてほしいって言ってきたのよ」親友は「えっ!?」「う、嘘でしょ、やめてよ」と明らかに動揺している様子。
親友の歴代元彼の写真を全部持っている私。大学時代も卒業後も、彼氏ができるたびに見せびらかしてきたからです。私は、親友と夫の浮気発覚時に、何かあったときのためにと、親友とのメッセージの履歴を保存していたのです。
「大学時代に付き合ってた人と、赤ちゃんの顔が似てる気がするってさ」私がそう伝えると、「え?……ちょ…! この子は絶対に夫の子どもだから! お願いだから変なこと吹き込まないでよ?」と親友はまたも動揺していました。
「じゃあ彼を安心させるために、DNA鑑定をしたらいいじゃない」と提案すると、「えっ!?」「そ、そんな大げさな……」と親友は尻込み。一方元夫は「それがいいな」と大賛成のよう。
「そんなの必要ないし、そもそもお金の無駄だって! やらない方向になんとか持って行ってよ!」と言われましたが、これは夫婦の問題です。「私には関係ないし、あとは徹底的に2人で話し合ってちょうだい」と言うと、「お願い! 私たち、親友じゃない!」と親友。私の夫を略奪するような人は、私の親友ではありません。私は電話を切りました。
その後、親友たちがどうなったか――。
しばらくして共通の友人から聞いたところによると、やはり、DNA鑑定の結果、赤ちゃんは元夫の子ではなかったようです。相手は、親友が大学時代に付き合っていたあの元彼。元夫が出張中に何度も会っていたそうで、当然、元夫は激怒し、2人は離婚したのだそう。
親友は元彼とはすでに音信不通になっていて、ひとりで子どもを育てているらしく、SNSには、仕事と育児の両立に疲れた投稿が並んでいました。私は、赤ちゃんが、母親の過ちに振り回されず、やさしい誰かに守られながら育ってほしいなと、心からそう願いました。
そして、元夫から、「やっぱりお前が必要なんだ。もう一度だけ、チャンスをくれないか」とメッセージが……。その言葉を読んだとき、私はそっとスマホを伏せました。あのころなら、動揺していたかもしれませんが、でも今は、心が静かだったのです。なぜなら私には、もう婚約者がいるから。過去をすべて話しても、否定せず、受け止めてくれる誠実な人です。今度こそ、私はちゃんと、幸せになろうと思います。
【取材時期:2025年3月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。