「俺、直前に急用が入ってさ……行けなくなるかもしれないんだ」と彼氏。来週のプロポーズ予定日、彼は丸一日有休を取っていたはずなのに……。
「どうしても外せない用事ができちゃって……でも、なんとかするつもりだから!」「とにかく心配するようなことじゃないから!」と言う彼。付き合ったときに、お互いに隠しごとはなしにしようって約束したはずなのに……。私は少しモヤモヤした気持ちになりました。
プロポーズ当日に元カノから突然の連絡
当日――。
予約してくれたレストランの前で彼を待っていると、見知らぬ番号から電話がかかってきました。とりあえず出てみると、「突然連絡して申し訳ないけど、彼は来ないわよ」と女性の声。電話の相手は、彼の元カノだと名乗る女性でした。
「せっかくの記念日なのに、お店で待ちぼうけなんてかわいそうに」「彼から聞いたわよ。高級レストランで会う予定だったって……でも、健気に彼を待ってくれてるところごめんね~?」「彼は私を選んでくれたのよ。あんたが待ってるお店になんて一生来ないから!」
『彼がそんなことするわけない』『でももし本当だったら……?』と疑心暗鬼になってしまった私。私がショックを受けていると思ったのか、元カノは楽しそうに話を続けました。
「彼から、『直前に急用ができた』って言われたでしょ? 実はそれ、私との予定なの!」「彼に『ヨリを戻したい』って連絡したらすぐに返事が来て……。やっぱり彼、あんたより私のほうがよかったみたい」
「彼がそんなこと言うわけないでしょ……」と力なく反論してみたものの、「実際、彼はあんたとの記念日デートに行かずに、私のところに向かっているもの! これが、彼の出した答えなのよ!」と元カノ。
「あなたの彼、私に未練があったみたい♡ 5年も付き合ったんだもの、当然よね」
「だから彼と結婚するのはワ・タ・シ♡ ごめんなさいねー」
そう続ける元カノに、「彼は断るって言ってるけど?」と彼の言葉を伝えた私。
私の目の前には、息を切らして走ってきた彼が立っていたのです。立派なスーツに身を包み、花束を抱えて……。
「え?」と驚く元カノに、彼はふうっと息をひとつ吐くと、私の手からスマホを取り言いました。
勝ち誇っていた元カノの悲惨な末路
「誰がお前となんかヨリを戻すか!」
彼が声を荒らげるところを初めて見た私はびっくり。ぽかんとしていると、彼は口パクで「大丈夫だから」と伝えてきました。
「やっぱりプロポーズ前に元カノに会うなんて不誠実だと思ってな」「指輪がなくても、プロポーズはできると思ったんだ」
「実はさ、ちょっと前にクローゼットの大整理をしてたら、隅っこから元カノの私物がいくつか出てきてさ」と彼は言いました。
「別れてからもう1年以上経ってたけど、見つけた以上は返した方がいいと思って、まとめて宅配で送ったんだ」「それでさ……婚約指輪も一緒に送っちゃってた。貴重品だからってクローゼットの奥にしまってたのに、見落としてたんだよ」
「気づいてすぐ『返してくれ』って連絡したんだけど、『これは私へのプロポーズのつもりだったんでしょ?』とか言い出して、返してくれなくて……何度も説明してるんだけど……」「今日の予定とか話してもわかってくれなくて。しまいには、『今日、2人で会えるなら考える』とか言い出して」
「でも指輪はもういい、また買えばいいんだから。それに、プロポーズは2人の愛で決まるものだからな」「だから俺はお前には会いに行かない」
「そ、そんな……! なんで私を選んでくれないの!?」「5年も付き合っていた私より、まだ1年しか付き合ってないその女を選ぶなんておかしいじゃない!」「それに、この指輪だって私の薬指にぴったりだったもの!本当は私のために選んでくれたんでしょ!?」とヒステリックに叫ぶ元カノの声は、私のところまで届いていました。
ため息をついて、「妄想もいい加減にしてくれよ。指輪のサイズは今の彼女に合わせて買ったものだ」「そう、何度も説明してるだろ?」「彼女と付き合ってからは、お前のことを一度も思い出したことはないよ」「わかったら、もう二度と連絡してくるな!」と言った彼。
「ちょっと待って……そういえば、どうやって私の番号を知ったの?」と確認すると「あんたの母親に聞いたのよ!」と元カノ。彼氏のSNSで、私の両親が営む果物店を紹介していた投稿があり、それを見て店を突き止めたのだそうです。「中学時代の友だちなんですけど、携帯番号が変わっちゃって……」と、もっともらしい嘘をついて母から私の番号を聞き出したとのことでした。
元カノは電話口でぎゃーぎゃー騒いでいましたが、彼はそれを無視して通話を切り、そのまま私のスマホを操作して、元カノの電話番号を着信拒否に設定していました。
「ごめんね、待たせちゃって……それから、元カノのことも」「でも、今日は絶対に素敵な夜にするって約束する」「絶対に幸せにするからな!」
その後――。
彼から元カノに「どうしても返してほしい」と再度連絡を入れても、返事はありませんでした。仕方なく、彼は私の兄が警察官であること、そしてこのまま指輪が返ってこなければ正式に相談する可能性があることを伝えました。
数日後、彼のもとに元カノの両親から「娘が大変なご迷惑をおかけしました。指輪はこちらで預かっておりますので、すぐに返送いたします」と連絡が来て、指輪は無事に帰ってきました。
後日、彼と元カノの共通の知人を通じて、元カノが仲間のグループLINEを退会させられていたことを聞きました。どうやら元カノは、「指輪が自分のもとに届いた」と得意げに周囲に話していたらしく、最初は友人たちも「ヨリを戻すのかな」と思っていたようです。
けれど、その後で彼から「指輪は誤って送ってしまったもので、返してほしい」と連絡があったことを知ると、友人たちは一斉に「なんで返さないの?」と元カノに言ったのだとか。それでも聞く耳を持たず、執拗に「これは運命だ」と言い張る元カノに、周囲は次第にあきれ、距離を置いていったそうです。
そして最終的に、元カノはSNSのアカウントも削除し、共通の知人とも連絡を絶って、静かに姿を消していったそうです。
彼氏は宣言通り、指輪とともに素敵なプロポーズを改めてしてくれました。今、私たちはお互いの親へのあいさつや両家の顔合わせを終え、結婚に向けて着々と準備を進めています。
【取材時期:2024年12月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。